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一般、大学院生、若手研究者(ポスター)
その他
P-172(3)
カルボニルストレスが亢進する統合失調症に対するピリドキサミン大量療法の効果の検証
宮下 光弘1,新井 誠1,鳥海 和也1,市川 智恵2,堀内 泰江1,小堀 晶子1,高橋 克昌3,徳永 太郎3,石本 佳代3,湯澤 公子4,宇佐美 慧5,吉川 武男6,岡崎 祐士3,鷲塚 伸介7,天野 直二7,滝澤 俊也4,宮田 敏男8,糸川 昌成1,3,5
1東京都医学総合研究所・精神行動医学研究分野・統合失調症プロジェクト,2明治薬科大学 感染制御学教室,3東京都立松沢病院 精神科,4東海大学総合医学研究所,5筑波大学大学院人間総合科学研究科,6理化学研究所 脳科学総合研究センター 分子精神科学研究チーム,7信州大学医学部精神医学教室,8東北大学大学院医学系研究科附属創生応用医学研究センター

目的:カルボニルストレスが亢進する統合失調症に対して、ピリドキサミン(ビタミンB6)大量療法による効果の検証を目的とした。方法:カルボニルストレス亢進の代表的なバイオマーカーである血漿ペントシジン値が、55.2ng/ml以上の高値を示す10例の統合失調症患者をリクルートし、24週、単群非盲検試験を実施した(UMIN000006398)。試験前から投与されている抗精神病薬量は治験期間中を通じて原則固定した。ピリドキサミンの用量は1200mg/dayから開始し、状態に応じて最大2400mg/dayまで投与可能とした。有効性評価指標としてPositive and Negative Syndrome Scale(PANSS)、Brief Psychiatric Rating Scale(BPRS)を、安全性評価指標としてDrug Induced Extra-Pyramidal Symptoms Scale(DIEPSS)、Columbia Suicide Severity Rating Scale(C-SSRS)をそれぞれ実施した。結果:10例のうち1例は、全身状態の悪化により脱落したため、9名が治験を完遂した。9例の血漿ペトシジン平均減少率は26.8%に達し、PANSSトータルスコア、BPRSの平均改善率はそれぞれ8.1%、10.8%であった。また、2例において精神症状が顕著に改善し、カルボニルストレスに対して遺伝的な脆弱性を有するGLO1のフレームシフト症例では、ペントシジンの減少と並行して症状の改善を認めた。また、一部の症例では疎通性の改善、感情表出の改善を認めた。さらに、9例中4例において、DIEPSSスコアが20%以上減少し、薬剤性パーキンソニズムの改善を認めた。ウェルニッケ脳症様の副作用が2例において生じたが、チアミンの投与により完全に回復した。考察:カルボニルストレスが亢進する統合失調症において、ピリドキサミン大量療法が有効である一群の存在を明らかにした。今後は、プラセボを置いたランダム化比較試験によって、本治験で示された有効性を再検証すると共に、効果発現の分子学的機序を解明する必要がある。
P-173(3)
統合失調症患者における末梢アミノ酸濃度と臨床症状との関連―共分散構造分析による解析―
尾関 祐二1,2,関根 正恵3,藤井 久彌子1,高野 有美子1,岡安 寛明1,篠崎 隆央1,渡邊 崇1,青木 顕子1,青木 秀明4,森 玄房5,秋山 一文6,本間 浩3,下田 和孝1
1獨協医科大学精神神経医学講座,2国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 疾病研究第3部,3北里大学薬学部生体分子解析学教室,4秀明会大澤台病院,5生々堂厚生会森病院,6獨協医科大学精神生物学講座

