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一般、大学院生、若手研究者(ポスター)
細胞内・細胞間、情報伝達、変換、修飾、突起進展、回路網形成
P-025(3)
Evaluation of new antibodies against SRF coactivator MKL1 and MKL2.
金田 真理彩1,阪上 洋行2,福地 守1,津田 正明1,田渕 明子1
1富山大院・医薬・分子神経生物,2北里大学・医・解剖学

Construction of neural circuit and synaptogenesis and synaptic morphology play important roles in the expression of higher brain function. Regulation of these events is controlled not only by movement of cytoskeletal molecules such as actin but also by the expression of genes encoding functional molecules. We have focused on megakaryoblastic leukemia(MKL)family members, which have actin-binding motifs and function as transcriptional coactivators of serum response factor(SRF). Considering such bifunctional properties, MKL is suggested to act as a linker between“morphological change”and“gene expression”. So far, it has been proposed that MKL1, released from G-actin via Rho signaling, and translocates into the nucleus where SRF-mediated gene expression is regulated. Our previous studies have shown that MKL is highly expressed in the brain and promote the complexity of dendritic morphology associated with an increase of the SRF-mediated gene expression. In addition, our biochemical analyses suggest that MKL1 and MKL2 are localizaed in postsynapses. However, conventional antibodies against MKL1 and MKL2 have not been fully available for immunocytochemical and immunohistochemical analyses. Thus, we produced MKL1 and MKL2 antibodies with high qualification in collaboration with Dr. Sakagami's laboratory. In this study, we evaluated the quality of MKL1 or MKL2 antibodies. We found that MKL1 and MKL2 antibodies recognized specifically their antigens and they did not cross-react with MKL2 and MKL1, respectively. Immunocytochemical signals with anti-MKL1 and anti-MKL2 antibodies were erased by antibody absorption test. We are now further evaluating these antibodies for specific detection of endogenous MKL by using RNAi experiments.
P-026(3)
神経活動依存性プロトカドヘリンArcadlinの2つのスプライスバリアントの発現調節
井次 陸1,高坂 和芳1,杉浦 弘子2,安田 新2,山形 要人2,田中 秀和1
1立命館大学大学院生命科学研究科,2東京都医学総合研究所

Arcadlin(Acad,protocadherin-8)は海馬で神経活動依存的に発現上昇する膜貫通タンパク質であり、cadherinスーパーファミリーの一員である。Acadはシナプスに誘導されるとそれ同士がホモフィリックに結合し、その下流に存在するTAO2キナーゼ(TAO2β)やp38MAPキナーゼのリン酸化を誘導する。また、Acadはこのリン酸化を介してN-cadherinと共に内在化し、スパイン密度を調節することも報告されている。acad遺伝子からはshort(acad-S)とlong(acad-L)の2つのスプライスバリアントが転写され、翻訳産物はAcad-Lのみに膜貫通ドメイン直下で98アミノ酸の挿入が見られる。しかしながらこれらのスプライシング機構や機能的差異、またそれぞれがどのような挙動を示すのか明らかでない。本研究ではacad-S-Lの発現及び機能を比較解析するために、初代培養ラット海馬神経細胞とマウス海馬で、mRNA及びタンパク質の発現比較を試みた。まず18日間培養したラット海馬神経細胞にLTP(シナプス長期増強、long-term potentiation)を起こすような化学的刺激をしてtotal RNAを抽出し、各バリアントの発現量を定量的PCRで検討した。さらに電気けいれん刺激をしたマウス海馬での、acad-S-Lの発現量の変化も検証中である。
P-027(3)
SNAP-25のS-guanyl化はSNARE複合体とcomplexinの相互作用を制御する
岸本 祐典1,國枝 恒兵1,赤池 孝章2,居原 秀1
1大阪府立大学大学院理学系研究科生物科学専攻,2東北大学大学院医学系研究科環境保健医学分野

【目的】一酸化窒素は、シナプス伝達において機能を果たしていることが示唆されている。我々の研究グループは、一酸化窒素/活性酸素種シグナルの下流で8-nitro-cGMPが産生されることを発見した。この分子は、タンパク質中のチオール基にcGMP構造を付加するS-guanyl化と呼ばれる翻訳後修飾を介して、その機能を発揮している。近年、開口放出の際に重要な役割を果たすタンパク質であるSNAP-25が、S-guanyl化されることが明らかになった。しかし、その生物学的意義についての報告は少ない。本研究では、開口放出の際に重要な役割を果たすSNARE複合体と、SNARE複合体に結合し、開口放出を制御するタンパク質であるcomplexinに焦点をあて、SNAP-25のS-guanyl化による神経機能への関与について調べた。【方法】ラット(Wister rat)より脳を摘出し、薄切した。抗8-nitro-cGMP抗体及び抗S-guanyl化タンパク質抗体を用いた蛍光免疫染色法により、各々の脳における局在を確認した。シナプトソームをラットより調製し、8-nitro-cGMPを処理した。抗SNAP-25抗体を用いたWestern blot法により、SNARE複合体を検出した。SNAP-25のシステイン残基をアラニンに置換した点変異リコンビナントタンパク質を調製し、8-nitro-cGMPを処理した。抗S-guanyl化タンパク質抗体を用いたWestern blot法により、SNAP-25中のS-gunayl化標的部位を明らかにした。SNAP-25-FLAG発現プラスミドを調製し、SH-SY5Y細胞にトランスフェクションした。8-Nitro-cGMPを処理して細胞を可溶化させた後、complexinを用いたpull down assayを行い、結合するSNARE複合体に含まれるSNAP-25-FLAGをWestern blot法により確認した。【結果・考察】蛍光免疫染色の結果、8-nitro-cGMP及びS-guanyl化タンパク質は、神経細胞に局在していることが観察された。8-Nitro-cGMPを処理したシナプトソーム中のSNARE複合体を検出したところ、8-nitro-cGMP濃度依存的にSNARE複合体量が増加していた。リコンビナントタンパク質を用いた実験の結果、SNAP-25の90番目のシステイン残基がS-guanyl化の標的になることが明らかになった。Pull down assayの結果、8-nitro-cGMPの処理によって、complexinで回収されるSNARE複合体量が減少した。SNARE複合体とcomplexinは、開口放出の際に重要な役割を果たす構造体であり、以上の結果から、8-nitro-cGMPが化学シナプス伝達に関与していることが示唆された。
P-028(3)
BubR1を介した神経突起伸展の制御
山形 弘隆1,内田 周作1,樋口 文宏2,芳原 輝之3,渡邉 義文1,2
1山口大学医学部附属病院精神科神経科,2山口大学大学院医学系研究科高次脳機能病態学分野,3山口県立総合医療センター神経科

