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一般、大学院生、若手研究者(ポスター)
突起進展、回路網形成、軸索輸送、細胞運動、細胞骨格
P-030(3)
免疫グロブリンスーパーファミリー分子Neurofascinの選択的スプライシングの制御メカニズムと生理学的役割
日高 千晴,鈴木 暁子,鮎川 典子,飯島 陽子,飯島 崇利
東海大・IIST・医学部門・分子神経生物

Neurofascinは免疫グロブリンスーパーファリミーに属する接着分子であり、神経系細胞の接着や特異的細胞間認識に関与することが知られる。また選択的スプライシングによりneurofascinは4つのアイソフォーム(NF186、NF180、NF155、NF140)が存在するが、発現細胞や発生過程によりアイソフォーム存在比は異なる。神経細胞はNF186、NF180、NF140を発現するが、発達期のスプライシングシフトによって成熟期にはほとんどがNF186となる。このようにneurofascinは時間的・空間的に選択的スプライシング制御を受けることで軸索の分化・成熟から神経伝達まで多くの過程で重要な働きを担うとされる。しかしながら、neurofascinのスプライシング制御メカニズムや各アイソフォームの詳細な役割について未だ未解明な部分が多い。今回我々は、神経細胞型アイソフォームNF186,NF180,NF140の生成に関わるNfasc exon 26-29領域の選択的スプライシングについて解析をおこなった。まず、成体マウスの脳領域間で各アイソフォームの発現比較を行ったところ、各脳領域でのアイソフォーム比率が大きく異なることが明らかとなった。従来の報告通り、海馬・大脳皮質など前脳領域ではNF186が強く発現していたが、予想に反して小脳をはじめとしたcaudal側領域ではNF140が優位であることがわかった。さらに興味深いことに、小脳顆粒細胞では神経活動依存的にCaMKとERK/MAPKシグナルの2経路を介してNF140からNF186/180にシフトすることを新たに見出した。これまでNF140は発達期の幼若神経細胞で発現し軸索伸展に関わることが示されてきたが、今回の解析から一部の神経細胞では成熟期にも強く発現していること、さらに小脳では神経活動依存的にneurofascinの選択的スプライシングが変化することが明らかとなった。これらのことは成熟脳においてneurofascinが神経回路構築や伝達経路の洗練化に関わっていることを示唆している。
P-031(3)
SOLOIST, a novel neuronal isoform of SRF coactivator MKL2, but not other isoforms, activates endogenous Arc gene transcription in neuronal cells.
田中 拓郎1,石橋 悠太1,庄司 しずく1,久保 友喜美1,袴田 知之1,阪上 洋行2,福地 守1,奥野 浩行3,尾藤 晴彦4,津田 正明1,田渕 明子1
1富山大院・医薬・分子神経生物,2北里大学・医・解剖学,3京都大院・医学研究科・メディカルイノベーションセンター,4東京大院・医学系研究科・神経生化学

The neuronal plasticity is important for higher brain functions such as memory, learning, recognition and emotion. The gene expression and the morphological change of neurons are the critical events for the neuronal plasticity. Recently, megakaryoblastic leukemia(MKL)family members have been paid attention as molecules that are involved in the gene expression and the morphological change of cells. MKL1 and MKL2 are SRF(serum response factor)coactivators with G-actin binding domains. Our previous studies revealed that MKL1 and MKL2 were highly expressed in the brain, regulated the dendritic complexity of cortical neurons and activated SRF-mediated gene expression. In this study, we characterized a novel MKL2 isoform that we identified and named SOLOIST(spliced neuronal long isoform of SRF transcriptional coactivator). Our findings showed that SOLOIST and isoform 1 were highly expressed in the brain and enriched in neurons. The expression of SOLOIST and isoform 1 increased during brain development. Luciferase reporter assays revealed that overexpression of all of the MKL2 isoforms in neuronal cells activated SRF-mediated transcriptional responses including SRF-target β-actin and activity-regulated cytoskeleton-associated protein(Arc)gene transcription. Next, we overexpressed MKL2 isoforms in Neuro-2a cells and performed real-time quantitative PCR experiment to examine if MKL2 isoforms activate endogenous β-actin and Arc gene transcription. MKL2 isoforms tend to activate endogenous β-actin gene transcriptioin. Interestingly, however, only SOLOIST drastically activated endogenous Arc gene transcription. Finally, we overexpressed MKL2 isoforms in cortical neurons to see if they alter dendritic complexity. Overexpression of SOLOIST decreased dendritic complexity, whereas MKL2 isoform 1 increased. Previous studies suggest that Arc protein controls dendritic spine elimination in dendrites. Therefore, SOLOIST may, at least in part, negatively regulate dendritic complexity through activating Arc gene expression.
P-032(3)
Cdk5によるGRAB(Rab8GEF)のリン酸化は軸索伸長を制御する
古澤 孝太郎1,淺田 明子1,福田 光則2,久永 眞市1
1首都大学東京大学院理工学研究科生命科学専攻,2東北大学大学院生命科学研究科生命機能科学専攻

