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一般、大学院生、若手研究者(ポスター)
神経免疫、神経内分泌、栄養因子、サイトカイン、神経系の代謝
P-096(2)
Establishment of two distinct BDNF isoform specific knockdown mouse lines
泉関 芙美也,三村 將,田中 謙二
慶應大院・医・精神神経科

Brain-derived neurotrophic factor(BDNF)is involved in the differentiation and plasticity of neurons of the central nervous system. BDNF gene has nine exons consisting of eight 5'non-coding exons(exon I-VIII)and 3'coding exon(exon IX). Each exon contains the transcription initiation site and combines with a common coding exon, yielding nine different mRNA isoforms. To investigate an isoform specific role of BDNF transcription, we generated two distinct BDNF gene knockdown mice. One is BDNF(IV)STOP/STOP knockin, in which isoforms I-IV are technically targeted. The other is Actin-tTS::BDNF(IV)tetO/tetO knockin, in which isoforms IV-VII are targeted. To confirm if these systems work, we quantified isoform specific BDNF transcription levels by using qPCR. In BDNF(IV)STOP/STOP, the levels of isoform I and II markedly reduced(4.5%, 2.8%, respectively), whereas, that of isoform IV was spared(73%). Total level of BDNF transcription was 56%. In Actin-tTS::BDNF(IV)tetO/tetO, the transcriptions from exons IV to VII were specifically blocked(isoform IV, 2.8%;VI, 4.9%, respectively)and total BDNF transcription level declined 61%. Taken Together, we generated both isoforms I-III and IV-VII targeting BDNF knockdown mice.
P-097(2)
EGF刺激による大脳皮質神経細胞でのコンドロイチン硫酸プロテオグリカン産生・集積の変化
小林 雄太朗,岩倉 百合子,那波 宏之
新潟大学脳研究所分子神経生物学分野

上皮細胞成長因子(EGF)は、中枢神経系においてもその受容体とともに広く発現し、神経細胞やグリア細胞の形態的・機能的発達に影響を与える。ペリニューロナルネット(PNNs)は、神経細胞体や神経突起を取り囲む細胞外マトリクスのメッシュ状の構造であり、中枢神経に広く形成が認められる。大脳皮質や海馬では、PNNsはパルブアルブミン陽性GABA作動性神経細胞周辺に顕著に形成され、抑制性神経回路の発達や、臨界期の形成等にも重要な役割を果たすと考えられている。我々はこれまでEGFのGABA作動性神経細胞の機能的・形態的発達に対する抑制作用を報告している。今回新たに、ラット大脳皮質初代培養細胞では、レクチン(WFA)を用いて検出されるPNNs様構造がEGF刺激により減少することを認めた。PNNsの主要な構成要素の一つはコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)である。CSPGの産生は神経細胞だけでなく、アストロサイトを始めとするグリア細胞からも行われる。そこで、EGFがCSPGの産生・放出調節を行うことで、神経細胞におけるPNNsの形成調節に関与する可能性を検討した。ラット大脳皮質初代培養グリア細胞にEGFを添加し、CSPG量の変動をウェスタンブロッティングで検出した。その結果、培養上清中と粗膜画分の両者において、コンドロイチン-4-硫酸(C4S)及びコンドロイチン-6-硫酸(C6S)ともに検出量の増加がみられた。一方、初代培養神経細胞へのEGF刺激では粗膜画分のC4S量及びC6S量ともに減少していた。上記の結果から、EGFはグリア細胞に対してCSPGの産生・放出促進作用を持つが、神経細胞に対しては逆に産生・放出抑制効果を持つ可能性が示唆される。現在、グリア細胞あるいは神経細胞において、EGFによるCSPG産生・集積調節メカニズムを明らかにするべく、詳細な解析を行っている。
P-098(2)
Down-regulation of activated MAP kinase levels in injured adult rat facial nucleus成熟ラットの傷害顔面神経核における活性化MAPキナーゼの低下
越本 茉亜紗1,濱の上 誠2,高坂 新一3,中嶋 一行1
1創価大院・工・生命情報,2東邦大・医・細胞生理,3国立精神・神経医療研究センター神経研究所

