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一般、大学院生、若手研究者(ポスター)
神経画像
P-153(3)
中脳辺縁系・中脳皮質系に着目したマルチモダリティ脳画像解析と疾患特異性
小池 進介1,2,森田 健太郎2,榊原 英輔2,岡田 直大2,笠井 清登2
1東京大学こころの多様性と適応の統合的研究,2東京大学大学院医学系研究科精神医学分野

【背景】
 中脳辺縁系・中脳皮質系は、統合失調症の陽性症状、陰性症状や、うつ症状の原因の一つと考えられている。しかし、この仮説は抗精神病薬作用に基づいて行われた基礎研究の結果が主であり、ヒトで明らかにされてこなかった。その一方でこれらの系は、報酬・罰応答に関与するドパミン神経系の中核ということが近年の神経科学研究から明らかとなってきた。
 近年のMRI計測・解析技術の進歩により、中脳腹側被蓋野、側坐核、前頭皮質を高精度に同定し、その関連を検討することが可能になってきた。そこで我々は、中脳辺縁系・中脳皮質系に着目して、T1強調画像を用いた関連部位の同定を行い脳体積を求めた。さらに、同定した脳部位同士の機能的結合を、安静時脳機能画像(rsfMRI)を用いて検討した。これら一連の解析を健常成人で検討したのち、統合失調症、大うつ病性障害などの疾患をもつ患者から得たMRIデータを用いて解析し、疾患特異性を検討することにした。

【方法】
 我々は、平成28年4月時点で、本研究目的に合致したMRI脳画像を、健常成人50名、統合失調症患者30名、大うつ病性患者30名から得ている。まず、健常成人20名について本研究の目的となる解析を実施し、妥当性を検討する。妥当な結果が得られた解析手法を見いだせれば、疾患特異性について検討を行う。
 本研究は、東京大学医学部倫理委員会で承認されており、すべての被験者から、定められた方法でインフォームドコンセントを得ている

【結果と考察】
 結果については、学会発表までに得られた解析結果を発表する。本研究により、中脳辺縁系・中脳皮質系という精神疾患の主要仮説をMRIデータを用いて検討できると考えている。
P-154(3)
Cerebellar activation during motor task in conversion disorder with paralysis:A case report and fMRI study
嶋田 貴充,大井 一高,康山 俊樹,記村 康平,上原 隆,川崎 康弘
金沢医科大学精神神経科学

Background:Motor conversion disorders are characterized by movement symptoms without a neurologic cause. A psychogenic ethology is presumed in the disorders, but little is known about the underlying neural mechanisms. Functional magnetic resonance imaging(fMRI)has been utilized to understand the mechanisms of unexplained motor symptoms. In the current study we investigated the cerebral response to motor stimulation using fMRI in a patient with conversion disorder with paralysis to determine the underlying neural mechanisms of this disorder. Methods:Brain activation induced by the movements(repeated plantar flexion and the dorsiflexion)of bilateral ankle joints were recorded using fMRI in a patient with unexplained paralysis who fulfilled Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition(DSM)-5 criteria for conversion disorder. We acquired two types of the imaging data;(i)when the paralysis was remained and(ii)after the paralysis was completely improved. We used within-subject fMRI block design to compare brain activities during the motor task and at-rest in the patient. Results:Compared to cerebral activations at-rest, cerebral motor areas were significantly activated during the motor task in both points that the paralysis was remaining and improving(FWE-corrected p<0.05)although the activation in the motor areas was larger in the remaining point than the improving point. It was noteworthy that an activation in the cerebellum posterior lobe during the motor task in the remaining point(FWE-corrected p<0.05)was disappeared after the paralysis was completely improved. Conclusions:The cerebellum is a region affecting voluntary motion closely. We suggest that complementary abnormal function in the cerebellum might be associated with the neural basis of conversion disorder with paralysis.
P-155(3)
精神病性・非精神病性双極性障害における白質神経束微細構造の解析
城山 隆1,前田 正幸2,元村 英史1,谷井 久志3,鈴木 大1,松本 龍介1,岡田 元宏3
1三重大学医学部附属病院 精神科神経科,2三重大学大学院 先進画像診断学講座,3三重大学大学院医学系研究科 臨床医学系講座 精神神経科学分野

