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一般、大学院生、若手研究者(ポスター)
神経細胞死、アポトーシス
P-052(3)
神経系細胞におけるシトシンアラビノシドのDNA損傷作用
福嶋 伸之,足立 実優,畑野 弥咲
近大・理工・生命科学

シトシンアラビノシド(Ara-C)は、DNA複製を阻害するため抗がん剤として用いられるが、非増殖性の交感神経細胞においても細胞死を引き起こすことが、20年以上前に報告されている。また、Ara-Cはラジカルを発生させ、DNA二重鎖切断を誘発することにより神経細胞死を引き起こすことも示唆されている。神経細胞においてもDNA二重鎖切断を修復する機構が存在していることから、Ara-Cにより生じたDNA二重鎖切断が修復されるのかについては不明である。我々は、神経分化したPC12細胞およびマウス海馬神経細胞を用いてAra-CのDNA二重鎖切断作用を再評価するとともに、生じたDNA損傷が修復されるのかどうかについて検討した。本研究では、DNA二重鎖切断のマーカーとしてリン酸化ヒストン2AX(p-His2AX)を用いた。最初に、神経分化したPC12細胞に0~50 μMのAra-Cを3時間投与したところ、濃度に依存してp-His2AXをもつ細胞の割合が増加した。次に、Ara-Cを24時間添加し続けた場合、添加1時間めからp-His2AXをもつ細胞の割合は増加し、24時間までHis2AXのリン酸化が認められた。一方、最初の3時間のみ添加した場合、p-His2AXをもつ細胞の割合は開始6時間から低下し、12時間後にはp-His2AXはほとんど検出されなかった。同様の検討を、海馬神経細胞を用いて行った。0~50 μMのAra-Cを投与して48時間まで培養したとき、濃度および時間に依存してヒストン2AXのリン酸化が増加した。しかしながら、50 μM Ara-Cを最初の3時間処理したとき、PC12細胞の場合とは異なり、p-His2AXの割合が経時的に増加し、96時間後では約50%の細胞でp-His2AXが見られた。したがって、神経分化したPC12細胞と海馬神経細胞においてはAra-Cの作用機構が異なると考えられた。海馬神経細胞におけるAra-CによるHis2AXのリン酸化は、デオキシシチジンの処理により抑制されたことから、特定の核酸代謝がDNA二重鎖切断に関わる可能性があると考えられた。さらにAra-Cを処理した海馬神経細胞の一部において、ブロモデオキシウリジンの取込みが認められた。このことから、海馬神経細胞では、Ara-Cに反応してDNA二重鎖切断が生じ、その後DNA合成・修復が生じていることが示唆される。
P-053(3)
マウス神経幹細胞に対する生存因子としてのBMP4シグナル経路の解析
山本 華子1,2,倉知 正1,成瀬 雅衣1,柴崎 貢志1,石崎 泰樹1
1群馬大院・医・分子細胞生物学,2群馬大院・医・医学教育セ

幼若マウス小脳より回収したCD44陽性細胞は、FGF2存在下でBMP4を加えることにより生存が促進されることが報告されている(1)。CD44は幹細胞マーカーの一つであることから、小脳以外に存在する神経幹細胞(NSCs)においても、BMP4によるアポトーシス抑制シグナル経路が機能すると考えられた。そこで我々は、生後0日齢のマウス大脳基底核隆起(GE)からニューロスフェア法を用いてNSCsを単離し、BMP4処理時のアポトーシスの割合を調べた。その結果GE由来NSCsは、CD44陽性細胞と同様に、FGF2存在下でBMP4刺激を与えることにより生存率が上昇することが明らかとなった。またこの活性は、BMP type I受容体下流のキナーゼ阻害剤であるドルソモルフィン添加によって抑制された。NSCsにおいてBMP4は分化促進因子として機能することが知られているが(2)、上述の結果からFGF2存在下でのBMP4(FGF2/BMP4)は、分化因子としてではなく、生存因子として機能することが示唆された。
このような背景に基づいて我々は、生存因子としてのBMP4が、どのようなシグナル経路を活性化するのかを明らかにするため下流因子の解析を行った。これまでにマイクロアレイ解析によって、FGF2/BMP4がSmad1/5/8/経路を活性化し、そのターゲット因子であるIdファミリータンパク質の発現を誘導することを明らかにした。その中でもId-1は、種々の細胞で生存を促進することが知られており、例えば前立腺癌を用いた実験ではBcl-xL(3)、乳がん細胞を用いた実験ではBcl-2(4)の発現を誘導するという報告がある。
NSCsにおいても同様のシグナル経路が活性化している可能性があり、これを検討するため、ウエスタンブロットによってFGF2/BMP4処理時のこれらタンパク質の発現を検討した。その結果、FGF2/BMP4処理によって、Id-1発現と共にBcl-xL発現も誘導されることを明らかにした。またこれらの発現は、上記のドルソモルフィン処理によって抑制され、それと同時にカスパーゼ3の活性化が誘導されることも明らかにした。さらにBcl-xL siRNAを導入したNSCsは、FGF2/BMP4による生存促進効果が認められなくなることを明らかにした。
現在はBcl-xL上流因子と考えられるId1のsiRNA導入を行い、その効果を検討している。また、Bcl-xLの機能的関与を裏付けるために、ミトコンドリアから細胞質へ放出されたシトクロムcの状態や、Bcl-xLとアポトーシス促進因子Baxの結合状態の検討を行っており、それらの結果も併せて報告する予定である。