はじめに:これまで統合失調症患者における臨床状態と末梢アミノ酸濃度との関係がいくつか報告されているが、アミノ酸相互の関係はあまり検討に組み入れられていない。目的:統合失調症患者の各種末梢アミノ酸濃度と臨床症状の関係を、各アミノ酸の相互作用を可能な限り減らす目的で共分散構造分析を用いて評価する。対象:統合失調症患者46人(男性27人、女性19人、平均年齢54.9±11.4、喫煙18人、平均罹病期間29.2±12.8年,平均教育年数11.8±2.1年,クロルプロマジン換算抗精神病薬服用量814.7±634.0mg,PANSS得点74.3±16.9[陽性尺度14.5±5.1 陰性尺度23.8±5.7]、BACS-J得点48.7±48.7)方法:各対象者から昼食前に採血をし、分離された血漿を対象にHPLCにて以下のアミノ酸(Glu,Gln,L-Ser,D-Ser,Gly,His,Asn,Asp,Arg,Thr,Ala,Pro,Met,Val,Leu,Ile)を測定した。また、PANSS・BACS-Jを測定した。統計解析はSPSS Amos ver. 22.0を使用した。本研究は獨協医科大学生命倫理委員会の承認を得て行われた。結果:すべての因子を含むパス図はモデルが不適格であった(CFI:comparative fit index=0.41、通常0.9以上が求められる)。因子をGlu,Gln,L-Ser,D-Ser,Glyのみとしたときにモデルは適切であった。教育年数および罹病期間もモデルには組み込めなかった。BACS-Jは年齢(p<0.01)及びGln濃度(p=0.37)と関連がみられた。PANSS得点とアミノ酸に関係はなく、陽性尺度および陰性尺度は共にGly濃度と有意な関係が認められた(各々p=0.12、p<0.01)。モデルのCFIはすべて0.92と妥当であった。考察:今回の結果は、Glyと臨床症状、Glnと認知機能に何らかの本質的な関係があることを示しているのかもしれない。しかし今回検討されていない物質もあるなど、検討が必要な点が残されている。
P-174(3)
統合失調症における血漿中sTNFR2・MMP-9と臨床症状・認知機能との関わり
山森 英長1,石間 環2,工藤 紀子1,安田 由華1,藤本 美智子1,新津 富央3,沼田 周助4,伊豫 雅臣3,大森 哲郎4,橋本 謙二2,武田 雅俊1,橋本 亮太1,5
1大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室,2千葉大学社会精神保健教育研究センター・病態解析研究部門,3千葉大学大学院医学研究院精神医学教室,4徳島大学医学部医歯薬学研究部精神医学分野,5大阪大学大学院連合小児発達学研究科附属子どものこころの分子統御機構研究センター

我々は以前、Soluble TNF α receptor II(sTNFR2)とMatrix metalloproteinase 9(MMP-9)が統合失調症患者由来血漿において増加していることを、7セット、健常者計262名と統合失調症患者計262名の、多施設大規模サンプルを用いて解析を行い、報告した。これら二つのマーカーの、生物学的な統合失調症との病態への関わりを明らかにするため、これらのマーカーと、臨床症状、認知機能との関連について詳細な解析を行った。解析を行った項目は、臨床症状では発症年齢、罹病期間、教育歴、PANSS、GAF、内服量(CP換算)について、認知機能についてはWAIS、WMSR、AVLT、CPT、VFについてである。マーカーの測定を行った健常者計262名と統合失調症患者計262名のうち、認知機能については健常者、統合失調症合わせて約260名、臨床症状については統合失調症約120名について解析を行った。sTNFR2は、臨床症状では罹病期間と有意な正の相関があること、認知機能ではWAIS、WMSR、AVLT、CPT全てと有意な負の相関があることが確認された。sTNFR2の値が高い群(sTNFR2、2500pg/ml以上)でと低い群(sTNFR2、2500pg/ml未満)とで比較すると、sTNFR2の値が高い群で、WAIS、WMSR、AVLT、CPTの値が有意に低いことも確認された。MMP-9については、臨床症状では内服量と有意な正の相関があること、認知機能ではWAIS、WMSR、AVLT、CPT全てと有意な負の相関があることが確認された。これらの結果から、sTNFR2、MMP-9ともに統合失調症の認知機能の低下に関与している可能性が示唆された。特にsTNFR2については罹病期間とも有意な相関があり、病状の進行と関係している可能性も考えられ、興味深い。今後sTNFR2とMMP-9の生物学的な病態への関わりが明らかになることで、統合失調症の認知機能障害のしくみが解明されることが期待される。本研究は施設の倫理委員会の承認を得たうえで、すべての対象者に目的と方法を説明した文書での同意を得て行われた。