精神病症状を伴う双極性障害(PBD)は、クレペリンの二分主義から我が国の非定型精神病概念、近年のDSM-5に至るまで、気分障害と統合失調症の間で重要な位置にある。本研究ではPBDの脳白質障害に関して、精神病症状を伴わない双極性障害(NPBD)や健常者と比較して調べた。方法:年齢、性別、利き手、教育年数を一致させた40代~50代の被験者3群(PBD9例、NPBD9例、健常者22例)を対象として3T拡散テンソル画像を撮像し、TBSS(FWEによる多重比較補正)を用いて年齢・性別を共変量として3群のFA値,MD値,RD値,AD値を比較した。結果:PBDがNPBDに比して有意にFA低下(両側大鉗子~頭頂・後頭葉白質)、MD上昇(左側脳梁膝部・脳梁体部・大鉗子・上縦束・下縦束・帯状束後部・前視床放線・下前頭後頭束・放線冠・皮質脊髄路、両側小鉗子~前頭葉眼窩部白質)、RD上昇(両側脳梁膝部・脳梁体部・大鉗子・小鉗子~前頭葉眼窩部白質・鈎状束・上縦束・下前頭後頭束・帯状束後部、左側下縦束・上小脳脚)。PBDが健常者に比して有意にFA低下(両側脳梁体部・大鉗子・上縦束・下縦束、右側帯状束体部)、MD上昇(両側脳梁膝部・脳梁体部・小鉗子~前頭葉眼窩部白質・上縦束・前視床放線・帯状束後部、右側帯状束体部)、RD上昇(両側脳梁膝部・脳梁体部・大鉗子・小鉗子~前頭葉眼窩部白質・鈎状束・放線冠・下前頭後頭束・上縦束・下縦束・帯状束後部、左側前視床放線、右側帯状束体部)。FA値,MD値,RD値,AD値いずれにおいてもNPBDと健常者で有意差を示した領域はなかった。3群間でAD値の有意差を示した領域はなかった。考察:双極性障害の中でもPBDとNPBDでは脳白質の微細構造障害に差異があり、前頭前野・頭頂葉・後頭葉の交連線維、および左側の頭頂葉・後頭葉と側頭葉・前頭前野の連合線維、視床と前頭前野の連合線維、小脳・皮質脊髄路などの投射線維において、軸索障害を伴わない髄鞘の障害が示唆された。これらの白質障害は、前頭葉ネットワーク機能の低下に伴う情動・行動の障害、視床下部―下垂体系の調節障害、および認知機能低下に関連し、双極性障害における精神病症状の発現につながると考えられた。
P-156(3)
うつ病と適応障害を鑑別するためのNIRS研究
綿貫 俊夫1,松尾 幸治1,原田 健一郎1,平田 圭子1,松原 敏郎2,渡邉 義文1
1山口大学大学院医学系研究科高次脳機能病態学分野,2山口大学保健管理センター

【背景】うつ病(Major depressive disorder,MDD)と適応障害(Adjustment disorder,AjD)は抑うつ状態を呈する代表的な精神疾患であるが、治療法の違いから適切に鑑別する必要がある。しかしながら、この鑑別は臨床症状からは困難な場合が少なくなく、この鑑別を可能にする生物学的マーカーが必要とされている。今回われわれは、近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を用いて、MDDおよびAjDと診断した患者に対してverbal fluency task(VFT)を施行し、task施行前後での酸素化ヘモグロビンの濃度変化および各チャンネルにおけるNIRSパラメーターの違いについて調査を行い、両疾患の鑑別を試みた。【方法】対象は年齢、性別、利き手、推定IQをマッチさせた抑うつ状態のMDD患者25名、AjD患者18名および健常者(HC)23名。この研究は山口大学医学部附属病院Institutional Review Boardの承認を得て行われた。また、すべての参加者に対して文書および口頭で研究に関する説明を行い、文書での同意を得た。課題はVFTとし、NIRSを用いて前頭側頭部の31チャンネルにおける平均酸素化ヘモグロビン[oxy-Hb]濃度変化を測定し、3群間で比較した。また、チャンネルごとの重心値、傾きも比較した。統計は、False Discovery Rate補正を用いた分散分析、その後の検定でBonferroni補正した多重比較を用いた。【結果】HC群に比べ、MDD群では有意に[oxy-Hb]変化が小さい4つのチャンネルが認められ(#23、#32、#43、#50、#52)、AjD群では有意に[oxy-Hb]変化が小さい2つのチャンネルが認められた(#43、#50)。MDD群とAjD群の2群間で有意差のあるチャンネルは認められなかった。その他の重心値、傾きについては有意差は認められなかった。【考察】HC群に比べMDD群、AjD群の両群で右の中側頭部、左の眼窩前頭前頭部の賦活が有意に悪かったことから、この2領域が抑うつ状態に共通する神経基盤である可能性が示唆された。また、右の前中心部、右の上側頭部、左の中側頭部はMDD群においてのみ賦活が悪かったことから、MDDに特異的な神経基盤であることが示唆された。
P-157(3)
高齢うつ病患者の脳構造学的・機能学的異常に関する縦断MRI研究
原田 健一郎1,松尾 幸治1,生田 敏一2,中島 麻美3,樋口 文宏1,樋口 尚子1,柴田 朋彦4,芳原 輝之5,中野 雅之6,大朏 孝治7,綿貫 俊夫1,山形 弘隆1,松原 敏郎8,渡邉 義文1
1山口大学大学院医学系研究科高次脳機能病態学分野,2ミシシッピ大学応用科学部コミュニケーション科学・障害学科,3医療法人山陽会 長門一ノ宮病院,4医療法人心和会 小野田心和園病院,5山口県立総合医療センター神経科,6医療法人和同会 片倉病院,7医療法人同仁会 こなんホスピタル,8山口大学保健管理センター