1). Cai N., et al.(2011)Cerebellum, vol.11, p181-193.
2). Gross, R.E., et al.(1996)Neuron. vol.17, p 595-606.
3). Ling, M.-T., et al.(2003)Oncogene. vol.22, p 4498-4508.
4). Kim, H., et al.(2008)Breast Cancer Res. Treat. vol.112, p 287-296.
P-054(3)
脳内在性パーキンソン病関連神経毒1-benzyl-1,2,3,4-tetrahydroisoquinolineによるオートファゴソーム分解抑制
宮良 政嗣1,2,古武 弥一郎2,坂本 修一朗2,石田 慶士2,3,太田 茂2
1広島大学グローバルキャリアデザインセンター,2広島大学大学院医歯薬保健学研究科,3日本学術振興会特別研究員DC

パーキンソン病(PD)は、ドパミン神経の選択的脱落によって引き起こされる神経変性疾患であり、その発症には環境因子の関与が重要であると考えられている。1-benzyl-1,2,3,4-tetrahydroisoquinoline(1BnTIQ)は、PD患者の脳脊髄液中において通常よりも高い濃度で検出され、マウス及びサルに投与するとPD様症状を誘発する脳内在性の神経毒性物質であるが、その毒性発現メカニズムは明らかにされていない。近年、リソソームを介した細胞内タンパク質分解機構であるオートファジーの機能低下とPD発症との関係が指摘されおり、当研究グループにおいてもPD関連化学物質MPP+及びロテノンがオートファゴソーム分解抑制を引き起こすことを明らかにしている。そこで、本研究では、ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞をドパミン神経モデル細胞として用い、1BnTIQがオートファジーに及ぼす影響を評価した。まず、150及び300 μM 1BnTIQが細胞生存率に及ぼす影響をWST-1法にて評価したところ、それぞれ曝露後36及び24時間から有意な細胞死を引き起こすことが示された。一方、両濃度の1BnTIQは、曝露後12時間からオートファゴソームマーカータンパク質LC3-IIの発現量及びドット状局在の増加を引き起こした。オートファゴソームの増加は、オートファゴソーム生成促進または分解抑制のいずれかを示していると考えられたが、両者を区別する方法として確立されているLC3-IIターンオーバーアッセイより、後者であることが明らかになった。この結果を反映して、両濃度の1BnTIQを曝露した細胞には、オートファジー選択的基質p62タンパク質が顕著に蓄積していた。また、RFP-GFP-LC3タンパク質発現細胞を用いてオートファゴソームの成熟を評価したところ、両濃度の1BnTIQは、オートリソソーム形成後の分解を阻害することが示唆された。さらに、リソソームストレス応答性転写因子TFEBの活性化(分子量低下及び核移行)も認められたことから、1BnTIQはリソソーム機能低下を介してオートファゴソーム分解抑制を引き起こすことが示唆された。リソソームの機能低下は、PD発症の引き金となる可能性が考えられる。
P-055(3)
虚血・低酸素モデルにおけるニューロンの細胞分裂
味岡 逸樹1,2,押川 未央1
1医科歯科大・脳統合機能研究センター,2さきがけ,JST

