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一般ポスター
老化、アルツハイマー病
7月7日(金) 13:50-14:05 ポスター会場②
2P⑬-1
PSEN1_p.L392Vの2剖検例
Two autopsy cases with PSEN1_p.L392V

西田 尚樹, 畑 由紀子, 一萬田 正二郎, 吉田 幸司
富山大学 法医学
Naoki Nishida, Yukiko Hata, Syojiro Ichimata, Koji Yoshida
Dept. of Legal Medicine, University of Toyama, Toyama, Japan

[[はじめに] PSEN1の病的変異による家族性Alzheimer’s disease (AD)の未発症キャリアーおよび病初期例の剖検例の報告は少ない.[症例] 症例1: 57才,男性.冬期の某日,テナントビル内で死亡しているのを発見.死因は低体温症で,徘徊中帰宅困難に関連したと思慮された.52歳時に若年性アルツハイマー型認知症と診断, HDSーRは19/30点.54歳時のMMSEは20/30点.夜間の大声,ゴミ収集癖,近所とのトラブルなどの異常行動が出現した.症例2:死亡時49歳男性.症例1の弟である.死因は溺水吸引による窒息で,直前の行動等から最終的に自殺と判断された.周囲関係者からの聴取では経済苦で抑うつ状態になっていたと考えられるものの,認知機能障害を示唆するエピソードは得られなかった.両名ともに,PSEN1_p.L392Vを認めた.[病理所見] 脳重量は,症例1: 1494 g, 症例2: 1596 g.症例1では,側脳室下角の開大,内側側頭葉,特に海馬の萎縮および中脳黒質の軽度色素脱出を認め,組織学的に大脳辺縁系の神経細胞脱落,CERAD C, Thal stage 5のneuritic plaque (NP)を認めた.Neurofibrillary tangle (NFT)はBraak stage 5であった.症例2は海馬の軽度萎縮と側頭室下角の開大を認めるが,神経細胞脱落は明らかではない.NPは症例1とほぼ同様の量,分布であるが, NFT stageは4,出現量は症例1より少ない.両例ともにα-synucliein, TDP-43は陰性.[考察] 両例はPSEN1関連の家族性ADで,症例1;進行例,症例2;未発症から超病初期と考えられた.両者の神経病理学的相違点として,神経細胞脱落の有無,大脳皮質内のNFT量,進展範囲があり,PSEN1関連ADの症状発現に重要な因子となっていることが示唆された.
7月7日(金) 13:50-14:05 ポスター会場②
2P⑬-2
高度なアルツハイマー病理を認めたダウン症候群の一例
A case of Down's syndrome with advanced Alzheimer's disease pathology

小渡 貴司1, 松原 知康2, 寺田 達弘1,3, 松平 敬史1,3, 高嶋 浩嗣1,3, 川口 典彦1, 齊藤 祐子2, 村山 繁雄2,4, 小尾 智一1
1. NHO静岡てんかん・神経医療センター 脳神経内科, 2. 東京都健康長寿医療センター 神経病理(高齢者ブレインバンク), 3. 浜松医科大学 光尖端医学教育研究センター フォトニクス医学研究部 生体機能イメージング研究室, 4. 大阪大学大学院連合小児発達学研究科附属子どもの心の分子制御機構研究センター ブレインバンク・バイオリソース部門・医学系研究科神経内科学
Takashi Odo1, Tomoyasu Matsubara2, Tatsuhiro Terada1,3, Takashi Matsudaira1,3, Hirotsugu Takashima1,3, Norihiko Kawaguchi1, Yuuko Saito2, Shigeo Murayama2,4, Tomokazu Obi1
1. Department of Neurology, Shizuoka Institute of Epilepsy and Neurological Disorders, 2. Department of Neuropathology (the Brain Bank for Aging Research), Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology, 3. Department of Biofunctional Imaging, Preeminent Medical Photonics Education & Research Center, Hamamatsu University School of Medicine, 4. Brain Bank for Neurodevelopmental, Neurological and Psychiatric Disorders, United Graduate School of Child Development and Department of Neurology, Graduate School of Medicine, Osaka University

