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一般ポスター
基礎・関連技術2
7月6日(木) 13:20-13:40 ポスター会場①
1P⑥-1
脳虚血による軸索障害の分布はヘルニアによって脳虚血の病変初発部位から離れた領域に拡大する
Expanded ischemic lesion due to herniation leads to axonal injury in a site remote to the primary lesion of ischemia

関 絵里香1, 小森 隆司2, 新井 信隆1
1. 東京都医学総合研究所 神経病理解析室, 2. 東京都立神経病院 検査科
Erika Seki1, Takashi Komori2, Nobutaka Arai1
1. Lab of Neuropathol., Tokyo met. Inst. of medical science, Tokyo, Japan, 2. Depat. of Lab. Med. and Pathol., Tokyo Met. Neurological Hosp., Tokyo Met. Hosp. Org., Tokyo, Japan

【目的】脳虚血は,病変初発部位のみならず,そこから離れた部位においても軸索損傷を引き起こす可能性がある。本研究では,脳虚血の急性期において,ヘルニアが病変初発部位から離れた部位の軸索損傷に及ぼす影響について検討した。
【方法】死後脳(内頚動脈または中大脳動脈領域に急性期の片側脳梗塞を発症した13例と正常対照7例)を用いた。脳梗塞患者の脳組織はヘルニアの有無によりヘルニア群と非ヘルニア群に分類した。そして,病変初発部位から離れた部位として、ヘルニアによって組織が押される部位を選んだ。脳梗塞巣の対側にある脳梁はMidline shiftによって、また橋上部はuncal herniationによって押されて変形していたため、そこに軸索病変と虚血性変化が存在するかどうかを検討した。
【結果】ヘルニア群では、脳梗塞巣の対側にある脳梁と橋上部にKB染色による白質病変、Iba1免疫組織化学染色によるミクログリアの減少、APP免疫組織化学染色による軸索傷害が検出された。しかし、非ヘルニア群ではこのような所見は見られなかった。
【考察】これらの所見は、ヘルニアが存在する場合に、脳虚血の病変初発部位から離れた部位において、軸索と虚血病変が領域的に重複することを示唆している。我々は、ヘルニアが病変初発部位から離れた部位における軸索および虚血性変化の発生に重要な役割を果たす可能性があると考えている。この結果は、ヘルニアによる虚血性病変の拡大が病変初発部位から離れた部位の軸索損傷につながる可能性を示唆している。
7月6日(木) 13:20-13:40 ポスター会場①
1P⑥-2
新生児敗血症モデルマウスにおける形成期ミクログリアの免疫応答
Immune responses by developing microglia in the premature brain of a mouse model of neonatal sepsis

摂津 黎, 浅野 妃南, 小原 映, 石井 さなえ, 島田 厚良
杏林大学 保健学部 臨床検査技術学科
Rei Settsu, Hinami Asano, Aki Obara, Sanae Hasegawa-Ishii, Atsuyoshi Shimada
Fac. of Health Sciences, Kyorin Univ., Mitaka, Tokyo, Japan

【目的】 早産時の全身性炎症は脳症の危険因子であるが、形成期の脳が全身性炎症に対して行う応答には不明な点が多い。本研究では、髄膜に相当する頭部間葉や脈絡叢などに存在するマクロファージ(Mφ)及び形成途上にあるミクログリアに着目して未熟脳の炎症反応を明らかにしたい。【方法】 生後7日齢のC57BL/6マウスに内毒素(リポ多糖LPS)を0.75mg/kgの用量で単回腹腔内投与し(対照群はsaline)、新生児敗血症モデルを作製した。投与から4,24,48,72時間後に傍矢状断の凍結切片を作製し、HE染色、Iba-1及びIL-1βに対する免疫組織化学染色を施した。大脳皮質、海馬、小脳におけるIba-1陽性領域の合計面積を画像解析装置により測定した。【結果、考察】 頭部間葉では単球/Mφを中心とする単核球が優位であったが、LPS投与4時間後には多核白血球が増加し、大脳皮質では広範に血管内皮細胞が腫大傾向にあった。脳実質には炎症細胞はみられなかった。Iba-1陽性領域の合計面積は、saline,LPSともに脳全体において、4~72時間にかけて継続的に増加した。これは、この時期の未熟脳は頭部間葉Mφを前駆細胞として、脳実質への細胞移動によってミクログリアを形成することを反映している。大脳皮質、海馬のIba-1陽性面積はLPS投与24時間後でsalineと比べて有意に増加し、血管外壁に沿った細胞や血管内腔に接着する細胞が目立った。一方、小脳では24、48時間で有意に増加していた。IL-1βはLPS投与4時間後に頭部間葉、脈絡叢、小脳髄質、大脳髄質のMφ/ミクログリアが発現した。したがって、全身性炎症に即応するミクログリアと脳血管との相互作用が未熟脳に特有の現象と考えられる。
7月6日(木) 13:20-13:40 ポスター会場①
1P⑥-3
脈絡叢上皮細胞におけるGLUT12の局在
Localization of GLUT12 in choroid plexus epithelial cells

