TOPポスター発表
 
回路形成/大脳皮質形成
P1-10
ドレブリンノックアウトマウス由来初代培養神経細胞におけるMAP2染色性の変化
白尾 智明1,小金澤 紀子1,梶田 裕貴1,児島 伸彦1,2,崎村 建司3
群馬大学大学院医学系研究科神経薬理学1,東洋大学生命科学部生命科学科分子神経生物学2,新潟大学脳研究所細胞神経生物学分野3

Drebrin has critical functions in synaptic transmission and plasticity;therefore it is thought to be in a responsible position of learning and memory. Drebrin plays an important role in regulation of spine morphology via modulating the helix pitch of actin filaments. We have previously shown that NMDA receptor activation induces a shift in subcellular distribution of drebrin(Sekino et al., 2006). It has been recently reported that NMDA receptor activation suppresses microtubule entry in dendritic spines(Kapitein et al., 2011)and drebrin acts as a positive regulator of microtubules entry into spines through the interaction of drebrin with microtubule-binding protein EB3(Merriam et al., 2013). To investigate further relationship between drebrin and microtubules, we used primary cultured hippocampal neurons prepared from drebrin knockout(DXKO)mice. First, microtubules associated protein 2(MAP2)was analyzed immunocytochemically using 21 days in vitro(DIV)neurons. We have detected less MAP2 positive neurons in DXKO neurons than in wild-type neurons. On the other hand, detection level of β-III-tubulin, a microtubule element expressed exclusively in neurons, was comparable in both neurons. We then conducted the immunocytochemical analysis using developing neurons and found neurons in the early stage of development, such as in 2 DIV neurons, MAP2 can be detected similar to the normal neurons. This indicates that aberrant MAP2 distribution is appeared only at late developmental stages, and suggests that this aberrant MAP2 distribution might be associated with the appearance of NMDA receptors at synaptic sites.
P1-11
神経細胞の形態形成における細胞種依存的なGSK-3の機能
小西 慶幸1,2,久保田 健太1,衞藤 拓也1
福井大学大学院工学研究科知能システム工学専攻1,福井大学生命科学複合研究教育センター2

神経細胞はその種類に依存して様々な形態を示す。近年の研究により極性形成や突起伸長に関わる分子が報告され、基本的な機構が明らかになりつつあるが、細胞の種類に依存した形態を制御する機構は理解が進んでいない。我々は小脳顆粒細胞と海馬錐体細胞との形態形成過程を比較することで、両者に共通な機構と細胞種特異的な機構を見いだすことを目的とした。まず小脳顆粒細胞の極性形成過程を解析するため低密度培養法を発展させた。この培養においてGSK-3を抑制したところ海馬錐体細胞においてはこれまでの報告と同様に複数の軸索の進展が観察されたのに対し、小脳顆粒細胞においてはこのような極性異常は観察されなかった。一方、軸索長は小脳顆粒細胞でより顕著に減少が見られ、GSK-3の寄与が細胞間で異なることが示唆された。さらにタイムラプスイメージングの解析結果をもとに、小脳顆粒細胞に依存した機能について議論する。本研究は文部科学省の科研費(00382838)の助成を得て行った。
P1-12
M6aタンパク質複合体の脂質ラフト様膜領域における分布と神経極性決定での役割
本多 敦子1,2,伊藤 泰行1,武内 恒成4,五十嵐 道弘1,3
新潟大院・医・分子細胞機能学1,新潟大学院・医・分子病態病理学2,新潟大学 超域学術院3,愛知医科大・医4