P-175(3)
自閉スペクトラム症罹患一卵性双生児を含む家系におけるエクソームシークエンスおよびフォローアップ解析
江川 純1,渡部 雄一郎1,杉本 篤言1,布川 綾子1,澁谷 雅子1,井桁 裕文1,井上 絵美子1,保谷 智史1,折目 直樹1,林 剛丞1,杉山 登志郎2,染矢 俊幸1
1新潟大学大学院医歯学総合研究科精神医学,2浜松医科大学児童青年期精神医学講座

【目的】自閉スペクトラム症(ASD)の発症に大きな効果をもつ稀な変異の同定を目的として、一卵性双生児ASD罹患一致同胞対を含む家系のエクソームシークエンスおよびフォローアップ解析を実施した。【方法】本研究は新潟大学医学部遺伝子倫理審査委員会で承認されており、対象者や両親からは書面にて研究参加の同意を得た。・エクソームシークエンス:ASDと診断された一卵性双生児男性2名(II-3、II-4)、非罹患者である兄2名(II-1、II-2)と両親(I-1、I-2)からなる家系内において、発端者(II-3)と両親(I-1、I-2)についてエクソームシークエンスを行った。候補変異の絞込みの条件は、(1)リード数10以上、(2)発端者(II-3)が有する変異、(3)短縮型(ナンセンスおよびフレームシフト)変異、(4)dbSNPに登録されていない変異とした。これにより同定された変異について、サンガーシークエンスを家系全員に行い、非罹患同胞には存在しない変異を候補変異とした。・フォローアップ解析:候補変異を、ASD患者257名、統合失調症患者677名および対照者667名で、Taqman法によりタイピングした。【結果】・エクソームシークエンス:(1)~(4)の条件を満たす6つの短縮型変異が同定された。家系全員でのサンガーシークエンスにおいて、WDR90遺伝子V1125fs変異とEFCAB5遺伝子L1210fs変異は、非罹患同胞には存在せず、非罹患者の父親から伝達されていた。父親(I-1)は非罹患者ではあるが、自閉症スペクトラム指数が41点でカットオフ値の33点を超えていた。・フォローアップ解析:計1601のフォローアップサンプルにおいて、これら2つの変異保有者はいなかった。【考察】WDR90遺伝子M1125fs変異とEFCAB5遺伝子L1210fs変異が、特定の家系においてASDの候補リスク変異であることが示唆されたが、ASD一般のリスク変異であることは確認できなかった。
P-176(3)
統合失調症症状を呈した22q11.2欠失症候群の2症例 Schizophrenia-like psychosis in 22q11.2 deletion syndrome patients:two case
林 岳宏1,前田 冬海1,神田 英介1,田川 真一朗1,肝付 洋1,春日井 基文1,鮫島 三恵子2,鮫島 秀弥2,中村 雅之1,赤崎 安昭3,佐野 輝1
1鹿児島大学大学院医歯学総合研究科精神機能病学分野,2社会医療法人慈生会ウエルフェア九州病院,3鹿児島大学医学部保健学科

22q11.2欠失症候群は、ヒト第22番染色体長腕11.2の微細欠失を原因とする症候群であり、身体奇形症候群に加え高率に統合失調症症状を呈する。今回、経過中に統合失調症症状を呈した2症例について報告する。症例1は緊張病様症状を呈し、症例2は強迫症状から幻覚妄想状態に移行した。症例1は19歳女性。X年1月に活発な幻覚と被害妄想を認め、A精神科病院を受診し統合失調症と診断された。治療抵抗性であり同年7月にB病院精神科に入院した。口蓋裂の既往や顔面小奇形を認めた為、両親に文書による同意を得てFISH法による22q11.2欠失症候群の検査を行い、同診断に至った。薬物療法では少量の抗精神病薬で強い錐体外路症状を呈した。症例2は21歳男性。X-8年10月、窓が閉まっているか何度も確認する確認強迫を認め、同年11月にB病院精神科を受診した。