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一般ポスター
タウ1
7月7日(金) 13:50-14:20 ポスター会場①
2P⑥-1
JALPAC登録後に最終診断が確認された剖検例
Autopsy cases with confirmed final diagnosis after JALPAC registration

仙石 錬平1,2, 栗原 正典3, 松原 知康2, 金田 大太4, 瀧川 洋史5, 花島 律子5, 池内 健6, 長谷川 成人7, 岩田 淳3, 齊藤 祐子2, 村山 繁雄2,8
1. 東京慈恵会医科大学附属第三病院 脳神経内科, 2. 東京都健康長寿医療センター 高齢者ブレインバンク, 3. 東京都健康長寿医療センター 脳神経内科, 4. 医療法人さわらび会 福祉村病院 神経病理研究所, 5. 鳥取大学医学部 脳神経内科, 6. 新潟大学 脳研究所, 7. 東京都医学総合研究所 脳・神経科学研究分野, 8. 大阪大学大学院連合小児発達学研究科附属子どもの心の分子制御機構研究センター ブレインバンク
Renpei Sengoku1,2, Masanori Kurihara3, Tomoyasu Matsubara2, Daita Kaneda4, Hiroshi Takigawa5, Ritsuko Hanajima5, Takeshi Ikeuchi6, Masato Hasegawa7, Atsushi Iwata3, Yuko Saito2, Shigeo Murayama2,8
1. Dept. of Neurology, The Jikei Univ. Daisan Hospital, Tokyo, Japan, 2. BBAR, Tokyo Metropolitan Insitute for Geriatrics and Gerontology, Tokyo, Japan, 3. Dept. of Neurology, Tokyo Metropolitan Insitute for Geriatrics and Gerontology, Tokyo, Japan, 4. Institute of Neuropathology, Fukushimura Hospital, Aichi, Japan, 5. Division of Neurology, Dept. of Brain and Neurosci., Faculty of Med. Tottori Univ., 6. Brain Research Institute, Niigata Univ., 7. Dept. of Brain & Neurosci., Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science, 8. Brain Bank for Neurodevelopmental, Neurological and Psychiatric Disorders, Osaka University

【目的】PSP/CBDの原因究明,治療方法の開発を目的とした多施設共同前向き研究であるJapanese Longitudinal Biomarker Study in Progressive Supranuclear Palsy (PSP) and Cortico Basal Degeneration (CBD)(JALPAC)へ当施設から登録した症例の最終病理診断を明らかにする.【方法】当施設でPSPまたはCBSと臨床診断し,JALPAC参加の同意が得られた連続例中,剖検症例を神経病理学的に臨床診断と比較検討する.【結果】2015年から17年にかけて当施設JALPAC登録症例は10例.登録時平均年齢75.3±5.0歳,女性7例,臨床診断はPSP7例,CBS3例,登録時平均罹病期間4.5±2.6年であった.うち剖検施行は5例.登録時平均年齢78±5.0歳,女性4例,臨床診断は全例がPSP,登録時平均罹病期間5.7±2.8年であった.4例にDaT Scanが実施され,平均Specific Binding Ratio(SBR)値は0.9/0.5と低下,MIBG心筋シンチグラフィーは3例で施行され,H/Mはearly/delayそれぞれ平均2.88/2.78, Washout Ratioの平均値は33.3%であった.死亡時年齢80±5.6歳,死亡時罹病期間7.5±3.4年,死亡原因は4例が誤嚥性肺炎を含む肺炎,1例が不確定なものの気道内分泌ありだった.神経病理診断は全例PSPであり,臨床診断と100%合致していた.遺伝子解析は全例でMAPTに病的バリアントを認めず,Western Blot解析では全例33kDaにバンドを認めた.【結論】当施設JALPAC登録例は,女性が多く,剖検例は非剖検例に比して登録時の年齢が高い傾向にあった.臨床検査を後方視的にみるとSBR値,H/Mともに妥当な結果であった.今回得られた剖検5例は,神経病理学的には典型的なPSPであり,死因も呼吸器系疾患によるものであった.病理学的な最終診断を得ることの重要性が示された.
7月7日(金) 13:50-14:20 ポスター会場①
2P⑥-2
臨床的にPSP-PAGFを呈したPSP-PNLAの一例
An autopsy case of PSP-PAGF/PSP-PNLA

小阪 崇幸1, 津田 幸元1, 高松 孝太郎1, 幸崎 弥之助1, 田北 智裕1, 光山 佳菜子2, 柳田 恵理子2, 村山 寿彦2, 植田 光晴3
1. 熊本医療センター 脳神経内科, 2. 熊本医療センター 病理診断科, 3. 熊本大学 脳神経内科
Takayuki Kosaka1, Yukimoto Tsuda1, Koutaro Takamatsu1, Yanosuke Kouzaki1, Tomohiro Takita1, Kanako Mitsuyama2, Eriko Yanagida2, Toshihiko Murayama2, Mitsuharu Ueda3
1. Dept. of Neurology, Kumamoto Medical Center, Kumamoto, Japan

