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一般(口演)
神経画像
2B-一般1-1
MEGによる神経伝達物質とワーキングメモリー課題中のオシレーション活動の関係についての検討
武井 雄一1,藤原 和之1,田川 みなみ1,笠木 真人1,高橋 由美子1,加藤 隆1,2,茂木 智和1,鈴木 雄介1,桜井 敬子1,山口 実穂3,廣永 成人4,飛松 省三4,成田 耕介1,福田 正人1
1群馬大学大学院医学系研究科神経精神医学教室,2つつじメンタルホスピタル,3群馬大学医学部,4九州大学大学院医学研究院臨床神経生理学教室

1.背景 近年、fMRI研究において、認知課題中の課題関連活動抑制が前部帯状回、後部帯状回、楔前部において生じる事が報告されており、また課題関連活動抑制が神経伝達物質と関連していることを報告している。しかしながら神経伝達物質とtask-induced oscillatory modulation(TIOM)の関連について調べた検討はない。我々は、perigenual ACC(pgACC),mid-anterior cingulate cortex(mid-ACC),occipital cortex(OC)を関心領域とし、magnetic resonance spectroscopy(MRS)により安静時のGABA、glutamate+glutamine(Glx)濃度を測定し、またMEGを用いてワーキングメモリー課題中のTIOMを測定し、両者の関係について検討した。2.方法 健常男性20名を対象とし、安静時のMRSデータと、n-back課題中のMEGデータを取得した。MEGデータはソース解析を行い、Morlet wavelet transformによりInduced powerを計算した。解析は、encoding/retention phaseの1back,2backのデータについて、0backのデータに対するパーセント変化率を計算し、各周波数帯域における平均パワーを計算した(TIOM0B)。TIOM0BとGABA/Glx比、n-back課題の行動結果の関係を、Pearson correlationで評価した。3.結果 TIOM0Bは、θ~β帯域の、特にEncoding phaseで明らかに低下していた。TIOM0Bと抑制/興奮比の指標であるGABA/Glx、行動結果の相関結果は、pg-ACC、mid-ACCにおいて、Encoding phaseのBeta帯域を中心に、主にTIOM2B-0BとGABA/Glxの間に正の相関を認めた。また、TIOM2B-0Bと正答率変化率の間で負の相関を認めた。4.考察 我々は、Encoding phaseのTIOM0Bが、GABA/Glxと正の相関をしており、また正答率と負の相関を示すことを明らかにした。これらの結果は、抑制/興奮比が興奮に偏るほど、θからβ帯域のTIOMの抑制の程度が強くなることを示しており、また正答率が高くなることを示している。今回相関を認めたpg-ACC、mid-ACCはdefalut mode network(DMN)の一部を構成していると考えられる。DMNは内的な活動を表現しており、今回の結果は、GABA/Glx比が課題に関連しない内的活動を効率的に抑制できる程度を表現している可能性がある。
2B-一般1-2
認知行動療法によるうつ病患者のメタ認知の変化について:fMRI study
菊地 俊暁1,2,寺澤 悠理2,3,梅田 聡2,3,前田 貴記2,4,渡辺 任2,菊本 弘次2,渡邊 衡一郎1
1杏林大学医学部精神神経科学教室,2駒木野病院 精神医学・行動科学研究所,3慶應義塾大学文学部心理学研究室,4慶應義塾大学医学部精神神経科学教室

背景と目的
 うつ病における機能的MRIでは、様々な脳領域における活動性の異常が指摘されており、薬物治療による変化が認められる部位としては、扁桃体や海馬、前頭葉内側、背外側前頭前野などが挙げられる。薬物療法と並びうつ病の治療として用いられる認知行動療法(CBT)においても、同様の領域における変化が認められるものの、必ずしも薬物療法と一致するものではなく、活動の増減が異なる領域も多い。神経伝達物質や神経細胞に働きかけると推測されている薬剤と、認知の修正やセルフモニタリングを中心とした非物質的介入を行うCBTでは、効果発現の仕方に違いがあるであろうことは容易に想像がつく。しかしながら、これまでのCBTによるfMRI上の変化とは、うつ病そのものの改善、すなわちうつ病症状と関連するような、意欲や報酬、否定的な感情や状況への自己関連付けなどに関する課題が多く、CBTそのものの特異的な変化を観察するような課題ではなかった。CBTは認知再構成や行動活性化など複数のスキルに分かれているが、当初は自らの思考や気分、行動、身体を同定するために活動記録などを用いてモニタリングを行い、それを基盤として思考の修正や活動性の変化を促していく。すなわち、自らの内部に対する感覚を活性化することから始まる。我々は、それを踏まえて、CBTに固有の変化を観察するため、気分や身体へのメタ認知的課題を用いてCBTの前後での脳活動の変化を機能的MRIによって測定した。
方法
 DSM-IVにおける大うつ病性障害を満たし、抗うつ薬の投与がないか、もしくは8週間以上投薬が固定されている12名の患者を対象とした。マニュアルに基いたCBTを計16回、個人セッションで行った。治療者は訓練を受けた医師もしくは臨床心理士が施行した。fMRIの課題は、寺澤らが報告した自己の気分や身体、持ち物を参照する課題(Terasawa et al., Hum Brain Mapp, 2013)であり、それぞれ6施行、約5分間行い、2回繰り返した。撮像はCBTの前後で行い、画像の処理・解析にはFSL(http://www.fmrib.ox.ac.uk/fsl)を使用した全脳解析で得たうえで、混合効果モデルを用いてCBTの前後で対応のある比較を行い、クラスター閾値をZ>1.8、有意閾値をp<0.05として領域を特定した。
結果
 気分および身体状況の参照と、持ち物を参照した時を比べた時のBOLD信号の差は、CBT前よりもCBT後のほうが、前頭葉内側および外側前頭前野において増加していた。CBTにより、自らの気分や身体に対する注意を払う、すなわちメタ認知的な脳活動の活性化が得られたと考えられる。うつ病の改善度とは関連せず、CBTのスキルに固有な変化が確認できたと考えられた。