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一般、大学院生、若手研究者(ポスター)
その他
P-185(3)
[18F]florbetapir PETにてMCI due to ADと診断され早期介入から就労継続が可能となった一例
山本 正浩,舘野 周,大久保 善朗
日本医科大学付属病院精神神経科

【症例】56歳男性【病歴】X-6年頃より職場で論理的に内容を説明できないなど問題を指摘され始め、X-3年にはアルコール臭がする、仕事の覚えが悪いと指摘され、物忘れを自覚するようになった。職場健康管理室の神経内科医の勧めで認知症専門医受診したが問題は認めなかった。物覚えが悪く、約束の日時や場所を間違えるためX年10月健康管理室より精神疾患の有無・認知症精査目的でAメンタルクリニック紹介受診となった。Aメンタルクリニックでは認知症が疑わしいと精査目的でX年11月当科紹介となった。【経過】アルコールによる認知機能低下も否定できず断酒を指示、自覚的には物忘れを改善してきた。しかしX年12月の精査にてADAS8点MMSE26点と認知機能は軽度低下し、MRI(VSRAD)ではz-score 1.01と正常であったが、アミロイドPETにて、standard uptake value ratio(SUVR)1.55でアミロイド沈着陽性と評価された(cut-off値1.10)。そのため家族・産業医に現状では軽度認知障害(MCI)に留まるが今後アルツハイマー型認知症に移行する可能性が高いと説明した。職場では上記説明から職務や環境の調整が行われミスや問題は目立たなくなった。その後家族より認知機能低下の話がありX+3年3月再検査試行しz-score 1.07と変化は無かったものの、ADAS15点MMSE17点と認知機能は明らかに低下し、SUVR 1.75と高値であった。【考察】数年前より職場で認知機能低下を指摘され、MRIなど精査するも異常はなく、精神障害を疑われてメンタルクリニック受診に至った症例である。当科でもMRIや認知機能検査ではMCIであったが、アミロイド沈着陽性であったことから、アルツハイマー型認知症のハイリスク(MCI due to AD)として早期介入に至った。認知機能は徐々に低下しているが、早期にアルツハイマー型認知症のリスクを評価できたことで産業医にも精神疾患ではなくMCI、及びアルツハイマー型認知症ハイリスクと説明することが可能となり、環境調整・就労配慮にて2年余り就労継続出来ている。発表にあたっては十分なインフォームド・コンセントを得て、プライバシーに関する守秘義務を遵守し、匿名性の保持に十分な配慮をした。
P-186(3)
Tauは細胞内で多様なリン酸化状態として存在する
木村 妙子1,石黒 幸一2,長谷川 成人3,久永 眞市1
1首都大・理工研究科・生命科学,2順天堂大・医学・神経,3東京都医学総合研究所

タウは脳で発現する微小管結合タンパク質であり、またタウオパチーと呼ばれる一群の神経変性疾患では凝集体を形成し、疾患の原因ではないかと考えられている。タウの微小管結合能(生理的役割)はリン酸化によって制御されている。一方、凝集タウ(病理)は異常リン酸化されている。タウのリン酸化は生理的にも病理的においても重要な問題である。タウのリン酸化についてはこれまで多くの研究が行われて来たが、細胞内でどのようなリン酸化状態で存在するかは明確になっていなかった。本研究内ではリン酸化部位の組み合わせと定量が可能なPhos-Tag法を用いて、主に培養細胞内、マウス脳内におけるタウのリン酸化解析を行った。培養細胞に強制発現させたタウは12のリン酸化の異なるアイソタイプとして存在した。主なリン酸化部位はThr181,Ser202,Thr231,Ser235,Ser404であり、それらの組み合わせで12のリン酸化アイソタイプとなっていた。そのリン酸化パターンはマウス脳内のタウと同様であり、培養細胞内での解析がin vivoリン酸化の解明につながると考えられた。前頭側頭葉型認知症であるFTDP-17のR406W変異タウは変異のすぐN末側にあるSer404のリン酸化に影響を与えた。Ser404のリン酸化消失がどのような病理的意義をもつか今後の課題である。タウには微小管結合領域が3つの3リピート(3R)Tauと、4つの4リピート(4R)Tauがある。タウオパチーの種類によって凝集するタウのリピートが異なる。タウのアイソフォームによりリン酸化が異なるかについても解析を行った。培養細胞にリピート数の異なるタウを発現させたところ、リピート数によってリン酸化状態に違いが見られた。以上の結果から、タウはアイソフォーム、細胞内における存在状態などによりリン酸化が異なると考えられる、どのような存在状態におるタウのリン酸化が亢進して、疾患タウへと変化していくのか明らかにしていきたいと考えている。
P-187(3)
酸性食塩水誘導型線維筋痛症様病態モデルマウスに対するPregabalin治療効果
森下 祐樹1,迎 武紘2,根山 広行2,植田 弘師2
1長崎大学薬学部薬科学科創薬薬理学,2長崎大学大学院医歯薬学総合研究科創薬薬理学分野

