委員会

委員長便り

【日本神経化学会】委員長だより(将来計画委員会)

3月末からの自粛を経て、すべてが変わった。私の所属する大学医学部・病院において、4月初旬は、毎日のように対策会議が開かれ、「将来」「未来」を「計画」「予測」しようとした。将来を計画するのが困難な中で、待ったなしの意思決定をせざるを得なかった大学医学部執行部の皆さんには本当に頭が下がる。当時の判断が正しかったか、今になってもわからない。結果こうなったとしか言えない。先行するイタリアやニューヨークのようになると誰もが思ったが、結果は違った。
病院の機能を止めることはなかったが、研究と教育の機能は止めた。研究は不要不急かという議論を深めるよりも、国民はパチンコとスポーツジムに目が行ってしまったように思う。結果として研究は止まった。教育も止まった。
そして今がある。緊急事態宣言が解除されたが、大学には、学部の新入生はまだ一歩も踏み入れていない。部やサークルの勧誘なしの、いきなりオンラインの授業である。大学院生は6月から研究を開始することが許された。会議はすべてオンライン。抄読会もオンライン。医学部キャンパス教員は、家族以外との会食禁止。昼ご飯は壁(もしくはモニター)に向かって一人で食事。ここまで徹底しながら、満員電車で通うという矛盾あり。
今後、学会活動はどうなっていくのだろうか。「将来」を「計画」することがどんなに難しいことか、と言った矢先に、今後の学会活動を考えてみる。まず、学会活動は不要不急なのだろうか。必要か不要かと問われれば、必要ですと答えるが、急ぐか急がないかと問われれば、急ぎませんと私は答える。急ぐかどうかを問うのではなく、定期的にやるべきだ。私は学会の必要性は、若手育成にあると考えている。大学も育成の場であるが、神経化学という特定の研究領域における育成の場はここしかない。1年に1回、若手が発表する意味がある。大人は発表に対してコメントをする必要性がある。この相互交流が無いなら、学会活動をする必要はなくなる。大人が、学生のポスター、口頭発表にもっと口を出すべきだ(教育的に!)
3密を回避すべきではある。もともと神経化学会は参加者が少なく、大会場に数十人しか入っていないことはしばしばある。規模が小さい学会なので、3密は気にしなくて良さそうだ。若手育成セミナーは、当学会の目玉とも言える活動だが、これは3密である。密に接して交流することを売りにしている。馬場大会長も頭を悩ましていると思う。感染予防対策を施した上で、100人以下のイベントであれば、開催しても良いのではないか。会員の皆さんの意見も聞いてみたい。
おそらくどこの学会も、今後の学会運営について「将来計画」しているはずだ。あらためて、学会の存在意義を考えるチャンスだろう。学会員それぞれが考える、当学会の存在意義はあるだろう。私は前述したように、神経化学分野の人材育成に当学会の存在意義はあると考えている。たとえば年会では、若手道場と育成セミナーと企画シンポジウムだけやる。あとはポスター。育成に特化した規模の小さい年会も良いのではないか。
新しい生活様式に則って、当学会の将来をどのように計画するのか。人材育成を謳っても、教える側の質が高くないといけないし、そもそもこの学会に若手が足を運んでくれないと始まらない。脳の疾患を扱うならこの学会。疾患も勉強できる、分子も勉強できる、治療法も勉強できる。そういう路線が明確になれば、それに興味を持つ若手は来るだろう。学会の規模を大きくすることを目指す考えもあるが、小さいまま質を高く維持する考えもあるだろう。学生が、脳科学のレジェンドと、夜通し語れる学会は神経化学会だけである。
当学会の将来について、コメントお待ちします。
(コメントは、日本神経化学会[目安箱] https://www.neurochemistry.jp/suggestion/
 または jsn@imic.or.jp までお寄せください)

将来計画委員会  
田中謙二


(2020年6月10日)