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若手道場(大学院生口演、若手研究者口演)
その他
1G-道場2-1
水道水中リチウム濃度と思春期児童の精神的健康問題
安藤 俊太郎1,小池 進介2,下寺 信次3,藤戸 良輔3,澤田 健3,寺尾 岳4,古川 壽亮5,佐々木 司6,井上 新平7,飛鳥井 望1,岡崎 裕士8,西田 淳志1
1東京都医学総合研究所,2東京大学 こころの多様性と適応の統合的研究機構,3高知大学医学部 神経精神科,4大分大学医学部 精神神経医学講座,5京都大学 大学院医学研究科 社会健康医学専攻,6東京大学大学院 教育学研究科,7福島県立医科大学会津医療センター,8東京都立松沢病院

【目的】本研究の目的は、水道水中リチウム濃度と不安抑うつ、攻撃性、自殺関連行動を含む精神的健康問題の関係を、大規模一般思春期児童データを用いて検証することである。【方法】2008年から2009年にかけて、高知県において学校ベースの横断調査を行った。公立中学校24校の生徒が自記式質問紙に回答した。主要アウトカムは、GHQ-12(不安抑うつ)、他者への暴力行為、いじめ、器物破壊行為、自傷行為、自殺念慮などを含む精神的健康問題である。水道水サンプルは学校に水を供給する水源から採取され、原子吸光分光法によって水道水中リチウム濃度が測定された。リチウム濃度と精神的健康問題の関係は、学校を固定効果とした一般化線形混合モデルによって検討され、交絡要因もモデルに投入された。【結果】全3311人の生徒のうち、3040人が自記式質問紙に回答した(回答率91.8%)。水道水中リチウム濃度の平均は0.48μg/Lであり(標準偏差,0.52;範囲,0.01 to 2.10)、これは先行研究の値より比較的低かった。多変量解析において、水道水中リチウム濃度は抑うつ症状(p=0.02)、他者への暴力行為(p=0.02)と負の関係を示したが、自殺関連行動(自殺念慮,p=0.82、自傷行為,p=0.46)とは有意な関係を示さなかった。【結論】水道水中リチウム濃度は一般思春期児童の抑うつ症状や他者への暴力と負の関係を示しており、抗うつ・抗攻撃性効果をもつかもしれない。
1G-道場2-2
肝臓代謝状態の変化は迷走神経を介して情動行動に影響する
山田 大輔1,2,小田桐 紗織1,2,和田 圭司1,2,関口 正幸1,2
1国立精神神経セ・神経研・四部,2AMED-CREST,日本医療研究開発機構(AMED)

【背景】近年、体外の情報だけでなく内臓の状態を脳が感知(内環境受容)・処理し体内環境のメンテナンスをおこなう末梢-脳連関という概念が注目を集めている。たとえば肝機能変化がおこると、その情報が求心性迷走神経を介して脳へ伝えられて何らかの処理を受け、さらに遠心性交感神経を介して末梢の褐色脂肪組織量を制御するという末梢-中枢連関システムの存在が知られている。しかし、末梢臓器の状態・機能変化が中枢機能、特に情動行動に与える影響についてはほとんど未知である。【目的】肝機能変化がマウスの情動行動に影響するかどうか、またもし影響する場合、迷走神経求心性線維の関与があるかどうか、を明らかにすること。【方法】既報にしたがい、雄性C57BL/6Jマウスに高脂肪食(HFD)+Peroxisome proliferator-activated receptorγ(PPARγ)過剰発現させることにより脂肪肝を誘発した。肝臓でのPPARγ過剰発現はマウスの尾静脈にPPARγを組み込んだアデノウィルスAd-PPARγを投与することにより行った(HFD+Ad-PPARγ群)。ウィルス投与の1週間後から情動性評価のためにホールボード試験、文脈性恐怖条件づけ試験を行った。対照群には通常食給餌マウスおよびHFD+Ad-GFP投与マウスの2群をもちいた。また、迷走神経の関与を検討するため、Ad-PPARγ投与1週間前に迷走神経肝臓枝の切除を行った。【結果・考察】尾静脈へのAd-PPARγ投与により肝臓選択的なPPARγタンパク量の増加、肝臓中性脂肪量の増加を確認した。不安の評価系であるホールボード試験における不安様行動量は、通常食群に比べてHFD+Ad-GFP群で有意に減少し、HFD給餌による不安亢進が認められた。一方、HFD+Ad-PPARγ群の不安様行動量は通常食群レベルに回復したことから、肝臓でのPPARγ発現が抗不安作用を誘発する可能性が示唆された。さらに、このAd-PPARγ投与による抗不安作用は求心性迷走神経肝臓枝の切除によって消失した。次に不安以外の情動性である恐怖記憶に着目した。文脈性恐怖条件づけ試験において、通常食群とHFD+Ad-GFP群では恐怖記憶の程度に差は認められなかったが、HFD+Ad-PPARγ群では他の2群に比べて有意な恐怖記憶の低下がみられた。そして興味深いことに、このAd-PPARγ投与による恐怖記憶の低下は迷走神経肝臓枝切除によっても消失しなかった。これらの結果は、求心性迷走神経を介した肝臓-脳連関による情動制御システムの存在を示唆するとともに、同じ負情動に分類される恐怖と不安とは異なる臓器連関システムによって制御されている可能性を示すものと考えられる。
1G-道場2-3
Imaging voltage in neurons with genetically encoded indicators
坂本 雅行1,2,阪東 勇輝2,Kwon Taekyung2,Kim Junghoon2,Peterka Darcy2,井上 昌俊1,尾藤 晴彦1,Yuste Rafael2
1東京大院・医・神経生化学,2コロンビア大学生物科学科

Imaging membrane potential in neurons has become a fruitful approach to study neural circuits. Recently, the effective performance of genetically encoded fluorescent voltage indicators has been greatly improved. Here, we will demonstrate the use of new genetically encoded voltage indicators. First, we applied these indicators to measure the voltage in dendritic spines. Due to the small size of spines, it is not possible to measure their electrical properties with standard electrophysiological techniques. We recorded voltage fluorescence signal in response to synaptic input with two-photon glutamate uncaging in mouse hippocampal cultured neurons. Based on the experimental observations, we estimated spine neck resistance and investigated how it influentces the EPSP amplitude. Next, we utilized these indicators in vivo with two-photon microscopy. We recorded visual stimulus-induced fluorescent response in visual cortex with single cell resolution in single trials. We also found these indicators can detect subthreshold events which are practically invisible by calcium imaging. Our results demonstrate that the feasibility of voltage imaging as a tool to monitor the activity of neurons.