線維筋痛症(FM)は、原因不明の全身性疼痛を主訴とする慢性疾患である。これまでにFMの病態を反映したモデルマウスはSlukaらによるAcid saline induced Chronic Muscle pain(ACM)modelが報告されているが、このACMマウスは左腓腹筋にpH4.0の酸生食塩水をday0とday5の2回投与することにより非炎症性の機械的アロディニアが長期的かつ両側性に見られる。Pregabalin(PGB)は本邦において初めて線維筋痛症に承認された治療薬であり、本研究では、ACMマウスを用いてPGBの疼痛抑制効果の検討を行った。2回目酸性食塩水投与後5日後(P5)のACMマウスに対してPGBを腹腔内に投与すると用量依存的に急性の疼痛抑制効果が見られた。次に作用領域を同定するため、PGBを脊髄くも膜下腔内および脳室内に投与し疼痛抑制効果を検討した。その結果、脊髄くも膜下腔内では一過性の疼痛抑制効果が確認されたのに対し、脳室内投与では一回の投与で2日以上持続する強力な疼痛抑制効果が確認された。この持続する強力な疼痛抑制効果に着目し、ACMマウスに対しPGBを3日毎に4回(P5,8,11,14)脳室内に投与すると疼痛閾値が徐々に改善し、正常マウスと同程度まで改善することが明らかになった。これらの結果から、ACMマウスに対しPGBは上位脳においてその強力な疼痛抑制効果を発揮することが明らかになった。
P-188(3)
神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)スプライシング変異体の細胞内における活性評価
北村 篤志1,赤池 孝章2,居原 秀1
1大阪府立大学大学院理学系研究科生物科学専攻,2東北大学大学院医学系研究科環境保健医学分野