神経突起伸長には、細胞骨格の構築に加え、突起先端部へのメンブレントラフィックに依存した膜供給が不可欠である。Cdk5は神経細胞に特異的なセリン・スレオニンキナーゼである。制御サブユニットであるp35と結合することで活性化され、神経細胞移動、シナプス活動、神経細胞死等様々な神経機能において重要な役割を果たしている。Cdk5-p35はメンブレントラフィックを介して神経突起伸長を制御することが示唆されているが、その分子メカニズムは明らかになっていない。メンブレントラフィックは各種RabファミリーGTPaseによって制御されている。Rab GTPaseはグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)によるGDP/GTP交換で活性化する。Rab8やRab11等、いくつかのRabは、神経突起伸長の制御因子として報告されている。我々は、Rab8のGEFであり、Rab11の結合タンパク質であるGRABに着目した。Cdk5によるGRABのリン酸化を解析したところ、Ser169とSer180がリン酸化されていた。このリン酸化はGRABのRab8に対するGEF活性を制御するだけではなく、Rab8のRab11陽性エンドソームへのリクルートも制御した。初代培養神経細胞を用いてGRABのリン酸化が神経突起伸長に与える影響を解析したところ、非リン酸化型GRABは、偽リン酸化型GRABに比べ、軸索伸長を有意に促進した。細胞内局在観察や、生細胞ライブイメージングにより、リン酸化GRABはRab11陽性エンドソームと共に軸索輸送されることが示された。これらの結果から、Cdk5はRab11-GRAB-Rab8カスケードを介して軸索伸長を制御していることが明らかになった。
P-033(3)
神経突起伸長作用を有するNr4a1遺伝子の発現制御機構 Regulation mechanisms of expression of Nr4a1 gene related with neurite outgrowth
谷尾 啓介1,津村 風帆1,島山 恵利花1,山添 亮輔1,丸岡 弘規3,下家 浩二1,2
1関西大学大学院 理工学研究科,2関西大学 化学生命工学部 生命生物工学科,3倉敷紡績(株)技術研究所

我々は、PC12細胞を用い、細胞内のcAMP濃度を上昇させるForskolin(FSK)が誘導する神経突起伸長作用について解析を行っており、この際、最初期遺伝子であるNr4a1遺伝子が関与していることを明らかにしている。
本研究では、FSKが誘導する神経突起伸長作用において、Nr4a1遺伝子がどのような発現制御を受けているのかを解析した。その結果、FSKを添加後、1-2時間をピークにヒストンH3内の14番目のリシン残基のアセチル化(AcH3K14)の亢進が確認された。また、AcH3K14がNr4a1遺伝子のプロモーター領域に結合することをチップアッセイにより明らかにした。これらのことから、Nr4a1遺伝子の発現上昇には、特定ヒストンの修飾によるエピジェネティックな発現制御を受けることが示唆された。次に、AcH3K14との結合が確認されたNr4a1遺伝子のプロモーター領域内に、転写活性を上昇させるcis-elementが存在しているかを解析した。その結果、転写調節因子AP-1およびSp1結合配列が存在する事が分かったため、これらの配列を欠損させたレポーターアッセイ用プラスミドを構築し、活性の変化を測定した結果、両者共にプロモーター活性が有意に低下していた。
次に、Nr4a1遺伝子の下流に存在する遺伝子を解析するために神経分化マーカーであるneuroD遺伝子に着目した。その結果、FSKを添加後、24時間でneuroD遺伝子の発現上昇が観察された。そこで、Nr4a1遺伝子がneuroD遺伝子の発現上昇に関与しているのかを確かめるため、Nr4a1遺伝子をPC12細胞内で強制発現させると、neuroD遺伝子の発現が有意に上昇することが分かった。さらに、neuroD遺伝子のプロモーター活性も上昇することが明らかとなった。
以上の結果から、FSKが誘導する神経突起伸長作用において、転写基本因子AP-1やSp1がエピジェネティックなNr4a1遺伝子の発現上昇に重要な役割を担っていることや、Nr4a1遺伝子がneuroD遺伝子の発現を制御していることが明らかになった。
P-034(3)
Analysis of Reelin-Nck signaling in mouse neocortex
林 周宏,井上 聖香,久保 健一郎,仲嶋 一範
慶應・医・解剖

