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一般、大学院生、若手研究者(ポスター)
神経画像
P-148(3)
健常人における情動文課題中の近赤外線スペクトロスコピィーを用いたニューロフィードバック
松原 敏郎1,2,松尾 幸治1,平田 圭子1,原田 健一郎1,綿貫 俊夫1,渡邉 義文1
1山口大学大学院医学系研究科高次脳機能病態学分野,2山口大学大学教育機構保健管理センター

【はじめに】ニューロフィードバックとは,対象者が脳機能検査中に自分の脳活動をモニターでリアルタイムに見ながら自らの脳活動コントロールを学ぶことである。情動刺激に対する情動調整障害は,うつ病の病態の1つであり,うつ病患者において,情動刺激に対する前頭葉の機能異常が報告されている。情動刺激に対する前頭葉の機能障害をニューロフィードバックを用いて改善できれば,うつ病治療に有用な可能性がある。今回われわれはその前段階として,健常者において,近赤外線スペクトロスコピィ(near-infrared spectroscopy:NIRS)を用いた前頭部のニューロフィードバックの予備的検討を行った。【対象と方法】健常者3名(男性1名,女性2名,年齢29.3±1.5歳)を対象とした。本研究は山口大学医学部附属病院Institutional Review Boardの承認を得ており,対象者全員に対し文書,口頭にて説明し,文書により研究参加の同意を得たのち,精神医学的スクリーニング面接を行った。NIRSはETG-4000を用いた。情動刺激課題として,われわれが以前作成した陰性情動語(脅威,悲しみ)課題を応用して情動文を作成し,音声教示した。情動調整に関係する中前頭部,下前頭部,内側前頭部,眼窩前頭部の4領域を関心領域としてOxy-Hb平均変化量([oxy-Hb])を測定するとともに,ニューロフィードバック中のみ,対象者に自身の脳血流測定画面を表示した。マインドフルネスで行われる呼吸法を,脳血流をコントロールする手法として用いた。課題は,情動文刺激のみ,情動文刺激+呼吸法,情動文刺激のみ,情動文刺激+呼吸法+ニューロフィードバック,の順に行った。気分の評価には日本語版Positive and Negative Affect Schedule(PANAS)を用いた。【結果】前頭部[oxy-Hb]は関心4領域において,先行する情動文刺激課題中の[oxy-Hb]に比し,情動文刺激+呼吸法課題中では,概ね低下,情動文刺激+呼吸法+ニューロフィードバック課題中では概ね上昇していた。情動調整に関わる前頭部領域において,ニューロフィードバックが脳機能の変化をもたらす可能性が示唆された。またPANASでは,NIRS計測前後で陽性感情が減少し,陰性感情が増加しており,情動刺激課題が対象者の気分に影響していることが推測された。今後さらに対象者を増やし,課題の妥当性について検討を加えていく。
P-149(3)
PTSDモデルストレス負荷後の脳の萎縮とミクログリア活性化の解析
吉井 崇喜1,2,大石 直也3,酒井 雄希1,6,西村 伊三男1,7,生駒 和也4,山田 俊児5,松田 賢一5,河田 光博5,福居 顯二8,成本 迅9
1京都府立医大院・医・精神,2京都府立心身障害者福祉センター附属リハビリテーション病院,3京都大・院・脳機能センター,4京都府立医大・院・整形,5京都府立医大・院・解剖,6国際電気通信基礎技術研究所 数理知能研究室,7川越病院,8京都府立医科大・保健管理センター,9京都府立医科大学・院・精神機能病態学

背景:PTSDは重度のストレス暴露後に起こる精神疾患であり、患者脳の萎縮が報告されている。一方、脳内のミクログリアはストレスにより活性化することが知られている。そこで我々は、ラットにPTSDモデルストレスを負荷することで脳萎縮が起こり、萎縮部位でミクログリアが活性化しているか検討した。方法:PTSDモデルストレスとしてsingle-prolonged stress(SPS;2時間拘束・20分強制水泳・エーテル負荷)を用い、7週令のラットに同ストレス、もしくはsham-stress(エーテル負荷)を負荷して1週間後に灌流固定し、固定後に頭蓋骨ごと脳を摘出しMRI撮影を行った。加えてStatistical parameter mapping(SPM)8を用いたvoxel based morphometryにより萎縮がみられた脳領域について、活性化ミクログリアのマーカーであるionized calcium-binding adaptor molecule 1(Iba-1)を標的とした蛍光免疫組織化学を行った。結果:VBM解析においては視床および感覚野(体性感覚~視覚野)の3つのクラスターにおいて有意な萎縮を認めた(P<0.05,corrected for multiple comparison)。また、感覚野・視床の双方でIba-1陽性細胞が有意に肥大しており、ミクログリアが活性化していることが示唆された。結論:VBM解析によりPTSDモデルストレス負荷の影響による脳萎縮が判明し、同部位においてミクログリアの活性化が観察された。本研究より、ストレスによる特定の脳領域での炎症反応が脳の萎縮に関与していることが推定される。
P-150(3)
認知機能正常な健常老齢者における脳内アミロイドβ集積と、末梢血リンパ球の相互の影響
安野 史彦1,数井 裕光2,森田 奈緒美3,松岡 究1,高橋 誠人1,長束 一行4,岸本 年史1
1奈良県立医科大学精神医学講座,2大阪大学医学部精神医学講座,3国立循環器病研究センター放射線医学部門,4国立循環器病研究センター脳神経内科部門

