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一般、大学院生、若手研究者(ポスター)
グリア、ミエリン
P-077(3)
22q11.2欠失統合失調症死後脳におけるmyelin oligodendrocyte glycoprotein(MOG)の免疫組織学的検討
鳥居 洋太1,丸井 友泰2,藤城 弘樹2,新里 和弘3,大島 健一3,眞崎 勝久4,林田 翔太郎4,入谷 修司2,吉良 潤一4,尾崎 紀夫2
1名古屋大学医学部附属病院 卒後臨床研修・キャリア形成支援センター,2名古屋大学大学院医学系研究科 精神医学分野,3東京都立松沢病院 精神科,4九州大学大学院医学研究院 神経内科学

<背景>22q11.2欠失は統合失調症の発症に強く関与する稀な遺伝子変異であると考えられている。この欠失が、統合失調症死後脳組織において、どのような形態学的変化を起こしているか検証することは、病因解明に大きな意義がある。MOGは統合失調症と関連が示唆されるオリゴデンドロサイト/ミエリン関連タンパクの一つであるが、今回、我々は、22q11.2欠失を有する統合失調症症例で、MOGの免疫染色を行い、その形態学的変化について、検討を行った。<方法>症例は32歳で統合失調症を発症した22q11.2欠失を有する死亡時年齢59歳の男性。ホルマリン固定パラフィン切片(海馬-視床下核を通る左側冠状断)を抗MOG抗体で染色し、上側頭回皮質、海馬CA3において、抗MOG抗体陽性構造物の、形態学的な観察を行った。観察において、正常対照(9例:平均年齢56歳)、他の統合失調症(10例:平均年齢59.4歳)との比較を行った。本研究は名古屋大学生命倫理委員会の承認を得ている。<結果>22q11.2欠失をもつ統合失調症患者死後脳では上側頭回皮質の中間層(III層、IV層に相当)、海馬CA3の透明層においてMOG陽性構造物が正常対照脳と比較して減少している傾向が観察された。他の統合失調症でもこの傾向が観察されたが、正常対照脳と比較し、統計学的な有意差は得られなかった。<考察>22q11.2欠失はMOGを含むミエリン形成に関連している可能性が示唆されたが、疾患特異性あるいは遺伝背景要因の有無についてはさらなる検討が必要と考えられた。
P-078(3)
インターフェロンα誘発性カニクイザルうつ病モデルの解析
林 義剛1,福家 聡1,渕上 孝裕1,小山 なつ1,楯林 義孝2,等 誠司1
1滋賀医科大学 統合臓器生理学,2東京都医学総合研究所 うつ病プロジェクト

大うつ病は、精神疾患の一つで、抑うつ症状、興味・喜びの減退などの気分の変調を来し、大きな社会的損失を被ることから、その病態解明や新規治療薬の開発が期待されている。これまで神経細胞を中心とした研究が行われてきており、一定の成果を挙げているものの、その病態解明には至っていない。近年、神経細胞のみならず、グリア細胞の機能異常が、精神疾患の病態に関与する可能性が示唆されてきた。我々は、フローサイトメーターを用いた迅速かつ簡便な細胞数定量法を新規に確立し、特定の脳部位における総細胞、神経細胞、オリゴデンドロサイト系譜細胞の密度を偏りなく大量に解析することを可能とした。この方法を大うつ病の患者死後脳の前頭極と側頭葉の灰白質に応用し、前頭極に特異的に成熟オリゴデンドロサイトおよびオリゴデンドロサイト前駆細胞の減少を認めた(Hayashi et al., Mol Psychiatry, 2011;Hayashi et al., PLoS ONE, 2012)。この成果は、近年の精神疾患死後脳研究で見られてきた報告を支持し、さらにオリゴデンドロサイト前駆細胞の増殖や分化に異常が生じていることを示唆すると考える。
死後脳研究において、細胞レベルでのオリゴデンドロサイトの異常が明らかとなったことから、その異常が生じる原因を探索するため、霊長類成体脳におけるオリゴデンドロサイトの解析を試み、成体カニクイザルにおいてオリゴデンドロサイト前駆細胞の分裂を確認し、さらに脳部位によってその数が異なることを見出した。また、大うつ病で生じているオリゴデンドロサイトで生じている異常とは何か、より脳の発達した霊長類で調査する必要があると考え、ヒトC型肝炎の治療に用いられており、副作用として抑うつ症状を呈することが分かっているインターフェロンαをカニクイザルに慢性投与することで、うつ病モデルの作製を試みた。24時間ビデオ撮影による行動変化や、死後脳オリゴデンドロサイト系譜細胞におけるDNAメチル化の解析を行い見出した変化について報告したい。
P-079(3)
グレリンが自閉症モデルマウスのマイクログリアに与える効果の検討
山下 泰徳,牧之段 学,井川 大輔,山内 崇平,鳥塚 通弘,紀本 創兵,岸本 年史
奈良県立医科大学 精神医学講座