 ニューロンが細胞分裂しないという事実は、神経研究者であれば誰でも知っている事実だろう。しかしながら、「ニューロンはなぜ分裂しないのか?」を説明できるメカニズムは明らかにされていない。ニューロンは分化開始とほぼ同時に細胞周期から離脱し、G0期へと移行して非分裂細胞になる。G0期のニューロンが細胞周期を進めることは極めて稀だが、近年、神経変性疾患や脳卒中における神経細胞死の一部が、細胞周期を進めた後に起こると報告されてきた。すなわち、ニューロンの細胞分裂抑制機構の解明は、「なぜ分裂しないのか?」という疑問の答えとなるだけでなく、神経疾患の理解や、ニューロンの数を増やして治療へと結びつける脳再生治療の礎となる。そこで本研究では、細胞周期制御の中心的役割を担うRbタンパク質に着目をして、ニューロンの細胞分裂抑制機構の解明に挑んだ。癌抑制遺伝子Rbとそのファミリー遺伝子(p107,p130)は、神経前駆細胞やニューロンの細胞周期制御に必須の遺伝子群である。すべてのRbファミリー遺伝子を欠損した神経前駆細胞は、増殖を停止せずにニューロン分化を開始し、分化と増殖を同時に進める。一方で、分化開始後にRbファミリーを欠損したニューロンは、S期まで細胞周期を進めるが、その直後に細胞死を起こす。したがって、ニューロンは分化開始時に何らかの分裂抑制機構を獲得したと想定される。本ポスター発表では、Rbファミリー欠損後に増殖するニューロンと、S期進行後に細胞死を起こすニューロンの細胞内シグナルの違いに着目し、大脳皮質ニューロンが非分裂細胞となるメカニズム、そしてその性質を維持するメカニズムの一端を明らかにしたので、そのデータを発表し、議論させていただく。また、細胞周期を進めて神経細胞死を起こす虚血・低酸素モデルにおいて、非分裂細胞としての性質を除去することでニューロンが分裂することを見出したので、そのデータも併せて発表し、議論させていただく。
P-056(3)
Rasagiline inhibits mitochondrial membrane permeabilization and suppresses apoptosis induced by PK11195
永井 雅代,丸山 和佳子,直井 信
愛知学院大学心身科学学部健康栄養学科

Rasagiline, an inhibitor of type B monoamine oxidase protects neurons from cell death by suppression of mitochondrial apoptosis, but the detailed mechanism remains elusive signal pathway. In this paper, regulation of opening of mitochondrial permeability transition pore(mPTP)by rasagiline was examined in apoptosis induced by PK11195, a ligand of the outer membrane tanslocator protein(TSPO)in SH-SY5Y cells. The membrane permeabilization was initiated with burst of superoxide(O2.-)production(superoxide flashes), which cyclosporine A(CysA)inhibited, followed by calcium(Ca2+)efflux from mitochondria, which Bcl-2 overexpression inhibited. The effects on Ca2+ efflux of TSPO antagonists(PK11195, FGIN-1-27, protoporphilin IX)was positively correlated with the cytotoxicity, whereas an agonist, 4-chloro-diazepamine did not induce Ca2+ efflux and cell death. Ca2+ efflux by PK11195 was decreased by selective scavenging of Ca2+ in mitochondria by BAPTA-AM treatment, suggesting that increased Ca2+ in the cytoplasm was mainly originated from mitochondrial Ca2+ pool. These results indicate that O2.- flashes might be induced by pore formation at the inner mitochondrial membrane and Ca2+ efflux by formation of the mPTP at the contact site. Rasagiline inhibited O2.- flashes and Ca2+ efflux, release of cytochrome c into the cytoplasm, activation of caspase 3 and apoptosis. Rasagiline prevents this initial pore opening to halt apoptosis signal activation. The quantitative measurement of O2.- flashes and Ca2+ efflux by lumino-fluorescence measurement can be applied to determine anti-apoptotic activity of neuroprotective compounds, including phytochemicals.
P-057(3)
Effect on the COPI vesicle trafficking by arginine methylation of Scyl1
天野 元揮1,松崎 伸亮2,森 泰丈3,高村 明孝1,韓 薩日娜1,鹿田 星1,佐藤 大樹1,伊藤 麻衣1,三好 耕1,片山 泰一1
1大阪大学大学院連合小児発達学研究科分子生物遺伝学,2和歌山県立医科大学薬理学講座,3大阪大学大学院医学系研究科神経機能形態学

Cumulative of reports have shown the importance of ER stress in pathology of neurodegenerative diseases, such as Alzheimer's disease, Parkinson disease, etc. These studies indicate that the cellular events in response to ER stress should relate to the pathology of neurodegenerative diseases. To elucidate the pathogenesis of neurodegenerative diseases from the point of ER stress, we investigated the altered genes in SK-N-SH cells in the condition of tunicamycin-induced ER stress by gene fishing method. As the result, we found that Protein arginine N-methyltransferase 1, PRMT1, is up-regulated in SK-N-SH cells under ER stress. Based on this result, we examined the importance of PRMT1 in the ER stress pathway and cell, PRMT1 permanently knock down cells were constructed and the cells showed the abnormal Golgi formation and increased UPR, unfolded protein response. To elucidate the mechanism of such alterations, we screened the proteins which methylated levels are regulated under ER stress condition by IP-MS. As a result, we found that the methylation level of Scy1-like protein 1, Scyl1, was decreased under ER stress. Recently Scyl1, which is a member of the Scy1-like family of catalytically inactive protein kinases, has been reported to function in retrograde COPI-mediated intracellular transport. We showed the effect of arginine methylation of Scyl1 on the COPI vesicle trafficking.