TOP一般、大学院生、若手研究者(ポスター)
 
一般、大学院生、若手研究者(ポスター)
神経ネットワーク、認知機能・行動
P-122(2)
DRD4 VNTR多型とリスク行動の関連
竹村 有由1,村山 美穂2,山岸 俊男3,村井 俊哉1,高橋 英彦1
1京都大学大学院医学研究科脳病態生理学講座(精神医学),2京都大学 野生動物研究センター,3一橋大学大学院国際企業戦略研究科

DRD4 VNTR多型において、7回リピート(7R)アレル保有者は非保有者と比較してNovelty Seekingスコアが高いと報告されている。また、同多型は物質依存やギャンブル障害との関連や、金銭的リスクを好む傾向も指摘されている。これらは7Rアレル保有者の割合が比較的多い欧米の報告が主で、日本を含むアジアでは7Rアレル保有者が非常に少ないことが知られている。そのため、7Rアレルの保有率が低い集団において、7Rアレルと進化的および分子生物学的に類似する2Rアレル保有者を7Rアレル保有者と同グループに含める手法が提唱されている。しかし、2Rおよび7Rアレル保有とリスク行動との関連を調べた研究は非常に少ない。今回の研究では、20歳代から50歳代までの健常者411人に対し、DRD4 VNTR多型解析、および心理検査としてNEO-FFI、行動課題としてRisk-taking experiment(Holt and Laury., 2002)を施行した。DRD4 VNTRの2R/7Rアレル保有者と非保有者の2群に対し、年齢、性別を共変量に設定し、心理尺度・行動課題の差をANCOVAを用いて検定した。NEOの得点について両群間に有意な差はなかったが、Risk-taking experimentにおいて、2R/7Rアレル保有者は非保有者と比較してリスク志向行動の有意な増加を認めた。今回の研究では、7Rが少ない集団において2R/7Rアレル保有とリスク行動との関連が示された。
P-123(2)
Blonanserin reversed phencyclidine-induced cognitive deficit through dopamine D3 receptor antagonism
宮内 政徳1,2,松浦 敦1,Huang Mei2,Kwon Sunoh2,Rajagopal Lakshmi2,Neugebauer Nichole2,Meltzer Herbert Y2
1大日本住友製薬,2ノースウエスタン大学ファインバーグ医学校

Objective:Blonanserin(Blon)is an atypical antipsychotic drug(AAPD)with comparable affinity to dopamine(DA)D2 and D3 receptors. The purpose of this study was to determine the ability of Blon to enhance cortical neurotransmitters efflux, determine the role of D3 antagonism in that process, and determine the role of D3 receptor blockade to improve the deficit in novel object recognition(NOR)and operant reversal learning(ORL)in sub-chronic phencyclidine(PCP)-treated rodents, a model of schizophrenia. Methods:C57BL/6J mice and Long-Evans rats received vehicle or PCP(10 mg/kg, 2 mg/kg, respectively)for 7 days, followed by a 7-day washout for the NOR and ORL study. The D3 receptor antagonist, NGB2904(NGB)or Blon was administered to mice or rats 30 min prior to a test sessions or acquisition. Another group of rats received a combination of sub-effective doses(SED)of NGB and Blon 30 min prior to acquisition. Guide cannulas with dummy probes were placed to the medial prefrontal cortex(mPFC)and dorsal striatum(dSTR)for microdialysis in normal mice. Results:NGB and Blon improved the scPCP-induced ORL deficit in mice. NGB and Blon improved the scPCP-induced NOR deficit in mice and rats. The combination of SED NGB and SED Blon improved the NOR deficit. In microdialysis study, Blon increased DA, norepinephrine(NE)and acetylcholine(ACh)efflux in mPFC and dSTR. NGB increased DA and ACh, but not NE efflux, in mPFC and DA efflux in dSTR. Conclusions:D3 receptor blockade may contribute to the ability of Blon to increase cortical ACh and DA efflux, as well as to restore NOR and ORL in scPCP deficit. D3 receptor blockade may be an important component of the efficacy of Blon to enhance neurotransmitter efflux and improve cognitive function.
P-124(2)
ショウジョウバエを用いた精神疾患モデル開発とその応用
森本 高子,松本 悠太郎,鈴木 未来,清水 彰,宮川 博義
東薬大、生命