目的:高齢うつ病(late-life depression;LLD)の脳画像研究では、前頭-辺縁系回路の灰白質、白質の構造異常が報告されている。しかしながら、LLDの構造・機能異常を調べた縦断研究の報告は、われわれが調べた限りではほとんどみられない。そこで今回われわれは、複数の脳画像解析を用いて、LLD患者を急性期、寛解期と追跡し、健常被験者との灰白質体積や白質連結性、機能的連結などを比較検討したので報告する。方法:50歳以上のLLD患者16例(平均年齢59.7±9.0歳。男性6例、女性10例)と健常対照者(Healthy control subjects;HC)30例(平均年齢59.8±7.1歳。男性11例、女性19例)の計46例を検討した。本研究は山口大学医学部附属病院Institutional Review Boardの承認を得ており、すべての対象者に文書及び口頭で研究の趣旨を説明し、文書による同意を得ている。SIEMENS社製3T MR装置を用い、LLD患者は、急性期と寛解期の2回撮像した。得られた画像データについて、灰白質体積(voxel-based morphometry)、白質連結性(tract-specific analysis)、安静時機能的MRI(fcon)の解析を行った。結果:灰白質体積では、急性期・寛解期ともに、LLD群はHC群と比較して左上側頭回の灰白質体積が有意に小さかった。また、急性期LLD群はHC群と比較して左眼窩前頭回の灰白質体積が有意に小さかったが、寛解期LLD群はHC群との間では有意差が認められなかった。白質連結性は、急性期LLD群はHC群と比較して右鈎状束の平均拡散係数が有意に大きかったが、寛解期LLD群はHC群との間では有意差が認められなかった。安静時機能的MRIによる機能的連結の解析では、上側頭回は、後部帯状回を含むデフォルトモードネットワークの重要な一部であることが示された。結論:以上の結果より、LLD患者において、上側頭回の灰白質体積の異常は素因依存的であり、眼窩前頭回の灰白質体積や鈎状束の白質連結性の異常は状態依存的であることが示唆された。
P-158(3)
気分障害における報酬予測に対する腹側線条体の活動
若槻 百美1,橋本 直樹1,小倉 有紀子1,中井 幸衛1,宮本 環1,北川 寛1,大久保 亮1,豊島 邦義1,亀山 梨絵1,成田 尚1,藤井 泰1,仲唐 安哉2,伊藤 侯輝1,賀古 勇輝1,朝倉 聡1,中川 伸1,井上 猛3,久住 一郎1
1北海道大学大学院医学研究科神経病態学講座精神医学分野,2中江病院,3東京医科大学精神医学分野