【緒言】ガス状メディエーターである一酸化窒素(NO)は、神経伝達物質であり、二次メッセンジャーとしてcyclic guanosine monophosphate(cGMP)が知られている。近年NOと活性酸素種(ROS)によるNO/ROSシグナルの2次メッセンジャーとしてcGMPのグアニン8位にニトロ基が付加された8-NO2-cGMPが発見された。一方、NO合成酵素(NOS)は、NOと同時に、スーパーオキシド(O2-)を産生することが知られており、近年、神経型NOS(nNOS)によるNO/ROSシグナルの制御機構が明らかになってきている。nNOSにはスプライシング変異体(nNOSα、nNOSμ)が知られているが、なぜ脳にスプライシング変異体が複数存在しているのか、また、細胞内における酵素活性は明らかになっていない。本研究では、細胞内におけるnNOSスプライシング変異体のNO産生、O2-産生活性を比較し、さらに8-NO2-cGMPとの関係の解明を目的とした。【実験方法】nNOSα、nNOSμを恒常的に発現させたヒト胎児由来(HEK293)細胞をカルシウムイオノフォアであるA23187で処理し、細胞内nNOSを活性化した。NO産生は、培養上清中の亜硝酸を2,3-diaminonaphthaleneと反応させ、分光蛍光光度計法によって評価した。O2-産生は、O2-特異的プローブであるDHEを細胞に処理し、O2-反応物を蛍光HPLCによって検出して評価した。さらに、8-NO2-cGMPの産生を蛍光免疫染色によって評価した。【結果・考察】HEK細胞は、カルシウムイオノフォアで処理しても、NO産生、O2-産生は認められなかった。nNOSα、nNOSμ発現HEK細胞をカルシウムイオノフォアで処理するとNO産生が認められ、その産生はNOS阻害剤により阻害された。NO産生量は、両細胞で有意な差は見られなかった。一方、O2-産生は、nNOSα発現細胞でのみ、カルシウムイオノフォア依存的に有意に増加していた。さらに、nNOSα発現細胞では、NO/ROSシグナルの二次メッセンジャーである8-NO2-cGMPの産生が確認された。これらの結果から、脳に局在するnNOSαとnNOSμは、そのレドックスシグナル活性の違いからそれぞれ異なる細胞シグナルに関わっている可能性が示唆された。
P-189(3)
実験的線維筋痛症モデルごとに異なるmorphine及びkyotorphinの疼痛抑制作用
根山 広行,植田 弘師
長崎大学 医歯薬学総合研究科

線維筋痛症は、全身性の慢性疼痛疾患である。原因がわかっていないため、治療法や診断法も確立されておらず、代表的な鎮痛薬であるmorphineも効果が低いとされている。線維筋痛症の病態モデルマウスには、これまで複数の動物モデルが報告されているが、どの動物モデルが臨床像を反映するかという点において我々は一連の研究を行ってきた。Slukaらが報告したAcid Induced chronic muscle pain(ACM)modelと当研究室が確立したIntermittent Cold Stress(ICS)modelを例にとると、これまでの既報や我々の研究成果ではpregabalinや抗うつ薬は共に治療効果を有することが明らかになっているが、morphine感受性については、十分に検証されていない。本研究発表では、この点について再検証することを第一の目標としている。第二の目標としては、kyotorphin(tyrosine-arginine)の2つの線維筋痛症モデルでの有効性の検証である。Kyotorphinはmet-enkephalin遊離作用を介して鎮痛効果を示す(Nature. 1979 Nov 22;282(5737):410-2.)ことが報告されているが、その安定誘導体であるN-methyl kyotorphin(NMYR)による鎮痛効果もmu-オピオイド受容体欠損マウスあるいはnaloxoneの脳室内投与により完全に遮断されたことから、脳におけるオピオイド性の薬理作用が確認された。ACM modelでは、脳室内に投与したmorphineあるいはNMYRはともに、疼痛抑制作用を示したが、ICS modelではともに無効であった。これらの結果は、オピオイド感受性という観点から線維筋痛症の動物モデルとしてはICS modelの方が、ACM modelよりも臨床像に近いということ示唆している。
P-190(3)
大脳新皮質においてリーリン分子により誘導される神経細胞凝集を担うシグナル伝達経路の探索
井上 聖香,林 周宏,久保 健一郎,仲嶋 一範
慶應義塾大学医学部解剖学教室仲嶋研究室

