TOPポスター発表
 
方法論・イメージング法
P1-66
摂食関連オーファン受容体BRS-3における新規作用物質探索
徳丸 雄一1,岡村 好子2,斎藤 祐見子1
広島大院・総科1,広島大院・先端研2

ボンベシン受容体サブタイプ3(BRS-3)は、視床下部や扁桃体に高発現するGタンパク質共役型受容体(GPCR)である。BRS-3は、遺伝子欠損マウスの解析や合成アゴニスト・アンタゴニストの投与実験などから、摂食調節・糖代謝機構に強く関与することが示されており、肥満のメカニズム解明の鍵の一つとして高い注目を浴びている。しかし、BRS-3の発見から20年以上が経つ現在においても、BRS-3の内在性リガンド同定の報告はない。加えて、BRS-3選択的である合成アゴニストについては、製薬企業の独占状態にあり、基礎研究における幅広い利用は困難である。このため、新たなBRS-3代替リガンドの同定が強く求められている。
そこで我々は、天然物の宝庫であるカイメン共在細菌に着目し、これまでに例のないアプローチを試みた。すなわち、マリンメタゲノムライブラリーを用いたBRS-3の代替リガンド探索である。本手法は、哺乳類では産生不可能である生理活性物質(非リボソーム依存性ペプチドやポリケチド由来等)や、従来の方法では利用が不可能であった難培養性微生物のゲノム資源を利用可能とするものである。まず、カイメン共在細菌群からゲノムDNAを抽出後、断片化してベクターに組み込み、大腸菌に形質転換することで約10万クローンのゲノムライブラリーを構築した。次に、各クローンの塩基配列の一部を解析し、ペプチド産生を行なう可能性の高い120クローンを選択した。さらに、BRS-3を導入した培養細胞に、各クローンの大腸菌培養上清またはHPLC分画を添加し、シグナル活性としてCa2+動員能を測定した。その結果、2つのクローン#42と#49をBRS-3代替リガンドを産生するソースとして選び出した。現在、より再現性が高い活性を示す#42について、詳細な解析を行っている。本研究は、海洋微生物のメタゲノムをGPCRのリガンド探索に適用する世界初の試みである。従って、本研究によりBRS-3の代替リガンド発見及びGPCRの新規リガンド探索法の確立が期待される。
P1-67
ヒトiPS細胞由来神経細胞を用いた興奮毒性評価系確立の試み
佐藤 薫1,高橋 華奈子1,重本-最上 由香里1,大津 香苗1,金村 米博2,正札 智子2,福角 勇人2,岡田 洋平3,4,岡野 栄之3,白尾 智明5,関野 祐子1
国立衛研・薬理1,慶応大・医・生理2,大阪医療センター 臨床研究センター 再生医療研究室3,愛知医科大・医・神経内科4,群馬大・医・神経薬理5

Human induced pluripotent stem cells(hiPSCs)are expected to be a strong tool in drug discovery process. Neurons have specific damage process called'exictotoxicity', which is caused by excessive stimulation of excitatory neurotransmitter receptors. Because Ca2+ influx via NMDA type L-Glu receptors play a main role in this process, we have been searching for the hiPSC-derived neurons which stably express functional NMDA receptors. We also have been checking the synaptic maturation of each sample using drebrin clustering in dendritic spines as a maturation marker. We first confirmed the correlation of NMDA receptors with the excitotoxicity in hiPSC-neurons by fura-2 Ca2+ imaging of neurons differentiated from 253G1, and commercially-available hiPSC-derived neurons(iCell neurons[iNeurons]). 253G1-derived neurons showed Ca2+ responses to L-Glu from 10 days in vitro(DIV), but did not respond to NMDA until 40 DIV. L-Glu(100 μM, 1 hr)did not cause cell damage until 21 DIV. On the other hand, iNeurons showed Ca2+ responses to L-Glu from 1 DIV. However, the efficacy of AP5, an NMDA-specific antagonist, on L-Glu-induced Ca2+ responses varied by lot#. L-Glu caused cell damage to the culture batch which was responsive to AP5, indicating that the hiPSC-derived neurons which stably express NMDA receptors are necessary for the excitotoxicity evaluation system. We have examined 6 lines of hiPSC-derived neurons so far, and found two lines most of which cells have functional NMDA receptors. Currently we are verifying the practicability of these neurons for the excitotoxicity evaluation and examining the synatic maturation by checking drebrin clustering in dendritic spines.
P1-68
運動制御に関与する間接路神経の分布から背側/腹側線条体の境界を探る
滝上 紘之1,2,徐 明1,佐野 裕美3,内ヶ島 基政4,渡辺 雅彦4,岡野 栄之2,三村 將1,田中 謙二1
慶應義塾大・医・精神1,慶應義塾大・医・生理2,生理研3,北大・医・解剖発生4