我々はこれまでに、糖タンパク質M6aとその結合タンパク質M6BP(M6a-Binding Protein)、Rap2からなる三者複合体が、ラミニン基質依存的な神経極性決定を、既知の神経極性決定因子の上流にて制御することを示してきた。しかし、三者複合体が形質膜上においてどのように形成され、神経極性決定に作用しているのかは明らかでない。今回我々は、M6a三者複合体の形質膜上における分布様式とその意義を解析した。M6aは多くのパルミトイル修飾部位を有し、M6aを発現させたNG108-15細胞をショ糖密度勾配遠心により分離すると、M6aは界面活性剤耐性膜(DRM)画分に分布した。一方、同細胞に発現させたパルミトイル化部位変異M6aでは、非DRM画分に分布が移行した。Rap2もパルミトイル修飾部位を有し、DRM画分に局在化した。M6BPは単独では非DRM画分に分布したが、M6aと共発現させるとDRM画分へと分布が移行した。生体内にてM6a三者複合体は、どの画分に分布するのか、マウス胎仔脳を用いて解析したところ、M6a、M6BP、Rap2いずれもDRM画分に分布し、特にRap2はDRM画分に特異的に局在化した。同DRM画分にはラフト膜のマーカー分子であるGM1やflotilinも分布していた。M6aKOマウス胎仔脳の同解析を行ったところ、DRM画分におけるRap2の分布に変化はなく、M6BPの分布が失われた。ラミニン基質上のマウス胎仔海馬・大脳皮質神経細胞では、M6a複合体は軸索成長円錐に局在化しているが、M6aKOでは、軸索成長円錐にM6BPが集積せず、多極性を形成するものが多かった。M6aKO神経細胞への野生型M6aの遺伝子導入は、多極性を抑制し、単一軸索形成を誘導したが、パルミトイル化部位変異M6aの発現は、極性形成を著しく阻害した。これらの結果は、1)M6aが、パルミトイル修飾により形質膜上の脂質ラフト様膜領域に分布し、M6BPを動員、Rap2を含む三者複合体を形成すること、2)脂質ラフト様膜領域での三者複合体形成が、神経極性決定に重要な役割を持つことを示唆している。
P1-13
リーリン受容体ApoER2とVLDLRの大脳皮質形成過程における発現と機能
廣田 ゆき1,久保 健一郎1,本田 岳夫1,藤野 貴広2,山本 徳男3,仲嶋 一範1
慶應義塾大学医学部解剖学教室1,愛媛大学総合科学研究支援センター生物機能解析分野2,東北大学医学部加齢医学研究所3

In mammalian developing brain, neuronal migration is regulated by a variety of signaling cascades, including Reelin signaling. Reelin is a glycoprotein that is mainly secreted by Cajal-Retzius neurons in the marginal zone, playing essential roles in the formation of layered neocortex via its receptors, apolipoprotein E receptor 2(ApoER2)and very low density lipoprotein receptor(VLDLR). However, the precise mechanisms by which Reelin signaling controls the neuronal migration process remain unclear. To gain insight into how Reelin signaling controls individual migrating neurons, we generated monoclonal antibodies against ApoER2 and VLDLR and examined the localization of Reelin receptors in the developing mouse cerebral cortex. Immunohistochemical analyses revealed that VLDLR is localized to the distal portion of leading processes in the marginal zone(MZ), while ApoER2 is mainly localized to neuronal processes and the cell membranes of multipolar cells in the multipolar cell accumulation zone(MAZ). These different expression patterns may contribute to the distinct actions of Reelin on migrating neurons during both the early and late migratory stages in the developing cerebral cortex.
P1-14
発生期大脳皮質の多極性移動ニューロンのダイナミックな動きを制御するメカニズム
吉永 怜史1,大久保 宇啓1,佐々木 慎二1,塗谷 睦生2,小川 雪乃1,安井 正人2,田畑 秀典1,仲嶋 一範1
慶應義塾大学医学部解剖学1,慶應義塾大学医学部薬理学2