Transection of adult rat facial nerve led to the decrease of m2 muscarinic acetylcholine receptor(m2MAchR)and gamma-amino butyric acid receptor(GABAAR)levels at 5-14 days post-insult in the ipsilateral facial nucleus. Dual fluorescent staining method revealed that these receptor proteins were expressed in motoneurons. These results suggested that the motoneurons changed their properties through a specific regulatory system after injury. To obtain information related to the down-regulation of the receptor levels, we explored signaling molecules changing at early time after injury in the ipsilateral facial nucleus. Among the molecules tested, mitogen-activated protein kinases(MAP kinases)were found to be inactivated in the ipsilateral nucleus. Phosphorylated levels of extracellular signal-regulated kinase(ERK)in the injured nucleus were suppressed at 12-48 h post-injury. Total amounts of ERK were not changed between transected and control nuclei. Phosphorylated ERK levels in injured nucleus deceased to approximately 20% of those in the control nucleus. Phosphorylation of p38 in the ipsilateral nucleus was also reduced at 12-48 h post-insult. The levels decreased to 20% of those of the control side. On the other hand, phosphorylated levels of c-Jun N-terminal kinase(JNK)in the ipsilateral nucleus were not significantly decreased at any time points. These results suggested that ERK and p38 in motoneurons were inactivated by injury-stimulus. The decreased levels of ERK and p38 are suggested to be associated with the depression of m2MAchR and GABAAR in the injured motoneurons.
P-099(2)
ALS病態における末梢免疫の役割
大沼 周平,小峯 起,山中 宏二
名古屋大学環境医学研究所病態神経科学分野

近年、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含む神経変性疾患において、末梢免疫組織における免疫学的変化が観察されることや中枢神経へ浸潤した免疫細胞がグリア細胞を介して病態に関与することが次々と報告されており、中枢神経内における炎症反応と末梢免疫反応との連関が示唆されている。しかしながら、末梢免疫環境の変化が中枢神経内における病態に与える影響を検証した報告はほとんどない。そこで、本研究は、末梢の免疫学的背景の異なるSOD1変異を発現するALSモデルマウスを作成し、神経病態形成と末梢免疫反応との連関を明らかにすることを目的とする。まず、末梢免疫環境の変化がALS病態に与える影響を明らかにするため、末梢免疫背景の異なる細胞性免疫(Th1)優位なC57BL/6系統、液性免疫(Th2)優位なBalb/c系統の2種類のALSモデル(以下G93A(B6)、G93A(Balb))マウスを作成し、生存解析を行った。その結果、G93A(Balb)マウスは、G93A(B6)マウスに対し生存期間が短縮することが判明した。次に、病態への関与が予想される遺伝子発現について比較したところ、免疫細胞の遊走に関与するケモカインや神経栄養因子の発現が、G93A(B6)マウスに対し、G93A(Balb)マウスにおいて低いことが明らかとなった。また、脊髄内浸潤免疫細胞や脾臓及び末梢血内の免疫細胞、脊髄内グリア細胞について解析したところ、G93A(Balb)マウスにおいて、脊髄内浸潤免疫細胞がほとんど見られないこと、脾臓及び末梢血の免疫細胞の細胞種にG93A(B6)マウスと差が見られること、活性化ミクログリアの細胞数増加が見られないことが分かった。そこで、ミクログリアにおける変化に着目し、ミクログリアの増殖や生存に関わる分子の遺伝子発現について解析したところ、M-CSFの発現量が、G93A(Balb)マウスにおいて低いことが判明した。M-CSFの発現に関わる免疫細胞や分子機序を明らかにするため、M-CSF発現細胞や病態進行期におけるミクログリアの動態の経時的変化について、現在解析中である。
P-100(2)
13C-トリプトファン呼気検査による、うつ病のキヌレニン仮説についての検討
寺石 俊也1,堀 弘明1,篠山 大明1,松尾 淳子1,小川 眞太朗1,太田 深秀1,服部 功太郎1,梶原 正宏1,2,功刀 浩1
1国立精神神経医療研究センター 疾病研究第三部,2横浜薬科大学