自閉スペクトラム症(ASD)は、社会性の障害、言語的コミュニケーション能力の障害、興味の限局・拘り等を特徴とする疾患である。その病因・病態については遺伝要因と環境要因とが相互作用すると考えられているが未だ解明には至っていない。グレリンは、胃から産生されるペプチドホルモンであり、下垂体に作用し成長ホルモン分泌を促進させる、視床下部に作用し摂食を刺激する他、多様な作用があり、例えば、グレリンには抗炎症作用があり、多発性硬化症マウスモデルや実験的脳炎マウスの症状を軽減させると報告されている。ASD患者の脳内でも、マイクログリアの病的活性化、炎症性サイトカインの増加、髄鞘形成異常等が報告されている。近年、精神疾患における脳腸相関が注目されおり、胃で産生されるグレリンがASD患者脳でどのような作用を及ぼすかを検討することは、その病態メカニズム解明の一助となると考える。【目的】ニューレグリン1(NRG1)は神経発達に関与する神経栄養因子であるが、我々は従来ニューロンやアストロサイトで発現するとされていたNRG1がマイクログリアでも発現していることを確認した。よって、グレリンが自閉症モデルマウスのマイクログリア由来NRG1発現に与える効果を、炎症性サイトカイン発現への影響とともに検討した。【方法】自閉症モデルマウスであるBTBR T+tf/J(BTBR)マウスと対照群としてのC57BL/6J(B6)マウスに、それぞれrat acyl-ghrelin(グレリン)100ug/kgおよびPBSを生後2日~8日まで腹腔内投与した。その後、脳を摘出し磁気細胞分離にてマイクログリアを単離した。これら4群での脳内マイクログリアにおける炎症性サイトカインやニューレグリン1(NRG1)のmRNA発現量の変化をreal-time PCR法を用いて解析した。【結果】BTBR-PBS群はB6-PBS群と比較して、NRG1 typeIIIが有意に上昇していた。また、B6-グレリン群ではB6-PBS群と比較して有意にマイクログリア由来NRG1 typeIIIの上昇を認め、逆にBTBR-グレリン群ではBTBR-PBS群と比べて有意にNRG1 typeIIIが低下した。炎症性サイトカインであるマイクログリア由来IL-1βについては、B6とBTBRともにグレリン投与で有意な上昇を認めた。【考察】これまで成体マウスにおけるグレリンの抗炎症作用が報告されているが、幼若期マウスでは逆に炎症性サイトカインを増加させる結果となった。また、グレリン投与によるマイクログリア由来NRG1の発現は、BTBRとB6で正反対の反応を示した。BTBR-PBS群のマイクログリア由来NRG1 typeIIIの高発現レベルは、グレリン投与によってB6-PBS群と同程度まで減少した。よって、ASD群においてグレリンが治療的に作用する可能性が示唆された。
P-080(3)
Ischemic stimuli induce extracellular accumulation of adenosine in rat spinal astrocytes
江口 遼太,山口 聡一郎,乙黒 兼一
北海道大学大学院獣医学研究科薬理学教室