【はじめに】進行性核上性麻痺(Progressive supranuclear palsy; PSP)は代表的な4リピートタウオパチーであるが、臨床表現型に加え病理組織学的な変性の程度や分布も多様である。
【症例】死亡時、75歳、男性。全経過9年。易転倒性にて発症。発症当初は、すくみ足や寡動が目立つ一方で、四肢の固縮や振戦、眼球運動制限は認めず、抗パーキンソン病薬に対する反応性も不良であった。症状は緩徐に増悪し、次第に垂直性眼球運動制限、開眼失行、頸部固縮を認めるようになり、末期には頸部後屈、四肢固縮、構音障害、嚥下障害を呈し、誤嚥性肺炎で死亡した。最終的な臨床診断は、PSP-PAGF(PSP-Pure Akinesia with Gait Freezing)であった。
【病理所見】脳重1350g。肉眼的に黒質の脱色素調が明らかで、視床下核はスリット状に萎縮していた。組織学的には淡蒼球、黒質、視床下核に強い変性を認める一方で、小脳皮質、小脳歯状核、大脳皮質、中脳被蓋などの変性は軽度であった。抗RD4抗体を用いた免疫染色およびGallyas-Braak染色にて神経原線維変化およびtuft-shaped astrocyte類似の構造物を認めた。病理組織学的にPSP-PNLA(PSP-Pallido-Nigro-Luysian Atrophy)と診断した。
【考察】本例で認められたアストロサイトへのタウの蓄積は、典型的なPSPで認められるtuft-shaped astrocyteとやや異なり、不規則で核近傍に短く太い突起様であった。本例は臨床病理学的にYokoyamaらの提唱したPNLA type 1に相当するPSPの亜型と考えられた(Brain Pathology 26: 155-166, 2016)。
【結論】すくみ足の鑑別を行う際には、発症初期に垂直性眼球運動制限や四肢固縮を認めない場合にもPSPの可能性を考慮に入れる必要がある。
7月7日(金) 13:50-14:20 ポスター会場①
2P⑥-3
嗜銀顆粒性疾患における黒質線条体ドパミン病理の免疫組織学的研究
Immunohistochemical studies of nigrostriatal dopaminergic system in argyrophilic grain disease

荒川 晶1,3, 松原 知康1, 塩谷 彩子1, 織田 麻琴1, 原 愛徒1, 仙石 錬平1, 村山 繁雄1,2, 戸田 達史3, 齊藤 祐子1
1. 東京都健康長寿医療センター 神経病理・高齢者ブレインバンク, 2. 大阪大学大学院連合小児発達学研究科附属子どものこころの分子統御機構研究センター ブレインバンク・バイオリソース部門, 3. 東京大学大学院 医学系研究科 脳神経内科学
Akira Arakawa1,3, Tomoyasu Matsubara1, Ayako Shioya1, Makoto Orita1, Manato Hara1, Renpei Sengoku1, Shigeo Murayama1,2, Tatsushi Toda3, Yuko Saito1
1. Department of Neuropathology (the Brain Bank for Aging Research), Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institution of Gerontology, 2. Molecular Research Center for Children's Mental Development (Brain Bank for Neurodevelopmental, Neurological and Psychiatric Disorders), United Graduate School of Child Development, Osaka University, 3. Department of Neurology, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo

【目的】嗜銀顆粒性疾患(AGD)は、迂回回・扁桃体から側頭葉・前頭葉へと進展する4リピートタウオパチーである。近年認知症に加えパーキンソニズム (PA)を呈し、黒質に嗜銀顆粒病変を認める症例が報告されている。PAの出現の原因として、AGDにおける黒質線条体系ドパミン作動ニューロンの機能低下の可能性を、免疫組織化学的に検討した.【方法】対象はブレインバンク登録例中、PAと認知症を伴うAGD3例(DGP)、.認知症を呈しPAを伴わないAGD3例(DG)、正常対照(NC)3例、Parkinson病(PD)2例、PSP2例の5群とした。評価部位は、黒質を含む脳幹軸位断面、側坐核・線条体前方及び、視床下核・線条体後方を含む大脳冠状断面の3か所とした。用いた抗体は、抗チロシンヒドロキシラーゼ(TH)抗体、抗ドパミントランスポーター(DAT)抗体で、両抗体に対する黒質の陽性細胞密度と線条体の陽性線維密度を半定量的に解析した。【結果】DGP群、DG群は3例ともSaito stageは3であった。黒質を含む脳幹断面では、DGP群では黒質主体に嗜銀顆粒を認めたが、DG群ではリン酸化タウ免疫染色陽性構造物は認めなかった。黒質での陽性細胞密度は、NC群と比較して、PD、PSP群で高度に低下し、DGDは軽度の低下を、DGでは低下は明らかでなかった。線条体陽性線維密度は、側坐核面及び視床下核面でNCと比較しPD、PSP群で高度の低下を、AGD群ではDGDにより強い線維密度低下が見られたが、PD・PSP群と比較して軽度であった。AGD群では側坐核面で視床下核面より密度低下が目立つ傾向があった。【結論】PDやPSPと比較すると軽度にとどまるが、AGDのPAは黒質線条体系ドパミン作動ニューロンの機能低下による可能性が示唆された。
7月7日(金) 13:50-14:20 ポスター会場①
2P⑥-4
相貌認知障害と左無視を呈し皮質下諸核に4リピートタウ蓄積を有したPick病の一例
Pick's disease with subcortical four-repeat tau accumulation showing face recognition impairment and left hemineglect