顔面や手の小奇形と心房中隔欠損などを認めた為、両親に文書による同意を得てFISH法による22q11.2欠失症候群の検査を行い、同診断に至った。本症例は、TaqMan probeを用いたreal time PCRにより遺伝子コピー数について定量を行い、遺伝子欠失領域を明らかにし、第31回日本生物学的精神医学会で演者が発表した。その後、C病院で経過観察されていたが、X年10月に幻覚と被害妄想が出現した。抗精神病薬が開始されたが症状の改善に乏しく、希死念慮が出現した為、X+1年1月にB病院に入院した。入院後、抗精神病薬増量により精神症状は改善した。本症例では、抗精神病薬の開始時を除き、錐体外路症状は目立たなかった。22q11.2欠失症候群では、統合失調症症状を高率に認めることはよく知られているが、その治療経過についての詳細な報告は少ない。本報告の2症例は、抗精神病薬に対する反応性が異なっており、何らかの修飾因子により表現型に差異が生じたことが示唆された。尚、遺伝子解析は鹿児島大学大学院医歯学総合研究科遺伝子解析研究倫理委員会の承認を得て行い、本報告は患者のプライバシーに最大限配慮した。
P-177(3)
統合失調症、自閉症スペクトラム障害における認知機能の検討
平田 圭子1,2,松尾 幸治1,原田 健一郎1,綿貫 俊夫1,磯村 信治3,松原 敏郎1,加来 洋一3,兼行 浩史3,渡邉 義文1
1山口大学大学院医学系研究科高次脳機能病態学分野,2片倉病院,3山口県立こころの医療センター

【背景】統合失調症および自閉症スペクトラム障害(ASD)では社会的認知機能の障害が認められるが、それを直接比較した神経心理学的検討は多くない。そこで、今回われわれは、語流ちょう課題および表情認知課題を統合失調症およびASD患者で施行し、その差異について検討したので報告する。【背景】統合失調症および自閉症スペクトラム障害(ASD)では社会的認知機能の障害が認められるが、それを直接比較した神経心理学的検討は多くない。そこで、今回われわれは、語流ちょう課題および表情認知課題を統合失調症およびASD患者で施行し、その差異について検討したので報告する。【方法】対象は、16例の統合失調症患者、16例のASD患者、18例の健常者とした。本研究は山口大学医学部附属病院Institutional Review Boardの承認を受けており、全ての参加者へ文書及び口頭で研究の趣旨を説明し、文書で同意を得た。課題は、語流ちょう課題、恐怖および怒りの情動表情、性別、図形課題を用いたGo/Nogo課題、表情マッチング課題を用いた。行動評価は、語流ちょう課題は単語産生数、表情Go/Nogo課題は、正解率、正解平均反応時間(MRT)、false alarm error rate、omission error rate、表情マッチング課題では、正解率、正解平均反応時間を用いた。統計解析は年齢、性別、推定IQを共変量にした共分散分析、その後の検定としてBoferroni補正を用いた多重比較を行った。【結果】情動Go/Nogo課題では、情動表情および図形課題のMRTにおいて診断間で有意差が認められ、統合失調症患者は健常者と比べ有意にMRTが長かった(P=0.01)。情動表情のうち恐怖や怒り表情でMRTに関し同様の傾向が見られた。表情マッチング課題では、MRTで診断間で有意差が認められ、統合失調症患者とASD患者は健常者と比べ有意にMRTが長かった(Ps<0.01)。情動表情のうち、怒り、悲哀表情のMRTは同様の傾向を示し、恐怖、悲哀のMRTは、統合失調症、ASD患者で健常者より有意に長かった(Ps<0.01)。恐怖の正解率は診断間で有意差が認められ、統合失調症患者が健常者より有意に正解率が低かった(P<0.05)。性別、図形課題は診断間で有意差が認められ、ASD患者が、健常者、統合失調症患者より有意に長かった(Ps<0.01)。【結論】表情認知に関しては、統合失調症及びASD患者は、健常者と同等の正解率を得ているものの、その達成には多くの時間を要するという共通の傾向が見られた。さらにASD患者は表情以外の課題でも多くの時間を要し、統合失調症とASDでは表情認知機能の障害には異なる病態が関与していることが示唆された。