(緒言)統合失調症や気分障害の病態として、炎症と免疫が関与していることが明らかになってきており、特に、トリプトファン代謝酵素であるIndoleamine 2,3-dioxygenaseは、炎症性サイトカインにより活性化されると、代謝産物であるセロトニンや向神経活性をもつキノリン酸及びキヌレン酸の産生が変化するため、注目されている(慢性炎症仮説、セロトニン-キヌレニン仮説)。今回、安定同位体である13Cにより標識されたトリプトファン(13C-tryptophan)を用いてキヌレニン経路の代謝活性を推定し、大うつ病性障害の診断指標/バイオマーカーとしての有用性について検討した。また、キヌレニン経路の活性状態に伴い変動するとされる血中トリプトファン値と呼気検査、またうつ病の臨床的重症度と呼気検査の関連についても検討した。
(方法)DSM-IVにより診断された大うつ病性障害の患者18名と、性、年齢をマッチさせた健常者24名を対象とした。被験者が13C-tryptophan(150mg)を経口で内服した後、その呼気中のΔ13CO2(13CO2/12CO2の増加率)を赤外分光分析装置により180分間モニタリングした。呼気検査の直前に、血漿の採血を行った。13C累積蓄積率(CRR)、曲線下面積(AUC)、Δ13CO2最大値(Cmax)を算出して、13C-トリプトファン呼気検査の指標とした。この研究は本センターの倫理委員会によって承認され、全ての被験者に書面で説明し、文書で同意を得た。
(結果)CRR、AUC、Cmax、すべての指標が、健常群と比較してうつ病群で有意に上昇していた(それぞれp=0.004、p=0.008、p=0.002)。血漿トリプトファン濃度は、うつ病群、健常群ともに、Cmaxと負の相関を示した(それぞれp=0.020、p=0.034)。ハミルトンうつ病評価尺度と呼気検査の相関は認められなかった。
(考察)今回の結果は、うつ病においてキヌレニン経路が活性化しその代謝産物が増加し、それにより血中トリプトファン濃度が低下してセロトニン合成経路にも影響を及ぼすという仮説を支持するものである。また13C-トリプトファン呼気検査が、うつ病を生物学的な亜群に分別するバイオマーカーになる可能性をも示唆するものである。
13C-トリプトファン呼気検査の精神疾患への応用はこれまで報告がなく、独創的な試みと思われる。活性が亢進している代謝経路を調べるには、従来から血液サンプル中の代謝産物濃度を測定する研究が行われていたが、血液濃度は必ずしも代謝回転の速度を反映しない。一方、トレーサー実験による解析は、標識された前駆物質の生体内の代謝動態をリアルタイムに反映する利点がある。さらに安定同位体を用いた呼気ガス検査は、非侵襲的かつ簡便であるという特徴を持ち、今後精神科分野でも広く研究される必要がある。
P-101(2)
ALSモデルマウスにおけるRNA代謝解析
長谷川 実奈美1,原(宮内) 央子1,崎村 建司2,岡野 栄之3,岡野 ジェイムス洋尚1
1東京慈恵会医科大学再生医学研究部,2新潟大学脳研究所細胞神経生物学分野,3慶應義塾大学医学部生理学教室

TARDNA binding protein 43kDa(TDP-43)は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因遺伝子の一つと考えられているが、TDP-43の突然変異を持たない孤発性ALS患者の運動ニューロンにおいても同様の病理所見が認められる。このことからALS患者では、病因は違えどある段階で共通してTDP-43の機能的な変化が起こっていることが強く示唆される。近年、RNAスプライシングや翻訳調節不全などのRNA代謝異常が神経変性と深く関わっていることが疑われている。TDP-43はRNA結合タンパク質として自己を含む標的のRNA代謝を調節し、神経細胞の恒常性を保つことが知られている。我々が作製した変異型TDP-43ノックインマウスは、生後7ヶ月齢頃から遅発性に体重増加不良と運動障害を発症する。これまでの研究において、変異型TDP-43ノックインマウスの白血球中ではNaipやSmnなどのニューロンの生存に関わる因子のmRNA量がTDP-43と相関して変化していることを報告した(Hasegawa et al. 2015)。このことから、変異型TDP-43ノックインマウスでは白血球からTDP-43の機能的な変化を検出できることが示唆された。このマウスの大脳皮質において、Pdp1などこれまでに報告されているTDP-43標的RNAのスプライシング解析を行ったところ、スプライスバリアントの比率が明らかに変化していることがわかった。さらに、マウスの白血球においても運動障害発症前から同様の異常を検出できることがわかった。このことから、症状の発症前に白血球からRNA代謝異常を検出できることが示唆された。本研究では、変異型TDP-43により標的RNAのスプライシング異常が起こるメカニズムの解明を目指すとともに、白血球からのRNA代謝異常の検出がALS診断のバイオマーカーとなるか検証を行った。