ストレス負荷がマウス脳内の神経可塑性に影響を与えることが知られている。また、細胞周期関連因子が神経新生や神経可塑性を調節することが報告されているが、ストレス負荷が細胞周期関連因子にどのような影響を与えるかはまだ十分わかっていない。今回われわれは、スピンドルチェックポイントシグナルを調節するBubR1が、ストレス負荷後の海馬神経突起に対してどのような役割を持っているか調べた。慢性ストレス負荷マウスの海馬歯状回の神経突起の長さを測定したところ、ストレス依存的に神経突起の減少が認められた。この時の海馬BubR1の発現を調べたところ、ストレス依存的にBubR1が増加していた。ストレス負荷マウス海馬の神経突起伸展がBubR1を介して調整されていると仮定し、神経由来細胞であるNeuro2a細胞でBubR1を特異的に減少させたところ、神経突起伸展が促進された。神経突起伸展にはERKのリン酸化やId1の減少が関与していることが示唆された。BubR1を初代培養神経細胞で過剰発現させると、神経突起伸展が抑制された。これらの結果から、ストレス負荷によって海馬神経のBubR1発現が増加し、神経突起伸展が退縮してうつ様行動に影響を与える可能性が示唆された。
P-029(3)
抗NMDA受容体抗体が神経発達に及ぼす影響の検討Effects of anti-NMDA receptor antibodies to the neuronal development
岡本 宗次郎,酒本 真次,岸本 真希子,岡久 祐子,高木 学,山田 了士
岡山大学大学院精神神経病態学教室

【背景】自己免疫性脳炎の最多の原因である抗NMDA受容体抗体が、統合失調症や双極性障害に類似した精神症状を呈することは広く知られる。長期、抗NMDA受容体抗体に暴露されたマウスは、行動異常を呈するが、神経発達障害については検討されていない。人では、抗NMDA受容体抗体に暴露された胎児は出生時健常と報告されるが、成人期における精神疾患の発症は検討されていない。精神疾患の発症脆弱性の原因として、早期の神経発達障害仮説が知られる。そこで我々は、抗NMDA受容体抗体が神経発達に与える影響を証明し、精神疾患への早期の抗免疫療法の可能性の根拠を得ることを目的とする。【方法】ラット大脳皮質初代培養細胞を作成し、患者の抗NMDA受容体抗体または市販の抗NMDA受容体抗体で処置し、神経突起伸長、神経遊走、シナプス形成に与える影響を検討した。神経細胞は発達段階に応じて固定され、蛍光免疫染色の後、蛍光顕微鏡で撮影し検討した。(1)D.I.V.3日に、抗NMDA受容体抗体陽性患者血清、陰性患者血清、市販の抗NMDA受容体抗体で各処置し、神経突起伸長、神経遊走(中心体の消失)への影響を検討した。(2)D.I.V.6日まで、(1)と同様の処置を行い、D.I.V.3日に抗NMDA受容体抗体陽性患者血清を取り除き、突起伸長抑制や神経遊走障害が可逆的かも検討した。(3)D.I.V.25日に(1)と同様の処置を行い、D.I.V.28日に固定。抗NMDA受容体抗体が、スパイン形成に与える影響を検討した。統計処理はt検定を用いた。本研究は、岡山大学倫理委員会の承認を得ている。【結果】(1)D.I.V3日:抗NMDA受容体抗体陽性患者血清(p=1.67E-33)、市販抗体(50倍希釈)(p=8.75E-39)、市販抗体(300倍希釈)(p=1.60E-36)は、統計学的有意差をもち神経突起伸長を阻害した。また、中心体の消失は、抗NMDA受容体抗体陽性患者血清(p=3.00E-05)、市販抗体(300倍希釈)(p=6.58E-06)で、統計学的有意差をもち消失遅延し、神経遊走障害が示唆された。(2)D.I.V.6日:神経突起伸長障害、神経遊走障害は、D.I.V.3日の時点より、抗NMDA受容体抗体陽性患者血清または市販抗体の群と、コントロールまたは陰性患者血清で処置した群の間で大きくなった。また、抗NMDA受容体抗体による、神経突起伸長障害、神経遊走障害は不可逆であった。スパイン変化は当日供覧予定である。【考察】抗NMDA受容体抗体脳炎は予後がよく可逆的と言われるが、神経発達段階の初期に抗NMDA受容体抗体に暴露されると、不可逆な変化を生じることが分かった。抗NMDA受容体抗体による、神経突起伸長、神経遊走の障害は、統合失調症疾患候補遺伝子の発現抑制でもみられる変化であり、神経発達障害という観点で、遺伝要因と環境要因が同様の変化をきたすと考えられた。