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一般口演
神経疾患・その他1
7月7日(金) 8:30-9:30 Room E
2O①-1
最進行期ハンチントン病症例ー通常症例との比較
Case of Advanced Huntington's disease-compared with usual cases

長谷川 一子, 柳下 三郎, 川浪 文, 市川 ツワ
国立病院機構相模原病院
Kazuko Hasegawa, Saburo Yaghisita, Aya Kawanami, Tsuwa Ichikawa
NHO Sagamihara National Hospital

"目的:我が国ハンチントン病Huntington’s disease(以下HD)のCAGリピート数は40台が多く,重症度との関連は明らかではない.CAGリピート数47/19症例について剖検の機会を得,終末期といえる病理像を得,通常のHD9症例を参照し報告する.症例;X-20年巧緻障害と不随意運動で発症,家族歴からHDが疑われ遺伝子診断により確定診断.X-19年に当院受診し,舞踏運動,ミオクローヌス,巧緻障害,運動持続困難を認め,以後継続診療となった.X-16年歩行困難,X-12年経口摂取困難となり胃瘻造設.X-10年頃から全身痙攣が頻発し,次第にコントロール困難となった.X年死亡(51歳).病理所見:脳重960g肉眼所見:著明な水頭症とびまん性萎縮を認め,尾状核および他の大脳基底核の顕著な変性と萎縮あり,個々の諸核の判別が困難.大脳皮質・白質の希薄化を認めた.顕微鏡所見:1.嗅神経,視策,黒質など脳幹諸核,小脳には明らかな変性を認めない.2.大脳皮質:病理変化は前頭葉≒後頭葉>帯状回>側頭葉>島の順に強度.大脳皮質の神経細胞の変性と脱落,一部で海綿状,アストロサイトシスを認める.アンモン核はほぼ正常.3.尾状核,被殻の神経細胞はほぼ完全に消失し,グリア瘢痕化.視床では内側核群に神経細胞の高度の萎縮脱落とグリオーシス.視床下核は識別不可.結論:循環障害,他の疾患の合併,痙攣発作の影響の所見がない進行期HDで,尾状核のみならず大脳基底核,視床,大脳皮質に高度の神経細胞脱落とグリオーシスを認めた貴重な症例と考え報告した.本症例は罹病期間,リピート数とも我が国の平均であった.病状の差異につき,他の自験9症例と対比しつつ報告する."
7月7日(金) 8:30-9:30 Room E
2O①-2
上小脳脚の萎縮に左右差を呈する進行性核上性麻痺の病理学的特徴
Pathological features of progressive supranuclear palsy with asymmetrical atrophy of the superior cerebellar peduncle

古泉 龍一1,2, 赤木 明生1, 陸 雄一1, 宮原 弘明1, 曽根 淳1, 田中 章景2, 吉田 眞理1, 岩崎 靖1
1. 愛知医大 加齢研, 2. 横浜市立大学 神経内科学・脳卒中医学
Ryuichi Koizumi1,2, Akio Akagi1, Yuichi Riku1, Hiroaki Miyahara1, Jun Sone1, Fumiaki Tanaka2, Mari Yoshida1, Yasushi Iwasaki1
1. Dept. of Neuropathol., Univ. of AMU, Nagakute, Japan

【目的】進行性核上性麻痺 (PSP) で上小脳脚が萎縮することが知られている。また、ギラン・モラレ三角の神経解剖と一致して上小脳脚が非対称性に萎縮し、小脳遠心系に一致して変性が見られるPSP症例も報告されている。本研究ではブレインバンクの連続剖検例から、非対称な上小脳脚萎縮とギラン・モラレ三角の変性を伴うPSP症例を特定することを目的とした。【方法】神経病理学的にPSPと診断された48例を解析して、上小脳脚を含む脳病変の臨床病理学的な非対称性を調査した。両側の上小脳脚のうち、幅が狭い方を萎縮側、幅が広い方を非萎縮側と定義した。萎縮側に対する非萎縮側の上小脳脚の幅が2倍以上であれば非対称な上小脳脚萎縮群に、2倍未満であれば対称な上小脳脚群に振り分けた。神経細胞の脱落、萎縮/髄鞘淡明化、タウ病理の程度を3段階で半定量的に評価し、両群間で比較した。【結果】非対称な上小脳脚萎縮群は、48 例中 7 例 (14.6%) であった。両群間で上小脳脚の非萎縮側の幅に有意差はなかったが、萎縮側の幅は非対称な上小脳脚萎縮群で有意に小さかった (0.5 mm vs 0.9 mm, p = 0.0146)。臨床症候の非対称性は両群間で有意差は無かった。非対称な上小脳脚萎縮群で、上小脳脚の萎縮側は小脳歯状核におけるタウ病理の優位側に対応していたが、赤核における髄鞘淡明化とタウ病理および中心被蓋路と下オリーブ核におけるタウ病理の優位側とは反対側であった。【結論】PSPでは上小脳脚の萎縮に左右差を呈する症例が存在する。PSPでは、ギラン・モラレ三角の神経解剖と一致して、非対称に病変が広がる可能性がある。
7月7日(金) 8:30-9:30 Room E
2O①-3
原発性側索硬化症の臨床像を呈した進行性核上性麻痺の一例
A progressive supranuclear palsy patient presenting with primary lateral sclerosis

