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JSBPJSN2018 Special Seminar
生物化学合同年会2018企画セミナー
SS-1
Appropriate Image Processing Techniques for Researchers
研究者のための画像処理 - 画像不正を疑われない画像処理 -

Kojo Kei H.(湖城 恵)1,2
1LPixel Inc. Co-Founder
2Sophia University JSPS (PD)

 顕微鏡の技術革新および計算機の処理速度の向上により、生命科学研究における画像データ量が増加し続けている。厳密に言えば、原画像それ自体は生物画像データではなく、原画像中にはノイズやバイアスが必ず含まれている。これらノイズやバイアスを除去し、研究データを作成するために画像処理技術は欠かすことができない。
 2000年代の前半に、画像データのデジタル化および画像処理ソフトウェアの普及によって研究者個人でも気軽に画像処理が施せるようになった。それに伴い、画像の使い回しや改ざん等、画像不正と呼ばれる研究不正の頻度も増加している。自身の研究論文・実験を画像不正と疑われないためには、施すべき画像処理、および施してはいけない画像処理を認識する必要がある。
 本講演では、画像不正を疑われないための画像処理技術を紹介する。まずは、生命科学研究における画像処理の意義を説明するとともに、演者が100箇所以上の研究機関で行なった画像処理セミナーおよびアンケート調査結果について紹介する。続いて、2004年に定められたJournal of Cell Biology誌の投稿規程を始め、各学術雑誌の定めた投稿規程および画像処理ガイドライン、画像不正を含む論文掲載を避けるために独自に行なっている取り組みを紹介する。加えて、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)およびエルピクセル株式会社により作成された画像処理規範について紹介する。また、不正な画像処理が施された画像の検出をサポートするためのソフトウェアについて解説する。最後に、実際の生物画像および画像処理ソフトウェアを用いて、施すべき画像処理・簡単な定量評価手法についてデモを交えて紹介する。これらにより、研究者個人あるいは研究機関組織として取り組むべき画像処理手法、および避けるべき画像処理手法に対する理解を目指す。
 上記の演題内容および最新の取り組みを交え、学術界が組織的に取り組むべき画像不正防止策について議論したい。