システム神経科学
Systems neuroscience
EC3
システム神経科学
Systems neuroscience

○池谷裕二1
○Yuji Ikegaya1
東京大学大学院薬学系研究科1
Laboratory of Chemical Pharmacology, Graduate School of Pharmaceutical Sciences, The University of Tokyo1

「システム神経科学」の定義は難しく、研究者によって焦点がまちまちです。この分野で影響力のある教科書『23 Problems in Systems Neuroscience』でも、虫の微小脳からヒトの脳までがカバーされ、知覚・運動から意識まで、多岐にわたる問題を扱っています。研究対象とするシステム階層も、数個の神経細胞から脳全体まで、文字通り「桁違い」です。しかし、いずれの研究もほぼ共通の目標を持っています。それは分子や細胞レベルのミクロな知見と、行動神経科学や認知神経科学によってもたらされた高次精神活動に関する知見とのギャップを埋めようという試行です。このギャップをメゾスコピック層(中間層)と私は呼んでいます。当日のコース講義では、どのような方法でこの難題に立ち向かうことができるのかを、基本知識から最先端技術までを柔軟にお話したいと思います。ポイントは脳情報をいかに読み取るかという「解読」の技術と、脳情報を人工的に変更したときにどのような変化が現れるかという「操作」の技術です。なお、2013年4月にオバマ大統領が、今後10年間を「脳の時代」と位置づけ、「Brain Activity Map」計画を発動し、年間1~3億ドルの研究算をつぎ込むことを宣言したことからもわかるように、この分野は世界的に大きな注目を集めるとともに、いよいよ研究成果が問われる領域にもなっています。

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