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一般口演
ブレインバンク1
7月7日(金) 9:50-10:20 Room E
2O②-1
レビー小体病の臨床神経病理学的検討 ―名古屋大学精神科コンソーシアムブレインバンク連続剖検例から―
Lewy body disease in psychiatric hospitals: a clinical and neuropathological study

竹田 和弘1,2, 藤城 弘樹1, 荒深 周生1,2, 鳥居 洋太1, 関口 裕孝3, 三輪 綾子4, 羽渕 知可子5, 吉田 眞理2, 岩崎 靖2, 入谷 修司1,3,4,5
1. 名古屋大学大学院医学系研究科 精神医学分野, 2. 愛知医科大学加齢医科学研究所, 3. 桶狭間病院藤田こころケアセンター附属脳研究所, 4. もりやま総合心療病院, 5. 愛知県精神医療センター
Kazuhiro Takeda1,2, Hiroshige Fujishiro1, Shusei Arafuka1,2, Youta Torii1, Hirotaka Sekiguchi3, Ayako Miwa4, Chikako Habuchi5, Mari Yoshida2, Yasushi Iwasaki2, Shuji Iritani1,3,4,5
1. Dept. of Psychiatry., Univ. of Nagoya, Nagoya, Japan, 2. Institute for Medical Science of Aging, Aichi Medical University, 3. Okehazama Hospital Fujita Kokoro Care Center, 4. Moriyama General Mental Hospital, 5. Aichi Psychiatric Medical Center

【目的】レビー小体病は、病初期に多様な精神神経症状を呈し、その病理学的背景の詳細は十分に解明されていない。今回、精神科ブレインバンクの症例を対象として、レビー小体型認知症(DLB)病理診断基準を用いて、初発症状に注目して臨床神経病理学的検討を行った。【方法】2004年から2022年に名古屋大学精神科コンソーシアムブレインバンクに保存された連続剖検139症例から、50歳以降に初発し、DLB病理学的診断基準を満たす29症例を抽出し、アルコール関連精神障害の3症例を除外し、26症例を検討した。黒質の神経細胞脱落に関しては、none, mild, moderate, severeの半定量評価を用いた。【結果】DLB病理学的診断基準に従い、High-likelihood群に7例、Intermediate-likelihood群に5例、Low-likelihood群に14例がカテゴリー分類された。黒質の神経細胞脱落はnoneからsevereまで多様であった。likelihood病理分類と初発症状の関係では、精神症状主体が初発症状となる割合が、Intermediate-/Low-likelihood 群の16% (3/19)に比較して、High-likelihood 群が57% (4/7)と高かった。一方、Intermediate-/Low-likelihood 群の初発症状は、認知機能低下が主体であった。【考察】精神科ブレインバンクのHigh-likelihood 群の半数以上では、初発症状として精神症状を呈し、黒質の神経細胞脱落が軽度な症例を認めた。また、アルツハイマー病理が高度になると初発症状が認知機能低下となる傾向が示された。【結論】黒質の神経細胞脱落とアルツイハイマー病理の程度が、レビー小体病の初発症状の特徴に影響していることが推測された。精神科医療を必要とした剖検は少なく、更なる臨床神経病理学的検討が必要である。
7月7日(金) 9:50-10:20 Room E
2O②-2
中枢神経領域の解剖における困難な場面とその対処
Difficult situations in the autopsy of the central nervous system and their possible solutions

水谷 真志1,2, 佐野 輝典1,2, 若林 僚1, 山口 修那1, 臼倉 絵美1, 大平 雅之1,2, 高尾 昌樹1,2
1. 国立精神・神経医療研究センター病院臨床検査部, 2. 国立精神・神経医療研究センター病院総合内科
Masashi Mizutani1,2, Terunori Sano1,2, Ryo Wakabayashi1, Shuna Yamaguchi1, Emi Usukura1, Masayuki Ohira1,2, Masaki Takao1,2
1. Department of Laboratory Medicine, National Center Hsopital, National Center of Neurology and Psychiatry, 2. Department of Internal Medicine, National Center Hsopital, National Center of Neurology and Psychiatry

【背景】病理解剖は古くから実施され、その手順や手技は現代では概ね確立している。しかし、実際の解剖の現場ではイレギュラーな症例に遭遇しトラブルが生じることも少なくない。年間解剖数が本邦全体で減少傾向にある中、解剖に対する患者及び家族の心証を向上していくためにもこうした事態への対処法は共有し集積されるべきである。【方法】解剖時に遭遇しうる困難な状況等について、その後行うべき対策、防止策を検討する。【結果】1.閉創時微量の血液が漏出し続け、閉創不能となる場合。頭頚部のみの解剖例に多い。漏出源として下大脳静脈の分岐部より出血することがあり、後頚部のマッサージ及び胸腹部・下肢の挙上によって脱血し静脈内に乾燥材を押し詰め閉創に成功することがある。2.頭部の浮腫が強く、縫合時に脂肪も皮膚も避けてしまい閉創困難となる場合。縫合時に腱膜、少量の脂肪、皮膚を貫通するよう運針すると耐久性が上がり閉創に成功することがある。3.胸腹部を切開せずに脊髄を取り出す場合。遺族より胸腹部は解剖しないよう希望があった際、頭部及び背部からのアプローチで脊髄を摘出することができる。【考察】病理解剖時に遭遇する困難な場面と、行う対処法について当院での経験を元に検討した。こうした場面は決して珍しいものではなく、今後も遭遇する可能性がある。本邦全体で対処法を共有し、集積していくことが望ましい。
7月7日(金) 9:50-10:20 Room E
2O②-3
ブレインバンクリソースの質を規定する因子の検討
Examination of Factors Determining the Quality of Brain Bank Resources

齊藤 祐子1, 宮下 哲典2, 池内 健2, 松原 知康1, 新井 冨生1, 村山 繁雄1,3
1. 東京都健康長寿医療センター, 2. 新潟大学脳研究所, 3. 大阪大学大学院連合小児発達学研究科附属子どものこころの分子制御機構研究センター ブレインバンク・バイオリソース部門・医学系大学院神経内科学
Yuko Saito1, Akinori Miyashita2, Takeshi Ikeuchi2, Tomoyasu Matsubara1, Tomio Arai1, Shigeo Murayama1,3
1. Examination of Factors Determining the Quality of Brain Bank Resources, 2. Brain Reseach Instit, Univ. Niigata, 3. United Graduate School of Child Development, Osaka Univ., Osaka, Japan

【目的】リソースの質の担保を行う努力をすることは、ブレインバンク活動を運営するうえで重要な課題のひとつである。質を規定する因子について検討した。【対象】2002年度から2008年度に施行された開頭剖検例785例のうち、死亡から霊安室に安置されるまでの時間の記録が判明している387例を対象とした。【方法】全例において、RNAのintegrity numberを剖検時に採取し、凍結した第二前頭回皮質において測定し、質の指標とした(RIN値)。そして、安置までの時間、死後時間、死亡前の状況(感染症による高熱の有無、死亡前の循環動態、蘇生の有無やその時間等)がどのように関わっているかを検討した。【結果】死後時間とRIN値との相関は認められなかった。安置までの時間についても同様の結果であった。両者が短いのにもかかわらず、RIN値が低い症例では敗血症や長時間の蘇生等の影響が大きかった。【結論】いずれの場合でも、バンクの運営する立場としては、御遺族への礼節を欠かないことを優先しつつ、なるべく早く安置するようアレンジすべきと考えられた。