【背景】近年、多数の脳機能画像研究により、気分障害(うつ病・双極性障害)患者の前頭葉-線条体系を中心とした報酬系の機能異常が明らかとなっている。報酬系にはドパミン神経回路が重要な役割を果たしており、気分障害ではドパミン神経系の関与が注目されている。一方、気分障害の発症と経過にはストレス、気質が影響を与えることが知られているが、報酬系との関連については明らかになっていない。本研究では報酬予測課題遂行中の腹側線条体の活動の変化が診断補助になりうるのか、さらにドパミン代謝産物である血漿中ホモバニリン酸濃度、幼少期ならびに成人期ストレス、気質との関連についても検討した。【方法】19歳~50歳の寛解状態もしくは抑うつ状態の大うつ病性障害(MDD)31名、双極性障害(BP)35名を対象に、Knutsonらのmonetary incentive delay taskを改変し行い、報酬に対する予測時の腹側線条体の脳活動を機能的磁気共鳴画像法を用いて測定した。ハミルトンうつ病評価尺度(HAMD)、ヤング躁病評価尺度(YMRS)、知的機能の簡易評価(JART)による臨床評価を行い、血漿ホモバニリン酸濃度(HVA濃度)を測定した。また、自記式質問紙にて幼少期ストレス(CATS)、過去1年間のライフイベント(LES)、感情気質(TEMPS-A)を調査した。本研究は北海道大学病院自主臨床研究審査委員会の承認を得て実施された。【結果】500円条件(最大報酬)と、結果に対するフィードバックのない0円条件([0]円条件)の賦活の差分に着目し解析を行った。ステップワイズ法による重回帰分析の結果、寛解群では、診断と腹側線条体の活動が関連し、MDDで賦活の差分が増加することが示された。さらに全被験者ではJART、血漿中HVA濃度が腹側線条体の活動と関連することが示された。LESにおけるポジティブなライフイベントは全被験者、寛解群、BP群のそれぞれで賦活の差分との相関を認めたが、ステップワイズ法による重回帰分析では説明変数として選択されなかった。同様に、TEMPS-Aの循環気質、CATSのネグレクトの項目がBP群で相関を認めたが、説明変数として選択されなかった。【結論】気分障害患者において、報酬予測に対する腹側線条体の賦活は寛解状態ではMDDで報酬に対する賦活が増加することが示され、さらに知的水準、HVA濃度と関連していた。幼少期・成人期ストレスならびに気質に関しては腹側線条体の活動への明らかな影響は示されなかった。
P-159(3)
精神疾患のリスク遺伝子CX3CR1多型と脳画像との相関解析
坂井 舞1,2,竹内 光4,菊地 淑恵2,兪 志前1,2,3,小野 千晶2,瀧 靖之3,4,5,川島 隆太4,6,富田 博秋1,2,3
1東北大院・医・災害精神医学分野,2東北大・災害研・災害精神医学分野,3東北大・東北メディカルメガバンク機構,4東北大・加齢研・認知機能発達寄附研究部門,5東北大・加齢研・機能画像医学研究分野,6東北大・加齢研・応用脳科学研究分野

CX3CR1遺伝子は末梢細胞において様々な細胞に発現し,炎症に関与する遺伝子として知られる一方、脳においてはミクログリアに特異的に発現し,記憶や神経発生,シナプスの刈り込みなど重要な役割を果たしていることが報告されており,CX3CR1遺伝子は脳・神経系の機能や精神疾患病態への関与が示唆される。一方,CX3CR1遺伝子の一塩基多型であるT280M(rs3732378)とV249I(rs3732379)は末梢の炎症性疾患の罹患感受性への影響は報告されているが,脳の構造機能や精神疾患への関与についてはいまだ不明である。そこで,本研究では同多型と脳画像の相関解析により、CX3CR1の脳構造・機能に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
同意が得られた健常成人1301名に対して,核磁気共鳴画像法(MRI)により脳構造・機能を評価した。特に,脳の灰白質・白質の容積、拡散テンシル画像による白質神経線維走行の規則性の評価,安静時脳血流の評価等を行った。また,同じ対象から唾液を採取,そしてDNAを抽出し、目的のDNA多型の解析を行った。多型解析としてはT280M(rs3732378)とV249I(rs3732379)の解析を行った。これらのデータを統合し,脳の灰白質・白質の容積に関して有意に差がみられる脳領域,また,拡散テンシル画像による白質神経線維走行の規則性や安静時脳血流に関して有意差がみられる脳領域を特定した。そして,アレル間において認知機能・注意機能,精神的健康度等の脳・精神機能に差がみられるかどうかについて検討した。
日本人の健常成人1301人のうち,唾液DNAを対象にCX3CR1遺伝子一塩基多型(rs3732378)の解析を行った結果,解析可能であった1293人ではA/Aホモ接合頻度0.2%,ヘテロ頻度(A/G)9.1%,G/Gホモ接合頻度90.7%を示した。また,遺伝子多型と脳画像の相関解析により,アレル間において脳灰白質の構造・機能変化で有意差は見られなかった。一方,脳動脈容量に関しては楔前部においてメジャーアレルであるG/Gを持つグループで有意に大きいことが明らかになった。この結果はCX3CR1を介したミクログリアと血管関連細胞の相互作用により,脳動脈に変化を及ぼしている可能性を示唆する。