哺乳類大脳新皮質は脳の表層に平行な6層構造を構築しており、脳の高次機能に重要な役割を果たしている。この構造の破綻は発達障害に繋がり精神疾患との関与も示唆されている。Reelinは発生期哺乳類大脳新皮質辺縁帯のCajal-Retzius細胞より分泌される糖タンパク質であるが、この分子を欠損したreelerマウスで6層構造の逆位が見られることから、Reelinは層構造形成に必須の分子と考えられる。その分子メカニズムは、Reelinが受容体であるApoER2(LRP8)もしくはVLDLRに結合することにより、アダプタータンパク質Dab1がFynキナーゼやSrcキナーゼによってリン酸化され、リン酸化Dab1が種々の分子と結合することにより下流にシグナルを伝える。現在まで、複数のDab1結合分子が同定されており、そのシグナル経路も明らかにされている。Nckはリン酸化Dab1に結合する分子の一つである。Nck自身はアダプタータンパク質であり、アクチン細胞骨格リモデリングへの関与が報告されている。しかしながら、Reelinの下流におけるNckの生理的役割は未だ分かっていない。そこで、本研究では発生期大脳新皮質におけるReelin-Nckシグナル経路について報告する。神経細胞が皮質板中位を移動している際は、Nckタンパク質は細胞質中に広く分布しているが、辺縁帯直下の原皮質帯(primitive cortical zone)中では先導突起の基部に局在するのが観察された。In utero electroporationによりNckノックダウンベクターを脳室帯の神経細胞に導入すると、皮質板での神経細胞の移動の遅れが観察され、また、移動終了後の神経細胞においても樹状突起の分枝の減少が観察された。さらに、NckノックダウンベクターをReelin発現ベクターと共発現させたところ、Reelinによって誘導される神経細胞凝集塊の形態に異常が生じた。以上の結果から、Reelin-Nckシグナルが神経細胞の移動、突起形成に関与していることが示唆された。
P-035(3)
Comprehensive behavioral study and proteomic analyses of CRMP2-deficient mice
中村 治子1,2,山下 直也1,木村 鮎子3,木村 弥生3,平野 久3,清成 寛4,塩井 剛4,5,槇原 弘子1,川本 裕子1,2,實木-高橋 葵1,米崎 久美子6,高瀬 堅吉7,宮崎 智之6,8,中村 史雄1,田中 章景2,五嶋 良郎1
1横浜市立大学 大学院医学研究科 分子薬理神経生物学,2横浜市立大学 大学院医学研究科 神経内科・脳卒中科学,3横浜市立大学 生命医科学研究科,4理化学研究所 生体モデル開発ユニット,5理化学研究所 生体ゲノム工学研究チーム,6横浜市立大学 大学院医学研究科 麻酔科学,7自治医科大学 心理学,8横浜市立大学 大学院医学研究科 生理学

Collapsin response mediator protein 2(CRMP2)was originally identified as an intracellular mediator for the repulsive axon guidance molecule, Semaphorin3A. CRMP2 plays a key role in axon guidance, dendritic morphogenesis, and cell polarization. CRMP2 is implicated in various neurological and psychiatric disorders. However, in vivo functions of CRMP2 remain unknown. We generated CRMP2 gene-deficient(crmp2-/-)mice to examine their behavioral phenotypes. During 24-h home cage monitoring, the activity level during the dark phase of crmp2-/- mice was significantly higher than that of wild-type(WT)mice. Moreover, the time during the open arm of an elevated plus maze was longer for crmp2-/- mice than for WT mice. The duration of social interaction was shorter for crmp2-/- mice than for WT mice. Crmp2-/- mice also showed mild impaired contextual learning. Because the mechanisms that contribute to the response to methamphetamine may be relevant to a variety of psychiatric disorders, we examined the methamphetamine-induced behavioral change of crmp2-/- mice. Methamphetamine-induced hyperlocomotion was observed in both WT and crmp2-/- mice, but crmp2-/- mice showed drastic behavioral changes compared to WT mice. Crmp2-/- mice also showed altered expression of proteins involved in GABAergic synapse, glutamatergic synapse and neurotrophin signaling pathways. In addition, SNAP25, RAB18, FABP5, ARF5, and LDHA, which are related genes to schizophrenia and methamphetamine sensitization, are also altered in crmp2-/- mice. Our study implies that dysregulation of CRMP2 may be involved in pathophysiology of neurodegenerative and neuropsychiatric disorders.