若松 敬司, 千葉 陽一, 宮井 由美, 村上 龍太, 松本 晃一, 上野 正樹
香川大学医学部 炎症病理学
Keiji Wakamatsu, Youichi Chiba, Yumi Miyai, Ryuuta Murakami, Kouichi Matsumoto, Masaki Ueno
Dept. of Pathology and Host Defense, Faculty of Medicine, Kagawa Univ, Kagawa

【背景・目的】Vitamin C(VC)は体内でも脳に最も高濃度で存在し、抗酸化作用やエピジェネティック制御など多くの役割を果たしている。血中から脳へのVC輸送機構はこれまで不明であったが、最近Glucose transporter 12(GLUT12)が、SVCT2を介して血中から脈絡叢上皮細胞に取り込まれたVCを髄液中に排出する役割を担っていることが明らかになった1)。しかし、脈絡叢上皮細胞におけるGLUT12 mRNAの発現は報告されているが、蛋白質レベルでの発現と細胞内局在は依然不明である。今回我々は、脈絡叢上皮細胞におけるGLUT12蛋白質の局在を明らかにするため、免疫組織化学的に検討を行った。【方法】ヒト剖検脳およびC3H/Heマウス脳のパラフィン切片を用いて、市販の3種類の抗GLUT12抗体による免疫染色を行った。また、脈絡叢上皮細胞の頂端膜マーカー(Na+/K+-ATPase α、Aquaporin 1)に対する抗体との蛍光免疫二重染色を行った。【結果】ヒト、マウスともにGLUT12の免疫反応性は脈絡叢上皮細胞の頂端膜側に見られた。蛍光免疫二重染色では、GLUT12の陽性像ピークは頂端膜マーカーの陽性像ピークのわずかに細胞質側に存在する傾向が見られた。【考察】脈絡叢上皮内に取り込まれたVCを髄液中へ輸送するGLUT12が、その機能から予想される局在部位であるヒトおよびマウス脈絡叢上皮細胞の頂端膜側に存在することを免疫組織化学的に初めて証明した。GLUT12と頂端膜マーカーとのわずかな局在の違いの形態学的背景について、免疫電顕での解析を行っている。
1)Miyata H et al., Identification of an exporter that regulates vitamin C supply from blood to the brain. iScience 25: 103642, 2022.
7月6日(木) 13:20-13:40 ポスター会場①
1P⑥-4
神経変性疾患におけるTMEM106Bアミロイドの局在
Localization of TMEM106B amyloid in neurodegenerative diseases

大谷 麗子1, 鴻江 真維2, 河上 緒1, 吉田 眞理3, 村山 繁雄4, 野中 隆1, 長谷川 成人1
1. 東京都医学総合研究所 脳・神経科学研究分野, 2. 東京都医学総合研究所 神経病理解析室, 3. 愛知医科大学 加齢医科学研究所, 4. 大阪大学大学院 連合小児発達学研究科
Reiko Ohtani1, Mai Kounoe2, Ito Kawakami1, Mari Yoshida3, Shigeo Murayama4, Takashi Nonaka1, Masato Hasegawa1
1. Department of Brain and Neurosciences, Metropolitan Institute of Medical Science, Tokyo, Japan, 2. Laboratory of Neuropathology, Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science, Tokyo, Japan, 3. Institute for Medical Science of Aging, Aichi Medical University, Aichi, Japan, 4. United Graduate School of Child Development, Osaka University, Osaka, Japan

【目的】最近、リソソーム膜貫通タンパク質のTMEM106Bが様々な神経変性疾患および正常高齢者脳にアミロイド線維として蓄積していることがクライオ電子顕微鏡解析により明らかとなった。TMEM106Bは前頭側頭型認知症のリスクファクターとしても知られているが、その他の神経変性疾患の病態への関与や凝集体の細胞内の局在については十分に検討されていない。本研究では、TMEM106BのC末端残基239-250に対する抗体を作製し、免疫組織化学染色を用いて様々な神経変性疾患におけるTMEM106Bの局在を調べた。【対象と方法(症例)】タウ、αシヌクレイン、TDP-43の蓄積を伴う様々な神経変性疾患のヒト死後脳組織をTMEM106B抗体で免疫染色すると共に、リン酸化タウ、リン酸化αシヌクレイン、リン酸化TDP-43抗体、神経細胞マーカー、グリア細胞マーカーなどでも染色し、関連性を検討した。【結果(病理所見)】作製したTMEM106B抗体によりTMEM106Bアミロイドが観察されたが、タウ、αシヌクレイン、TDP-43タンパク質封入体との明らかな共局在は観察されなかった。細胞種マーカーとの二重染色では、TMEM106Bアミロイドの一部はGFAP陽性アストロサイトとの共局在が確認された。【考察·結論】TMEM106Bアミロイドは様々な神経変性疾患で認められたことから疾患特異性は乏しく、加齢に伴って蓄積する可能性が高いと考えられる。細胞内局在に関しては一部がアストロサイトに局在していたが、今後のさらなる解析が必要である。リソソームの機能障害とタンパク質凝集との関連も指摘されており、疾患や老化におけるTMEM106B凝集の役割を解明したい。