計算精神医学とBMI技術に基づく精神疾患バイオマーカー
Computational psychiatry and psychiatric biomarkers based on BMI technology
EC4
計算精神医学とBMI技術に基づく精神疾患バイオマーカー
Computational psychiatry and psychiatric biomarkers based on BMI technology

○川人光男1
○Mitsuo Kawato1
国際電気通信基礎技術研究所1
ATR Brain Information Communication Research Laboratory Group1

"精神科の臨床医の皆さんが何故、計算論的神経科学という耳慣れない研究分野の教育コースを受講する必要があるのでしょうか? それにはいろんなレベルでの理由が考えられます。先ず、第1に、最も原理的な説明は、神経科学における異なるレベルを繋ぐのは、理論的なアプローチしかないと言えます。例えば大脳基底核の線条体でのドーパミンとD2受容体の増加がどのようにして統合失調症の陽性症状につながるかを理解しようとすれば、遺伝子、物質、シナプス、ニューロン、神経回路、マクロコネクトーム、そして症状という異なるレベルを乗り越える、階層を繋ぐ神経機構を説明する理論が必須です。これには、計算論的神経科学の理論やモデルが必須となります。 第2の理由は、最近流行の計算論的精神医学(Computational Psychiatry)の勃興です。小脳の内部モデル仮説や、大脳基底核を中心とした強化学習理論、さらには経済学のゲームを取り込んだ神経経済学などの理論に基づいて、パーキンソン病などの神経疾患のみならず、薬物依存、ADHD,統合失調症、うつ病と不安神経症、そして自閉症スペクトラムなどの精神疾患を理解しようとする研究が、ここ数年間で急激に進展しています。 第3に、計算論的神経科学と深い関係にあるブレインマシンインタフェースのデコーディング技術やリアルタイムニューロフィードバックシステムに基づいて、精神疾患の強力なバイオマーカーや全く新しい治療法などの開発が始まっています。このような最近の動向とそれを理解するのに必要となる基礎知識を紹介したいと思います。"

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