統合失調症や自閉症といった精神疾患は、近年患者数も増加し、社会的にもその原因解明と治療法開発は重要な課題である。これらの疾患については、原因遺伝子、症状、神経回路のそれぞれが結びついた解明が不可欠である。なぜなら、個体レベルの症状は非常に多様であり、同じような症状を示したとしても、同じ遺伝子が原因とは限らず、更に、行動レベルの症状を引き起こす神経回路の機能異常を解明しなくては、治療標的を絞ることも困難である。近年マウス遺伝子のノックアウト解析とヒト脳の画像解析等が進んできてはいるが、治療や投薬については症状に対応する事が主になり遺伝子、症状、神経回路を結びつけた総合的理解にはまだ至っていない。我々は、これらを結びつける階層横断的研究が可能なモデル動物ショウジョウバエを用いて、精神疾患原因解明と創薬への応用を目指して研究を行っている。今回は、統合失調症の診断にも用いられているプレパルスインヒビション(PPI)現象を、ショウジョウバエ幼虫を用いた実験系で確立し、精神遅滞モデルハエと野生型との比較により、実験系の検証を行った。ショウジョウバエ幼虫は天敵の羽音を聞くと、動きを止める、頭部を縮める、頭部を回転させ忌避行動を取る、等の特徴的な驚愕行動を示す。我々は、この現象を用い、驚愕行動をほぼ100%引き起こすパルス音の前に、単独では驚愕行動を引き起こさない弱いパルス音を先行させる事により、PPIが起こるかどうか調べた。その結果、プレパルスの存在により、驚愕行動が約30%減弱し、PPIがショウジョウバエ幼虫で起こる事が示された。更に、自閉症様症状を示す疾患、脆弱X染色体症候群(Fragile X Mental Retardation)の原因遺伝子fmrが変異したショウジョウバエにおいてPPIが見られるかどうか検討した。すると、病態モデルハエではPPIが認められなかった。以上の結果は、確立した実験系が、各種精神疾患モデルバエの開発における表現型を検出する系として、使用できる可能性を示している。
P-125(2)
末梢性κ受容体作動薬TAN-1815、3003の創出
辻 理一郎,河合 孝治,稲田 英朗,菅原 雄二,金子 ちひろ,下薗 利恵子,八木 麻衣,渡邊 綾乃,深澤 富長,阪上 英樹
東レ株式会社医薬研究所基礎研究センター

 オピオイドκ受容体は、脳内、脊髄内、一次感覚求心路の中枢及び末梢、並びに、免疫細胞上など、全身に分布している。中枢に分布するオピオイドκ受容体を活性化する薬剤は、鎮痛作用や止痒作用など有用な薬理作用を示すものの、鎮静や不快感などの副作用を示すことも知られている。一方、末梢に分布するオピオイドκ受容体の機能については、いまだ十分に明らかにされていないが、その活性化によっても鎮痛作用を始めとする様々な薬理作用が期待できること、また、中枢作用に由来する鎮静や不快感などの副作用との分離が可能であることが報告されている。そのため、中枢移行性を制御した末梢選択的κ作動薬が、中枢性副作用懸念の少ない医薬として期待され、世界中で勢力的な研究がなされている。なかでも末梢性κ作動薬として見いだされたペプチド性κ受容体作動薬CR-845、低分子κ受容体作動薬アシマドリンの各種臨床試験が進行中である。我々は中枢に分布するκ受容体を主な作用点とするκ受容体作動薬、ナルフラフィン塩酸塩(レミッチ:掻痒治療薬)の開発に成功している。今回我々は、ナルフラフィンの構造をもとに中枢移行性を抑え、かつ高選択的κ作動性を有する誘導体2種(TAN-1815、TAN-3003)の取得に成功した。本発表では、TAN-1815、TAN-3003のin vitroおよびin vivo薬理試験データ、薬物動態データについて紹介する。
P-126(2)
経口投与により抗うつ薬様作用を示す大豆由来ペプチドは迷走神経依存的に脳神経活動を変化させる
小田桐 紗織1,森 薫葉2,山本 あかね2,山田 大輔1,和田 圭司1,大日向 耕作2,関口 正幸1
1国立精神・神経医療研究セ神経研疾病4部,2京大院農食品生物