三木 知子1,2, 横田 修1,2,3, 竹之下 慎太郎1, 石津 秀樹3, 安田 華枝3, 原口 俊4, 寺田 整司1, 高木 学1
1. 岡山大学学術研究院精神神経病態学, 2. きのこエスポアール病院 精神科, 3. 慈圭病院 精神科, 4. 南岡山医療センター 脳神経内科
Tomoko Miki1,2, Osamu Yokota1,2,3, Shintaro Takenoshita1, Hideki Ishizu3, Hanae Yasuda3, Takashi Haraguchi4, Seishi Terada1, Manabu Takaki1
1. Dept. of Neuropsychiat., Okayama Univ. Grad. Sch., Okayama, Japan, 2. Dept. of Psychiat., Kinoko Espoir Hosp., Kasaoka, Japan, 3. Dept. of Psychiat., Okayama, Japan, 4. Dept. of Neurology, NHO Minami-Okayama Med. Center

【目的】Pick病はbvFTDでの初発が多いとされ,相貌認知障害の報告は乏しい.我々は,相貌認知障害で発症し,皮質下諸核に4Rタウ蓄積を伴うPick病の一例を経験したので報告する.
【症例】49才,人の顔がわからない.51才,HDS-R 16点.物の名前が言えない.53才,道を間違える.易怒性.55才,自発性低下. 67才,口唇傾向.左半側無視.69才,左優位の筋強剛,左下肢拘縮.死亡.
【病理】脳重957g.肉眼的に側頭葉,次いで前頭葉の高度萎縮.海馬,扁桃核も高度萎縮.光顕で海馬CA1から側頭葉皮質,眼窩回,直回,下頭頂小葉では全層変性を認め,黒質の神経細胞脱落は高度.海馬歯状回で巣状に顆粒細胞の完全脱落を見る.AT8で球状や馬蹄形の典型的形態のPick小体を扁桃核,海馬から側頭葉皮質,一次運動野を含め前頭葉皮質,皮質下・脳幹諸核,小脳歯状核に認める.分布はIrwinらのphase III.Pick小体は多くがRD3陽性,4R-tau陰性,Bielschowsky銀陽性,Gallyas陰性.しかし一部はGallyas陽性.加えて4R-tau陽性神経細胞内封入体を線条体,視床下核,下オリーブ核,小脳歯状核にも認めた.Ramified astrocyteは海馬から側頭葉,前頭葉皮質,皮質下諸核にあり.Gallyas陽性や4R tau陽性のアストロサイト病変も少数あり.Braak NFT stage II,Saito AGD stage I.Aβ,TDP-43,FUS病理,astrocytic plaque,tufted astrocyteなし.
【考察】経過中に相貌認知障害や半側無視を呈する例でもPick病は否定できないと考えられた.4R tau蓄積を皮質下諸核に認める例は以前も経験したが[1],形態特徴が既知の4R tauopathyに合致せずその意義は不明である.1) Ikeda C. Neuropathology 2017;37:544.
7月7日(金) 13:50-14:20 ポスター会場①
2P⑥-5
嗜銀顆粒性認知症の一純粋例
An autopsy case of pure argyrophilic grain disease