Extracellular adenosine(ADO)derived from astrocytes plays an important role as a neuromodulator in the CNS. Under hypoxic/ischemic conditions, it has been reported that extracellular ADO increases and mediates neuroprotective effects via ADO receptors. However, the precise mechanisms of ADO increase by ischemic stimuli remain unclear. In this study, we investigated the effects of some ischemic stimuli such as hypoxia, glucose deprivation and Ca2+ reduction on extracellular ADO concentration in cultured rat spinal astrocytes. Cultured astrocytes were exposed to each stimulation for 1 h, then purine(ATP, ADP, AMP and ADO)levels were measured by high-performance liquid chromatography(HPLC)analysis. Hypoxic condition(95% N2/5% CO2)did not increase any extracellular purine levels. On the other hand, glucose deprivation and Ca2+ reduction(0-1.25 mM)increased all purine levels. Hypoxic condition potentiated the increase in purine levels by Ca2+ reduction but not by glucose deprivation. Furthermore, hypoxic condition affected purine degradation, but not ATP release. These results suggest that multiple ischemic stimuli interact with each other to increase extracellular ADO under hypoxic/ischemic conditions.
P-081(3)
白質におけるミクログリア恒常性制御
野津 智美1,橋本 美穂1,Elhanbaly Ruwaida2,石川 達也2,齊藤 泰之3,小谷 武徳3,村田 陽二3,深澤 有吾2,的崎 尚3,大西 浩史1
1群馬大学大学院保健学研究科生体情報検査科学講座,2福井大学医学部医学科脳形態機能学研究室,3神戸大学大学院医学研究科シグナル統合学分野

2つの膜タンパク質CD47とSIRPαは細胞外領域で相互作用し、細胞間接触シグナル伝達系(CD47-SIRPαシグナル)を形成する。脳内では、SIRPαは神経細胞とミクログリアに高発現し、細胞間接触シグナルによりこれらの細胞の機能制御に関わると考えられる。KOマウスを用いてCD47-SIRPαシグナルの欠損がミクログリアに与える影響を検討したところ、SIRPαあるいはCD47をKOしたマウスの脳内では、ミクログリアの活性化マーカーであるCD11c陽性のミクログリアが白質特異的に増加することが明らかとなった。また、KOマウスの白質ではアストロサイトの細胞マーカーであるGFAPの免疫反応性も顕著に増強しており、白質特異的に反応性アストロサイトが増加していると考えられた。さらに、ミクログリア特異的にSIRPαをKOしたマウスの白質でもCD11c陽性ミクログリア、反応性アストロサイトの増加が見られたことから、ミクログリアにおけるSIRPαの欠損がこれらの表現型の原因となることがわかった。白質特異的なミクログリアの変化について検討する目的で、銅キレート剤Cuprizoneの投与による脱髄負荷を加えたところ、野生型マウスの脳でもCD11c陽性ミクログリアが出現する一方、ミクログリア特異的SIRPα KOマウスでは、より顕著にCD11c陽性ミクログリアの出現が認められた。これらの結果から、CD47-SIRPαシグナルの欠損により、ミクログリアのミエリン損傷に対する感受性が増強し、ミクログリアが過剰に活性化する可能性が考えられた。
P-082(3)
Pathogenic role of retinal microglia in excitotoxicity-induced optic neurodegeneration
武田 明子1,篠崎 陽一1,柏木 賢治2,小泉 修一1
1山梨大・院・医・薬理,2山梨大・院・医・眼科

Glaucoma is an optic neuropathy characterized by progressive damages or loss of retinal ganglion cells(RGCs)and, is a principal cause of blindness in Japan. Although one of the highest risk factor is elevated pressure in the eyes, recent accumulating evidence have shown the importance of other factors such as excess excitatory amino acid or inflammation for the pathogenesis of glaucoma. Here, we report that activation of microglia is a primary cause of RGCs damages evoked by N-methyl-D-aspartate(NMDA). Intravitreal NMDA injection caused time-dependent reduction in the number of Brn3a+ RGCs. Significant reduction was observed from 3 day post injury(dpi). NMDA also activated microglia, but their activation preceded the loss of RGCs. Microglia already showed an increase in their cell number and morphological changes including process retraction and hypertrophy of cell body at 1 dpi. We then asked whether these activated microglia causes loss of RGCs. Topical application of inhibitors for microglial activation showed significant protective effect against NMDA-induced RGCs damages. Next, we examined the detailed mechanism that activated microglia caused RGCs damages. As a result, several inflammatory cytokines mRNA level in retina was increased at 1 dpi. The NMDA-evoked increase in Thfα mRNA was clearly attenuated by minocycline, indicating microglial role in TNFα production. As TNFα is well-known to induce RGCs death, microglia-derived TNFα might be a major cause of NMDA-evoked RGCs damages. Taken together, our data show that activation of retinal microglia has essential role in the NMDA-evoked degeneration of RGCs.