TOP一般口演
 
軸索/脱髄
O13-1
p39で活性化されるCdk5のRac1依存的ラメリポディアへの選択的集積
浅田 明子1,伊藤 有紀1,高野 哲也1,ゴビンダ シャルマ1,斎藤 太郎1,太田 安隆2,天野 睦紀3,貝淵 弘三3,久永 眞市1
首都大学東京・理工・生命科学1,北里大学・理学部・生命科学2,名古屋大学・医学部・細胞薬理3

Cdk5 is a member of the cyclin-dependent kinase(Cdk)family that plays a role in various neuronal activities including brain development, synaptic regulation, and neurodegeneration. Activation of Cdk5 is mediated by the regulatory p35 and p39 subunits, which are also shown to regulate the subcellular compartmentalization of Cdk5. However, it is not known how active Cdk5 is recruited to F-actin cytoskeleton, which is a Cdk5 target. Here we found p35 and p39 localized to F-actin rich regions of the plasma membrane and investigated the underlying targeting mechanism in vitro by expressing them with Rho family GTPases in Neuro2A cells. Both of p35 and p39 accumulated at the cell peripheral lamellipodia and perinuclear regions, where active Rac1 is localized. Interestingly, p35 and p39 displayed different localization patterns as p35 was found more at the perinuclear region and p39 was found more in peripheral lamellipodia. We then confirmed this distinct localization in primary hippocampal neurons. We also determined that the localization of p39 to lamellipodia requires myristoylation and Lys clusters within the N-terminal p10 region. Additionally, we found that p39-Cdk5, but not p35-Cdk5 suppressed lamellipodia formation by reducing Rac1 activity. These results suggest that p39-Cdk5 has a dominant role in Rac1-dependent lamellipodial activity.
O13-2
膜伸展刺激に伴うメカノセンサーの集積と軸索伸長の促進
柴崎 貢志,小島 至,石崎 泰樹
群馬大院・医・分子細胞

 著者らは近年、脊髄領域の運動・感覚神経細胞に限局してメカノセンサー・TRPV2チャネルが発現することを見いだした。そして、これらTRPV2陽性神経細胞においては、伸長中の軸索が自分自身の細胞膜にかかる物理的な伸展張力を感知し、物理エネルギーを電気信号に変換することで、さらに軸索を伸長させることを明らかにした(Shibasaki et al. J. Neurosci. 2010)。つまり、メカノセンサーが関与する全く新たな軸索伸長の分子機構が存在することを見いだした。成長円錐に存在するTRPV2は静的に存在しているのであろうか?この疑問を解き明かすためにTRPV2-EGFP融合体を培養神経細胞に発現させ、その局在変化を詳細にリアルタイム観察した。その結果、伸長中軸索において、成長円錐が形態変化するとTRPV2は瞬時にその場所へと集積した。また、その集積箇所で局所の細胞内Ca2+濃度上昇が引き起こされ、軸索伸長が加速することが明らかになった。人工的に機械刺激を付加した場合にも、TRPV2は瞬時にその刺激場所へと集積をし、その集積場所を起点に軸索伸長が引き起こされた。以上の結果より、TRPV2は膜上の伸展刺激が生じている場所へと瞬時の集積をすることで微弱な応答を増強する機構を有していることが明らかになった。このため、メカノセンサーTRPV2は膜上の伸展刺激を感知し、刺激が存在する場所に急速に集積し、局所の細胞内Ca2+濃度を急激に上昇させることで軸索伸長を促進させていると考察される。
O13-3
プルキンエ細胞におけるRNA結合タンパク質HuC依存的軸索輸送機構
岡野 ジェイムス洋尚
慈恵医大・再生医学