大脳基底核の一組織である線条体を構成する細胞の大半は中型有棘神経細胞(MSN)と呼ばれ、ドパミンD1受容体を発現する直接路神経(D1R-MSN)とドパミンD2受容体を発現する間接路神経(D2R-MSN)からなる。D2R-MSNは自発運動を抑制する作用があるとされてきたが、腹側領域(腹側線条体)よりも背側領域(背側線条体)のD2R-MSNが主に担うと考えられている。しかしながら齧歯類の場合、双方の領域が境界なく接しているため、各々の領域が担う機能に関する議論はどうしても曖昧なものにならざるを得なかった。細胞殺傷能力のある毒素分子の発現期間を調節することが可能な遺伝子改変システムを用いて、D2R-MSNのみを除去してみたところ、細胞死は線条体の腹外側領域局所から始まり、時間経過と共に背外側へと広がった。毒素の発現期間を10日に制限したマウスでは、線条体腹外側のみに細胞除去が限局し、14日に制限したマウスでは腹内側、背内側に細胞除去が広がり、28日に制限したマウスでは線条体全域に細胞死が認められた。それぞれのマウスの自発行動量を計測したところ、毒素出現期間が10日の場合は対照群と有意差を認めなかった一方で、14日の場合には有意な行動量増加を認め、28日の場合には明らかな多動を認めた。このことから、自発運動の抑制に関与するD2R-MSNと関与しないD2R-MSNの境界は、毒素出現10日の除去領域よりも背側で、14日の除去領域よりも腹側にあることが明らかになった。本操作は、背側、腹側線条体の機能分化を研究する新しいツールになり得る。
P1-69
機能的MRIを用いた甘味料によるラット脳活動変化の検討
近藤 ゆき子1,樋口 さとみ2,松下 尚子3,入江 康至1,弘瀬 雅教4,佐々木 真理2,平 英一1
岩手医科大学薬理学講座情報伝達医学分野1,岩手医科大学医歯薬総合研究所超高磁場MRI診断・病態研究部門2,岩手医科大学医学部内科学講座循環器内科分野3,岩手医科大学薬学部分子細胞薬理学講座4

Artificial sweeteners are used for the purpose of reducing calorie intake from foods, instead of sugar. Small amount of artificial sweeteners has a strong sweet taste with less calories. It is used for patients with obesity and diabetes to control weight by preferences. However, recently it is suggested that the excessive intake of artificial sweeteners increases the body weight. In addition, it is reported that intake of sweeteners changes the sense of sweet taste and increases ingestion of foods. However, it is not clear whether artificial sweetener intake really causes overweight. Therefore, we investigated the time course of weight gain of rats feeding foods with artificial sweeteners or sucrose. Furthermore, we examined the changes of brain activity by functional MRI when rats are stimulated with the sweetness of artificial sweeteners or sucrose. We used acesulfame K and sucrose as a sweetener, because it is reported rats can taste both the sweetness. The acesulfame K is an artificial sweetener with 200 times sweetness as much as sugar with zero calorie. It is one of the artificial sweeteners used in many foods and beverages. As a result, we found that rats prefer acesulfame K or sucrose than water. It was also suggested that the rats prefer acesulfame K as well as sucrose. There was little difference in the gain of weight between rats ingested sucrose and acesulfame K. However, the functional MRI examination under stimuli with sucrose or acesulfame K suggested that brain respond differently for each sweeteners.
P1-70
高齢うつ病の脳構造学的異常
原田 健一郎1,松尾 幸治1,中島 麻美2,下地 啓五3,柴田 朋彦4,樋口 文宏1,樋口 尚子1,中野 雅之5,芳原 輝之1,大朏 孝治6,綿貫 俊夫1,山形 弘隆1,松原 敏郎1,上田 克彦7,古川 又一7,松永 尚文8,渡邉 義文1
山口大学大学院医学系研究科高次脳機能病態学分野1,長門一ノ宮病院2,国立精神神経センター放射線科3,山口県立総合医療センター神経科4,片倉病院5,三隅病院6,山口大学医学部附属病院放射線部7,山口大学大学院医学系研究科放射線医学分野8

【目的】高齢化社会に伴い、高齢うつ病患者が増加してきている。高齢うつ病は治療反応性が乏しい、再発率が高い、認知障害の併存が多いなど、若年うつ病とは臨床特徴が異なると報告されている。脳画像解析も多く行われており、前頭-線条体-辺縁系回路や眼窩前頭-辺縁系回路の異常が報告されているが、若年うつ病と病態メカニズムの異同は明らかになっていない。今回われわれは、MRIを用いて、若年発症高齢うつ病患者(発症年齢20-40歳代、Early-Onset Depression;EOD)、高齢発症うつ病患者(発症年齢50歳異常、Late-Onset Depression;LOD)の灰白質体積、白質連結性といった脳構造異常の相違を検討したので報告する。【方法】うつ病患者45例(平均年齢60.2±8.1歳。男性19名、女性26名;EOD 20例、LOD 25例)と50歳以上の健常高齢者(Healthy control subjects;HC)61例(平均年齢62.9±7.6歳。男性17名、女性44名)の計106例について検討した。本研究は山口大学医学部附属病院Institutional Review Boardの承認を得ており、すべての対象者から文書による同意を得ている。MRIは、SIEMENS社製3T MR装置で撮像し、得られた画像データについて、灰白質はvoxel-based morphometry(VBM)、白質連結性はtract-based spatial statistics(TBSS)を用いて解析した。統計解析は、関心領域(前頭前皮質、眼窩前頭皮質、海馬、尾状核、被核、視床)に関して3群の比較を行った。TBSSでは、fractional anisotropy(FA)とmean diffusivity(MD)を指標に用いた。【成績】VBM解析では、EOD群はHC群と比較して海馬の灰白質体積が有意に小さかった。LOD群はHC群と比較して前頭前皮質、眼窩前頭皮質において有意に灰白質体積が小さかった。TBSS解析では、すべての群間においてFA、MD値の有意差は認められなかった。【結論】以上の結果から、同じ高齢うつ病であっても、発症年齢の違いによって病態メカニズムは異なる可能性があることが示唆された。