【症例】死亡時57歳男性。生下時にダウン症候群と診断された。50歳、後方に転倒する。失禁するようになった。51歳、介助歩行となった。発語がなくなりジェスチャーで意思を伝えた。全身性の強直間代発作あり。52歳、歩行不能となり四肢にミオクローヌス出現。53歳、寝たきりとなった。MRIでは脳室拡大を伴う全大脳萎縮。脳波ではθ波が主体でミオクローヌスに一致した高振幅棘波あり。嚥下困難のため胃瘻より経管栄養を行っていたが57歳時に心肺停止となり死亡した。【病理所見】固定前脳重は710g。肉眼的に大脳の広範な萎縮を認め、特に側頭葉で高度であった。小脳も萎縮し、脳幹では黒質・青斑核の脱色素を認めた。組織学的に、抗アミロイドβ抗体で大脳皮質に広範かつ豊富に老人斑を認め、中心前回にも充満していた。小脳皮質にも豊富なアミロイドβの沈着を認めた。抗リン酸化タウ免疫染色およびGallyas染色で大脳皮質に広範かつ豊富に神経原線維変化とneuropil threadsを認めた。特に海馬ではアンモン角全域にわたって神経細胞脱落が目立ち、ghost tanglesが充満していた。神経原線維変化は中心前回や視覚領でも豊富に見られた。合併病理として、リン酸化αシヌクレイン陽性封入体の蓄積を脳幹、辺縁系、大脳新皮質にわたり認めた。抗リン酸化TDP43抗体免疫染色で扁桃体にごく少数の神経細胞内陽性所見を認めた。【考察・結論】長期経過のダウン症候群の一剖検例。アルツハイマー病理は、老人班・神経原線維変化とも高度でステージ分類では全て最高ステージに達していた。合併病理として高度なLewy小体αシヌクレイノパチーと軽微ながらもTDP43病理も伴っていた。
7月7日(金) 13:50-14:05 ポスター会場②
2P⑬-3
家族性認知症が疑われ、生前ブレインバンクに登録していた死亡時96歳女性の一剖検例
An autopsy case of a 96-year-old woman with suspected familial dementia

紀乃 正志1, 松原 知康4, 城 妃咲3, 喜多 誠2, 高場 啓太2, 濱田 康弘2, 川北 梨愛2, 野中 和香子2, 高田 忠幸2, 鎌田 正紀1, 斎藤 裕子4, 村山 繁雄4,5
1. 香川大学医学部 神経難病講座, 2. 香川大学医学部附属病院 消化器脳神経内科, 3. 国立病院機構 高松医療センター, 4. 東京都健康長寿医療センター 高齢者バイオリソースセンター・高齢者ブレインバンク, 5. 大阪大学大学院連合小児発達科学研究科附属子どものこころの分子統御機構研究センター ブレインバンク・バイオリソース部門
Masashi Kino1, Tomoyasu Matsubara4, Kisaki Tachi3, Makoto Kita2, Keita Takaba2, Yasuhiro Hamada2, Rie Kawakita2, Wakako Nonaka2, Tadayuki Takata2, Masaki Kamata1, Yuko Saito4, Shigeo Murayama4,5
1. Intractable Neurological Diseases of Faculty of Medicine, Kagawa Univ.

【症例】死亡時96歳女性。74歳:被毒妄想を認め精神科に入院、1年半後に退院し精神状態は安定していた。80歳:物忘れ、道に迷う等の症状が悪化。81歳:当院精神科を受診、HDSR13点、脳血流SPECTで頭頂葉や側頭葉、後部帯状回の血流低下は明らかではなく、左半球優位に血流低下を認めた。以降は詳細不明。85歳:顔面けいれんで近医に救急搬送、頭部造影MRIで左前頭葉に結節状の造影効果を伴う病変を認めたが、精査は行わず経過観察、3か月後病変は消失。91歳:意識消失発作を数回生じ精査目的で当院当科紹介。ADLは寝たきりで、単語程度の発語はあるが意思疎通は困難であった。93歳:発語はなく、誤嚥性肺炎を繰り返し、経口摂取が困難で胃管栄養となった。以降は感染症を繰り返すも小康状態で経過。96歳:誤嚥性肺炎を契機に全身状態が悪化し死亡。【家族歴】血族婚あり。甥が64歳で認知症と診断、74歳で死亡。神経病理でレビー小体病、アルツハイマー病、TDP-43proteinopathy合併と診断。【神経病理診断】脳重870g。肉眼的に扁桃体・海馬の高度萎縮と褐色調変化、大脳新皮質の萎縮、左被殻と淡蒼球外節の線状色調変化を認めた。組織学的に前頭葉から後頭葉までの大脳新皮質に多数の老人斑、抗amyloid β抗体免疫染色でcored plaquesを主体として多数のplaquesを認め、固有海馬内および中心前回にも多数のplaquesを認めた。海馬ではCA1から海馬支脚にかけて高度の神経細胞脱落を認め、ghost tangleが充満、Alzheimer病と診断した。TDP-43病理を扁桃体に限局的に認めた。【考察】家族性認知症が疑われたが病理所見は異なり遺伝性の認知症は否定的であった。病理で診断することが重要であると考えられた。