神経特異的RNA結合タンパク質HuCのノックアウト(KO)マウスは正常に発育するが生後7ヶ月になると歩行障害などの運動失調症状を呈する。このマウスの小脳では神経回路が正常に形成されたのちに遅発性にシナプス脱落を伴ったプルキンエ細胞の軸索変性が起こるが、プルキンエ細胞は細胞死には至らない。球状に変性した軸索にはミトコンドリアやAPPが貯留していることから軸索輸送の不全が疑われている。我々は軸索変性の分子メカニズムを解明するためにRIP-CHIP法およびHITS-CLIP法によりHuCの標的RNAのスクリーニングを行い、複数のKinesin、Neurexin1、Atg5、Atg12を含む多くのHuC標的候補遺伝子を同定した。HuC KOマウス由来プルキンエ細胞にKIF3A、3C遺伝子を強制発現させると部分的に軸索変性を是正できること、逆にKIF3AもしくはKIF3C遺伝子に対するshRNAを野生型プルキンエ細胞に導入すると軸索膨大が出現することを明らかにした。しかし、軸索末端の変性に対してKIF3A、3Cによるレスキュー効果が微弱であることから、細胞体近傍の変性の責任因子と軸索末端のそれが異なる可能性が示唆された。選択的エクソン12の下流イントロン内にHu結合配列が同定されたKIF2Aについても、KOマウス小脳RNAを用いたRT-PCRにより野生型と比較してKOではエクソン12のスキップ率が増加していることが示され、今後レスキュー実験を行う候補とした。また、生後1日齢のマウス小脳由来培養プルキンエ細胞にレンチウイルスベクターを用いてL7プロモーター/Mito-Venusを導入し、ライブイメージング系により観察したところ、軸索膨大部においてミトコンドリアの移動方向が乱れ、軸索輸送の障害を示唆する知見が得られた。一方、7ヶ月齢HuC KOマウス小脳における電子顕微鏡解析を行ったところ、興味深いことにプルキンエ細胞の細胞体および軸索膨大部に多くのオートファゴソーム様の構造が観察され、タンパク質分解系の異常と軸索変性との関連性が示唆された。
O13-4
脳微小血管内皮細胞移植による白質梗塞における再髄鞘化の促進
飯島 圭哉1,倉知 正2,好本 裕平1,三國 雅彦3,石崎 泰樹2
群馬大学大学院医学系研究科脳神経外科学1,群馬大学大学院医学系研究科分子細胞生物学2,群馬大学大学院医学系研究科精神科神経科3

脳微小血管内皮細胞(MVECs)には脳障害時における神経保護作用が報告されているが不明な点が多い。我々は過去にエンドセリン1(ET-1)により誘導したラット内包の白質梗塞に対するMVECs移植が白質梗塞の再髄鞘化を促進することを報告した。今回はMRIを用いて同一個体における病変体積変化を解析した。また、オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPCs)およびオリゴデンドロサイト系譜細胞(OLCs)の細胞動態について解析した。ET-1を8週齢オスSDラットの左内包に定位的に局所注射することにより白質に限局した梗塞病巣を誘導した。ET-1局注後7日目に成熟ラット大脳皮質より調製したMVECsを内包に移植した。コントロールとしてウシ血清アルブミンを用いた。移植直前と移植後14日目にMRIを撮影し、病変体積を計測し経時的体積変化を解析した。移植後3日目、7日目、14日目にそれぞれ潅流固定した組織を用いてOPCs(NG2陽性細胞)の細胞数・OPCsの細胞死(NG2/TUNEL二重陽性)・OLCs(olig2陽性細胞)の細胞数・OLCsの増殖性(Ki67/olig2二重陽性)について組織化学的解析を行った。MVECs移植群はコントロール群と比較し、MRI T2高信号病変の体積の有意な縮小を認めた。また、OPCsの細胞数およびOLCsの細胞数についてMVECs移植群では有意な増加を認めた。MVECs移植群ではNG2/TUNEL二重陽性細胞数の減少、olig2/Ki67二重陽性細胞数の増加傾向を認めた。以上よりMVECsが白質梗塞を改善する機序において、OPCsの細胞数増加が寄与することが示唆された。MVECsがOPCs・OLCsの細胞数を増加させ髄鞘形成を促進する分子基盤を同定することによりラクナ梗塞やcerebral small vessel diseaseの慢性期における再生医療実用化に向けた重要な知見が得られることが期待される。
O13-5
脱髄性疾患におけるグルコース・乳酸トランスポーター発現の神経病理学的検討
真崎 勝久1,鈴木 諭2,山崎 亮3,渡邉 充1,岩城 徹2,吉良 潤一1
九州大学神経内科1,九州大学神経病理学2,九州大学神経治療学寄附講座3