古泉 龍一1, 齋藤 由扶子2, 赤木 明生1, 陸 雄一1, 宮原 弘明1, 曽根 淳1, 吉田 眞理1, 岩崎 靖1, 饗場 郁子2
1. 愛知医大 加齢研, 2. 東名古屋病院 脳神経内科
Ryuichi Koizumi1, Yufuko Saito2, Akio Akagi1, Yuichi Riku1, Hiroaki Miyahara1, Jun Sone1, Mari Yoshida1, Yasushi Iwasaki1, Ikuko Aiba2
1. Dept. of Neuropathol., Univ. of AMU, Nagakute, Japan

【症例】死亡時75歳女性。【現病歴】X年に構音障害と転倒傾向で発症した。X+8年に重度の構音障害で発語できず、嚥下障害で経管栄養となったため、A病院を受診した。神経学的所見では、四肢麻痺、錐体路徴候があり、眼球運動に制限はなかった。以上から原発性側索硬化症 (PLS) と臨床診断された。X+11年に、肺炎で死亡した。【病理所見】神経病理学的診断は進行性核上性麻痺 (PSP) であった。脳重量は1250g。肉眼所見は、弁蓋部、中心前回、海馬傍回が萎縮し、大脳基底核、小脳に異常はなく、黒質の褪色は軽度であった。組織学的には、Betz巨細胞が軽度に脱落し、弁蓋部を含む前頭葉、中心前回に高度の4リピートタウ陽性のtufted astrocyte、coiled body、神経原線維変化を認めた。脊髄では皮質脊髄路の髄鞘淡明化が見られた。淡蒼球、黒質、視床下核の病変は軽度であった。加齢性変化は、NFT Braak/AT-8 Stage 4, Aβ Thal Phase 4、CERAD: frequent/C、NIA-AA: intermediate、嗜銀顆粒のSaito Stage 0.5であった。【考察】PLSの背景病理として筋萎縮性側索硬化症、globular glial tauopathy、 PSPが報告されている。PSP-PLSはMDS-PSP criteriaには無いが、近年注目されている一亜型である。PSPの運動ニューロン系の病理として、皮質脊髄路の髄鞘淡明化、中心前回のtufted astrocyteが報告されており、本症例と類似していた。
7月7日(金) 8:30-9:30 Room E
2O①-4
Multilayered neuronal disorders caused by derepression of LINE-1 during the course of neurodegeneration
高橋 文緒, 山村 隆, 大木 伸司
国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 免疫研究部
Fumio Takahashi, Takashi Yamamura, Shinji Oki
Dept. of immunology., NCNP, Tokyo, Japan

Although the pathogenesis of neurodegeneration is still enigmatic, we have previously shown that an aberrant immune response may be involved in the propagation of such neuronal cell death, where neurons were damaged by neurotoxic Eomes+ Th cells after recognition of ORF1 antigen(s) derived from retrotransposon, L1. Accordingly, derepression of neuronal L1 is apparent in animal models of ALS/AD, in which abnormal cell cycle progression plays a pivotal role. Recently, L1 is shown to prioritize the replication fork as a target site for retrotransposition, whereas DNA repair proteins, including Brca1 and Fancd2, are protective. So, postmitotic neurons lacking cell division-based DNA repair systems may be more susceptible to such L1 attack leading to primary cell death. Here, we reveal that Brca1 and Fancd2 were selectively upregulated in S-G2/M phase in normal neurons, but not in 5xFAD neurons. Retrotransposition-free neurons express higher Brca1 than those that had experienced L1 attack. Importantly, we have identified a key molecule responsible for the selective Brca1 expression. These results suggest that normal neurons in S-G2M phase are protected from L1 attack by expressing Brca1 and Fancd2, whereas 5xFAD neurons lose their DNA protective properties, allowing a higher rate of retrotransposition and primary neuronal cell death leading to immune-mediated neurodegeneration.