目的:前臨床期アルツハイマー型認知症(AD)患者の脳内アミロイドβ(Aβ)集積が末梢血中の免疫炎症反応に反映されることを仮定し、末梢血リンパ球動態をフローサイトメトリーにより測定した。認知機能の健常な被験者で、脳内Aβ集積と末梢血中リンパ球動態の相互の関係について検討した。方法:36人の認知機能正常被験者に対し、11C-PiB-PETを施行し、皮質領域におけるAβ集積の定量(PiB-BPND)を行った。同時に血液サンプルより各種リンパ球動態を計測した。低Aβ群(PiB-BPND 0.2未満)と高Aβ群(PiB-BPND0.2以上)の間で、B-cells、T-cells、helper T-cells、cytotoxic T-cells、regulatory T-cellsおよびNK-cellsのリンパ球中の比率の差異を検討した。リンパ球動態とPiB-BPNDの相互関係について、回帰分析で検討した。結果:高Aβ群でcytotoxic T-cellsの比率(%CD3+)が有意に高かった。cytotoxic T-cellsの比率と皮質PiB-BPNDの間で有意な相関を認め、さらに回帰分析でそれらの間で相互に有意な影響を認めた。考察:末梢血中のcytotoxic T-cellsの比率に反映される免疫炎症反応が、ADの全臨床期の兆候であり、Aβによる神経病理機構に関与することを示された。末梢血中のcytotoxic T-cellsがAD早期診断のバイオマーカーとして有用である可能性と、新たな治療戦略の手掛かりになることが示された。
P-151(3)
病的賭博における強化学習の神経基盤
村尾 託朗,鶴身 孝介,竹内 秀暁,川田 良作,竹村 有由,村井 俊哉,高橋 英彦
京都大院・医・脳病態生理学講座精神医学

病的賭博患者において、さまざまな認知の特徴が指摘されている。中でも、反転学習の成績が低下することが報告されているが、その神経基盤については十分に調べられていない。本研究では、病的賭博患者群と健常対照群に対して、MRI撮像中に反転学習課題を行い、更にMRI装置外でも各種心理検査を行った。強化学習の計算論モデルを用いて、報酬からの学習率αp、損失からの学習率αn、行動の探索度を反映するβといった学習パラメータを推定し、課題中の脳活動や各種心理検査との関連を検討し、病的賭博患者群と健常対照群で脳活動の比較を行った。病的賭博患者は健常対照群と比較して、強化学習の成立傾向及びそれに伴う脳活動が特徴的なパターンを示した。これらの傾向が賭博を継続させる要因の一つになっていることが示唆された。
P-152(3)
非定型抗精神病薬単剤治療中の統合失調症患者における報酬予測課題遂行時の腹側線条体および関連部位の活動の検討―アリピプラゾール、オランザピン、ブロナンセリンの比較
橋本 直樹,豊巻 篤人,宮本 環,久住 一郎
北海道大学大学院・医・精神医学

背景 未服薬および定型抗精神病薬を服用中の統合失調症患者において、報酬予測課題遂行中の腹側線条体の活動が、健常者と比較して低下していることが報告されている。一方で非定型抗精神病薬を服用中の統合失調症患者ではこのような低下が見られないことも報告されているが、個々の非定型抗精神病薬間での差異を検討した報告はまだない。目的 報酬予測課題遂行中の腹側線条体および関連領域の活動が、非定型抗精神病薬(アリピプラゾール(ARP)、オランザピン(OLZ)、ブロナンセリン(BLN))単剤で加療中の統合失調症患者間で異なるかを検討する。方法 本研究は北海道大学病院自主臨床研究委員会の審査を受け、被験者からは文書による同意を得て行われた。29名の統合失調症患者(SZ群29名:OLZ群9名、BLN群10名、ARP群10名)と13名の健常者(NC群)を対象とし、報酬予測課題遂行中の脳活動をfMRIで評価した。課題では、報酬の予告(0、50、200)に引き続き、数百ミリ秒間標的刺激が提示される。被験者は標的刺激提示中にボタン押しをするよう指示され、その結果がフィードバックされる。先行するメタ解析の結果から得られた左右腹側線条体の座標を中心に半径5mmのROIを設定し、報酬予告時の腹側線条体の活動を得た。200条件から0条件を差分した腹側線条体の活動をSZ群とNC群、また主剤が異なる3群(OLZ群、BLN群、ARP群)の間で比較した。また200条件と0条件の間での腹側線条体と脳内の他の部位の結合の変化が、OLZ群、BLN群、ARP群の間で異なるかをPPI解析を用いて検討した。結果 左右の腹側線条体の200条件と0条件での活動について、NC群とSZ群の比較および、OLZ群、BLN群、ARP群の比較において、条件と群の交互作用を認めなかった。PPI解析では、ARP群とOLZ群において、BLN群と比較して、200条件と0条件の間で右腹側線条体と左中心後回との結合がより強まる傾向を認めた。