発生期においてリーリンは大脳新皮質辺縁帯のカハール・レチウス細胞から分泌されており、リーリン欠損マウスにおいては大脳新皮質の層構造がおおよそ逆転してしまうことから、リーリンは大脳新皮質形成に必須の分子である。久保らは、マウスの大脳新皮質内でリーリンを異所性に発現させることにより神経細胞凝集塊の形成が誘導されること、この凝集塊が大脳新皮質の層形成で観察されるinside-out様式と同様の細胞配置であることを報告した(Kubo, et al. J. Neurosci., 2010)。さらに、この凝集塊を構成する神経細胞の細胞体は、凝集塊辺縁部に位置し中心部には存在しないこと、一方、細胞突起はその中心部に向いていることも明らかにした。リーリン誘導による神経細胞凝集塊の特徴は大脳新皮質辺縁帯付近の構造と酷似していることから、この指向性をもつリーリン依存的な神経細胞凝集は大脳新皮質層構造形成においても機能していると考えられる。これまで、リーリンの下流シグナル伝達経路として様々な経路が報告されているが、この神経細胞凝集を説明できるシグナル経路は未だ明らかではない。そこで本研究では、リーリンにより誘導される神経細胞凝集を担うシグナル伝達経路を探索した。具体的には、子宮内胎仔脳に対する電気穿孔法を用いてリーリンとともに既知のリーリン下流分子のノックダウンベクター等をマウス胎仔の神経細胞に発現させ、リーリンによって誘導される神経細胞凝集に変化が生じるか否かを観察した。その結果、Crk、C3G、Nckβ分子のノックダウンにより、この細胞凝集塊の形成に異常が見られ、その変化の様子は各分子で異なっていた。一方、Aktの発現抑制はこの細胞凝集塊の形成に影響を与えなかった。これらの結果から、リーリンによって誘導される神経細胞凝集には複数のシグナル経路が関与していることが考えられた。今後、各経路がどのように凝集塊形成に関与しているかを解析していく予定である。
P-191(3)
mt-Keimaを用いたパーキンソン病iPS細胞におけるマイトファジー解析システムの構築
鈴木 禎史1,赤松 和土2,木佐 文彦1,曽根 岳史1,石川 景一2,3,服部 信孝3,岡野 栄之1
1慶應義塾大学医学部生理学教室,2順天堂大学ゲノム・再生医療センター,3順天堂大学医学部脳神経内科

パーキンソン病は、中脳黒質緻密部におけるDA neuron(Dopaminergic neuron)の選択的脱落が主な原因で生じる疾患である。家族性パーキンソン病PARK2において同定されてきたPARKINは、マイトファジーに働く分子と証明され、その変異により本来除去されるべき異常ミトコンドリアの蓄積が生じることで、細胞内ROSが蓄積し細胞死を誘導していると考えられている。健常人由来神経細胞で観察されるCCCP(膜電位低下試薬)投与後のミトコンドリア内膜面積の劇的な減少がPARK2由来神経細胞ではほとんど起きず、ミトコンドリアのクリアランス機構が正常に働いていないことが知られているが、これまでの解析技術ではリソソームと融合後のシグナルを検出することができなかったため、実際にPARK2由来神経細胞内でマイトファジー不全が生じているか単一細胞レベルでの計測を行うことが困難であった。そこで、pHによって励起波長が変化する性質を持つmt-KeimaをPARK2-iPS細胞に導入し、リソソーム融合後のミトコンドリアのシグナルを鋭敏に検出することによって、マイトファジーを単一細胞レベルで定量的に可視化し詳細な解析を行った。はじめに、高純度なDA neuronを用いて解析を行うために、細胞表面抗原を用いて60%以上の効率でヒトES/iPS細胞からDA neuronを誘導する方法を確立した。PARK2-iPS細胞から誘導した高純度なDA neuron群において、CCCP投与後のmt-Keima酸性シグナル陽性細胞の割合とミトコンドリア数/面積の増加をイメージングとフローサイトメーターによって定量的に検出し、正常対照群と比j較して明らかにmt-Keima酸性シグナル陽性細胞数の割合が激減し、わずかに存在する細胞においても酸性シグナルを示すミトコンドリア数/面積に関して大きな低下を認めることを明らかにした。mt-Keimaシグナルを指標としたマイトファジーの単一細胞レベルでの解析システムの構築により、PARK2だけでなくパーキンソン病全般において、マイトファジー機能不全を従来の方法よりも鋭敏かつ定量的に評価することが可能になると考えられる。