脳の発生において神経細胞移動は非常に厳密に制御されており、その異常は臨床的には知的障害やてんかん、時に精神病として現れてくる。大脳皮質を構成する興奮性神経細胞の多くは、発生過程において脳室面近くで誕生した後、その直上で多極性の形態をとって長時間さまように留まった(多極性移動)後に、脳表面へと放射状に移動して配置される。本研究では、まず多極性移動神経の動態を高い時間解像度で観察し、その突起は成長円錐と良く似た挙動を示すことがわかった。そこで、アクチン系がその動態に関わる可能性を想定して検証を行った。まず、成長円錐においてアクチン線維の重合・脱重合を制御してその運動に関わるLamellipodin(Lpd)が多極性移動細胞に局在することを確認し、その発現阻害によって突起が減少することを見いだした。LpdはEna/vasodilator-stimulated phosphoprotein(VASP)を細胞膜にリクルートすることが知られているため、次にEna/VASPも多極性移動細胞に存在することを確認した上で、その機能を阻害したところ、同様に突起が減少した。Lpdの発現を阻害した状態でEna/VASPを膜に強制的に発現させると、突起の減少がレスキューされた。LpdはSrc homology 2-containing inositol phosphatase-2(SHIP2)によって産生される細胞膜上のphosphatidylinositol(3,4)-bisphosphate[PI(3,4)P2]に結合するため、SHIP2の機能を阻害したところ、同様に突起が減少した。Lpdの発現を阻害した状態で、野生型のLpdを発現させると突起の減少はレスキューされたものの、PI(3,4)P2への結合部位であるPleckstrin homology(PH)ドメインを欠失したLpdではレスキューできなかった。以上より、ダイナミックに動く突起の細胞膜にPI(3,4)P2がSHIP2依存的に局在し、そこにLpdが結合して、さらにEna/VASPを介してアクチン線維を制御することにより、多極性移動細胞の突起が制御される可能性が示唆された。
P1-15
生後の発達過程、及び成獣の小脳シナプス部におけるkirrel3の発現
久岡 朋子1,北村 俊雄2,森川 吉博1
和歌山県立医大・医・第二解剖1,東京大・医科研・先端医療研究センター・細胞療法分野2

 免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであるkirrel3は、嗅上皮・鋤鼻器上皮の感覚細胞の軸索の集束・接着や橋核ニューロンの移動に重要であることがマウスで報告されている。また、脳や培養神経細胞においてkirrel3とシナプス蛋白のCASKが結合することから、シナプス形成やシナプス可塑性の維持に関与していることが示唆されている。小脳では、顆粒細胞とプルキンエ細胞において、生後の発達に伴いkirrel3の発現が増加することがラットで報告されているが、その機能に関しては不明である。前回、我々はkirrel3の遺伝子座にLacZ遺伝子を組み込んだマウスのβ-ガラクトシダーゼ活性を指標として、発達過程の小脳におけるkirrel3発現細胞の同定を試みた結果、顆粒細胞、プルキンエ細胞、介在ニューロン、及び小脳深部核投射ニューロンに時期特異的に発現していることを報告した(第56回神経化学会大会)。今回、kirrel3に対する抗体を用いて、生後の発達過程と成獣の小脳におけるkirrel3蛋白の局在を検討した。小脳において、生後7日齢で内顆粒細胞層に認められたkirrel3蛋白の発現は、生後14日齢でその発現レベルがピークとなり、その後70日齢にかけて徐々に低下した。強い発現の認められた生後14日齢の内顆粒細胞層において、kirrel3と糸球体シナプスに発現するPSD-95との二重免疫染色を行った結果、ほぼすべてのPSD-95陽性部位において、kirrel3の発現が認められた。さらに生後14日齢から70日齢にかけてkirrel3の発現は、プルキンエ細胞の軸索とピンスーを形成するHCN1陽性のバスケット細胞のシナプス前終末部において増加し、70日齢では大部分のHCN1陽性シナプス前終末部においてkirrel3の発現を認めた。これらの結果から、kirrel3は小脳顆粒細胞やバスケット細胞のシナプス部に時期特異的に高発現し、シナプス形成やシナプス可塑性の維持に関与する可能性が示唆された。本研究はJSPS科研費22390036の助成を受けたものである。