大豆種子タンパクであるβ-コングリシニンのサーモリシン消化物に含まれる10残基ペプチドLeu-Ser-Ser-Thr-Gln-Ala-Gln-Gln-Ser-Tyr(LSSTQAQQSY)はマウスへの経口投与により抗うつ薬様作用を示す。このペプチドは腹腔内投与では当該作用を示さないことから、消化管-迷走神経を介した上行性シグナルにより中枢に作用している可能性が考えられる。本研究では、この可能性についてArc(activity-regulated cytoskeleton-associated protein)-dVenusマウス(神経細胞の活動依存的に発現する最初期遺伝子Arcのプロモーター制御下で蛍光蛋白Venusを発現するトランスジェニックマウス)を用いて検討した。具体的には、LSSTQAQQSY(3 mg/kg)経口投与群および生理的食塩水経口投与群(コントロール)でVenus発現細胞数を比較、また同一マウスからの脳スライスに対して免疫組織化学的手法を適用することにより、他の神経細胞活動マーカーc-Fos陽性細胞数も計数した。その結果、求心性迷走神経の投射先である延髄孤束核において、LSSTQAQQSY経口投与群でコントロール群よりc-Fos陽性細胞数が有意に増加していた。また大脳皮質においては、求心性迷走神経を介した内臓感覚の投射先である島皮質後部において、ArcプロモーターによりドライブされたVenus発現数が有意に減少していた。島皮質は情動にも関与する領域であり、脳における情動中枢である扁桃体の活動を強めることにより不安などの負情動を強めることが知られている。LSSTQAQQSY経口投与による孤束核および島皮質における上記の神経活動依存性神経細胞活動マーカーの発現変化は、横隔膜下迷走神経除去によって完全に認められなくなった。以上の結果より、大豆由来ペプチドLSSTQAQQSYは経口投与により、迷走神経依存的に脳神経活動を変化させることが示唆された。
P-127(2)
Pentylenetetrazol-induced kindling altered epileptic behavior and c-Fos expression in BRINP1-KO mice
小林 三和子1,河野 泰宏1,山埼 翔太1,武智 研志2,3,田中 亮裕2,荒木 博陽2,松岡 一郎1
1松山大・薬・生理化学,2愛媛大学医学部附属病院 薬剤部,3徳島大学病院 臨床試験管理センター 臨床研究推進部門

BRINP(BMP/RA-inducible Neural Specific Protein)-1, 2, 3 are family genes that are specifically expressed in the nervous system. Among the three family members, BRINP1 is expressed abundantly in various brain regions, and its expression is further up-regulated in dentate gyrus(DG)by administration of kainic acid or pilocarpine. Furthermore, disruption of BRINP1 gene revealed that abnormal behaviors such as hyperactivity, reduced anxiety-like behavior, poor social interaction and slight impairment of working memory, which are relevant to symptoms of human psychiatric disorders like schizophrenia and ADHD. In this study, to clarify the physiological role of BRINP1 in epileptic conditions, we performed behavioral experiments and c-Fos immunohistochemistry on kindled BRINP1-KO mice induced by repeated administration of pentylenetetrazol(PTZ). Although PTZ-kindling exhibited a tendency to decline anxiety in both wild-type and BRINP1-KO mice in elevated plus maze, difference between genotypes was more apparent than epileptic conditions. C-Fos expression in hippocampus was increased in dentate gyrus three hours after PTZ administration and the number of c-Fos expressing granular cells depend on the seizure levels. As regards c-Fos expression in dentate granule cells at steady state, BRINP1-KO mice had 25% smaller number of c-Fos expressing cells than that of wild-type mice in non-kindling conditions. On the other hand, 2.5-fold higher number of c-Fos expressing cells existed in BRINP1-KO mice compared to wild-type mice in kindled-condition. These results suggest that BRINP1 does not directly affect the development of epileptic behavior, rather affect the neuronal activity level of dentate granule neurons. Considering activity-dependent BRINP1 expression in dentate gyrus, BRINP1 may involve in deactivation process of excited neurons by PTZ.