後藤 良司1, 栗原 正典1, 原 愛徒3, 荒川 晶3, 松原 知康3, 岩田 淳1, 新井 冨生4, 村山 繁雄3,5, 齊藤 祐子3
1. 東京都健康長寿医療センター 脳神経内科, 2. 東京大学医学部附属病院 脳神経内科, 3. 東京都健康長寿医療センター 高齢者ブレインバンク, 4. 東京都健康長寿医療センター 病理診断科, 5. 大阪大学大学院連合小児発達学研究科ブレインバンク・バイオリソース部門
Ryoji Goto1, Masanori Kurihara1, Manato Hara3, Akira Arakawa3, Tomoyasu Matsubara3, Atsushi Iwata1, Tomio Arai4, Shigeo Murayama3,5, Yuko Saito3
1. Dept. of Neurol., Tokyo Metropolitan Geriatric Hosp., Tokyo, Japan, 2. Dept. of Neurol., The Univ. of Tokyo Hosp., Tokyo, Japan, 3. Dept. of Neuropathol. (the Brain Bank for Aging Research), Tokyo Metropolitan Geriatric Hosp. and Institute of Gerontology, Tokyo, Japan, 4. Dept. of Pathol., Tokyo Metropolitan Geriatric Hosp., Tokyo, Japan, 5. United Graduate School of Child Development, Osaka Univ., Osaka, Japan

【症例】死亡時85歳男性.75歳時から物忘れを指摘された.78歳時から頭部MRIで側頭葉内側の左優位の萎縮を認めた.80歳時から易怒性が見られた.84歳時から物忘れが進行し抑うつ傾向になり,また肺炎を繰り返すようになり,85歳時には嚥下性肺炎を契機として死亡した.(全経過10年)
【病理所見】脳重は1,283g.やや左側優位に側頭葉内側の萎縮が見られ,扁桃体で高度であった.組織学的に,迂回回・扁桃体には,少数の腫大神経細胞を伴いグリオーシスを認めた.Gallyas鍍銀染色,リン酸化タウ,4リピートタウ免疫染色で,同部に嗜銀顆粒を認めた.他に左では嗅内野,側頭極,側坐核,紡錘状回,前帯状回,島皮質,中隔に広がり,pretangles,bush-like astrocytesを伴ったが,右は軽度であった.他の老年性変化は,Braak NFT stage: 2/2, AT8 stage: 2/2と神経原線維変化は軽度にとどまった.Amyloid β, リン酸化α-synuclein, リン酸化TDP-43の沈着はなかった.
【考察】純粋例と考えられる左優位嗜銀顆粒性認知症を経験した.当ブレインバンク登録例2568例中陽性例は1144例で,うち純粋Saito Stage3例は59例である.
7月7日(金) 13:50-14:20 ポスター会場①
2P⑥-6
大脳皮質基底核変性症(CBD)における下オリーブ核病変の病理学的検討
Neuropathological study of the inferior olivary nucleus of Corticobasal degeneration

田原 大資, 赤木 明生, 陸 雄一, 曽根 淳, 宮原 弘明, 吉田 眞理, 岩崎 靖
愛知医科大学 加齢医科学研究所
Daisuke Tahara, Akio Akagi, Yuichi Riku, Jun Sone, Hiroaki Miyahara, Mari Yoshida, Yasushi Iwasaki
Department of Neuropathology, Institute for Medical Science of Aging, Aichi Medical University, Nagakute, Japan

【目的】CBDの下オリーブ核病変について病理学的に検討する。【対象と方法】1993年から2020年にかけて当施設で病理学的に診断したCBD症例で両側の下オリーブ核の評価が可能なものを対象とし、下オリーブ核の肥大、細胞脱落、グリオーシス、嗜銀性構造物、門と外套の変性を検討した。また脳重量、臨床病型、罹病期間を検討した。臨床病型はArmstrongらの診断基準によった。【結果】対象数は29例で、下オリーブ核に肥大を認める症例は14例(48.3%)だった。14例中4例(28.6%)は高度に肥大していた。14例中8例(57.1%)に左右差を認めた。15例では肥大は明らかでなかった。脳重量は、肥大群で平均1029±125.8 g(770 g~1280 g)、非肥大群で1192±107.8 g(975~1400 g)(p=0.003)だった。罹病期間は、肥大群で平均7.9±2.6年(3.5年~12年、1例で不明)、非肥大群で平均4.5±1.5年(2.5年~7年、1例で不明)(p=0.001)だった。臨床病型は、肥大群でprobable corticobasal syndrome(CBS)2例、possible CBS1例、前頭葉性行動空間症候群(FBS)1例、原発性進行性失語非流暢性/失文法型1例、進行性核上性麻痺症候群(PSPs)8例、不明1例だった。非肥大群では、possible CBS3例、FBS2例、PSPs7例、分類不能2例、不明1例だった。【考察】下オリーブ核の肥大は歯状核赤核路または赤核オリーブ路の障害により起こるとされ、原因は脳血管障害が多い。本研究ではこれらの神経路に脳血管障害などは認められずCBDに関連した肥大と考える。CBDでの下オリーブ核肥大の既報告は少ないが、稀でない現象であると考える。【結論】CBDにおいて下オリーブ核肥大を呈す症例が存在し、左右差を認めることがある。