【背景】これまで私たちは多発性硬化症(multiple sclerosis、MS)や、視神経脊髄炎(neuromyelitis optica、NMO)、Balo病の急性期病巣で広汎なコネキシン(Cx)の脱落を認めることを報告した。Cxは細胞間でギャップ結合を形成するため、早期からのグリア細胞間連絡障害(グリアシンシチウムの破綻)が脱髄の病態に重要である可能性を指摘した。しかし、グリアシンシチウムの破綻がどのような機序で脱髄や軸索障害を起こすかは不明である。この点を解明するため、脳内エネルギー代謝に重要なglucose transporter(GLUT)とmonocarboxylic acid transporter(MCT)に着目した。【目的】中枢神経におけるGLUTやMCTの発現を評価し、MS病巣における変化を検討する。【方法】MS6例、重症筋無力症(myasthenia gravis、MG)1例、脳梗塞1例、脳炎1例の剖検を用い、GLUT1、3、5およびMCT1、2、4の免疫染色を施行した。比較のためAQP4、GFAP、Cx43、MBP、MAG、Nogo-A、APPの免疫染色を施行した。【結果】MG症例では、GLUT1とMCT1は血管内皮細胞に、MCT2とGLUT3は神経細胞や軸索に発現を認めた。MCT4はアストロサイトに発現を認め、血管周囲足突起や軟膜にも発現を認めた。GLUT5はミクログリアに認められた。脳梗塞巣ではGLUT1、MCT1の発現は低下しており、障害軸索の一部にGLUT3の染色性が強く認められた。MCT4は病巣内で発現が低下し、周囲の反応性アストロサイトで染色性が認められた。病巣内マクロファージや、辺縁部の活性化ミクログリアはGLUT5を強く発現していた。脳炎症例では、反応性アストロサイトにおけるMCT4の発現亢進が認められた。MS急性期病巣においては、perivascular cuffを認める血管内皮でもGLUT1やMCT1は保持されていた。一方、血管周囲アストロサイト足突起におけるMCT4の発現は低下していた。GLUT3は障害軸索で染色性が強調されていた。GLUT5は病巣内マクロファージで強い染色性がみられた。MS慢性期病巣ではMCT4の発現亢進を認め、グリオーシスを反映した所見と考えられた。【結論】脱髄性疾患では急性期からGLUTやMCTの発現パターンの変化が生じており、グリア細胞を介した軸索までの栄養供給が障害されている可能性が示唆された。
O13-6
環状ホスファチジン酸による多発性硬化症モデルマウスにおける脱髄抑制
山本 梓司1,後藤 真里2,丸山 敬1,室伏 きみ子2,吉川 圭介1
埼玉医科大・医・薬理学1,お茶大院・ヒューマンウェルフェアサイエンス研究教育寄附2

Multiple sclerosis(MS)is a chronic demyelinating disease of the central nervous system characterized by recurrent and progressive demyelination/remyelination cycles, neuroinflammation, oligodendrocyte loss, and axonal pathology. The cuprizone model of demyelination is characterized by apoptotic death of mature oligodendrocytes, and is accompanied by neuroinflammation and motor dysfunction. Cuprizone-induced primary demyelination has been recognized as a valuable model that reproduces the pathology seen in patterns III and IV of actively demyelinating MS lesions. Cyclic phosphatidic acid(cPA)was originally isolated from the myxamoebae of a true slime mold, Physarum polycephalum, and was later found in mammalian fluids such as serum and brain tissue. cPA has a unique structure consisting of a cyclic phosphate ring at the sn-2 and sn-3 positions of its glycerol backbone. cPA elicits a neurotrophin-like action and protects hippocampal neurons from ischemia-induced delayed neuronal death. In this study, we investigated the effects of cPA on cuprizone-induced demyelination, which is a model of multiple sclerosis. Mice were fed a diet containing 0.2% cuprizone for 5 weeks, which induces severe demyelination, astrocyte activation, and motor dysfunction. Simultaneous administration of cPA effectively attenuated cuprizone-induced demyelination, astrocyte activation, and motor dysfunction. These data indicate that cPA may be a useful treatment to reduce the extent of demyelination and the severity of motor dysfunction in multiple sclerosis. cPA is a potential lead compound in the development of drugs for the treatment of this devastating disease.