TOP一般ポスター
 
一般ポスター
末梢神経
7月7日(金) 14:20-14:45 ポスター会場②
2P⑯-1
パチシランを投与した遺伝性ATTRアミロイドーシスの1剖検例
An autopsy case of ATTRv amyloidosis treated with patisiran

別宮 豪一1, 米延 友希1, 河井 真季子2, 池中 建介1, 大薗 達彦1, 島田 勇毅1, 山下 里佳1, 森井 英一2, 村山 繁雄1,3,4, 望月 秀樹1
1. 大阪大学 神経内科, 2. 大阪大学 病態病理学, 3. 大阪大学 連合小児発達学, 4. 東京都健康長寿 高齢者ブレインバンク
Goichi Beck1, Yuki Yonenobu1, Makiko Kawai2, Kensuke Ikenaka1, Tatsuhiko Ozono1, Yuki Shimada1, Rika Yamashita1, Eiichi Morii2, Shigeo Murayama1,3,4, Hideki Mochizuki1
1. Dept. of Neurol., Osaka Univ.

【症例】死亡時77歳男性【家族歴】兄、姉が同症と診断。母親が岡山県出身。【現病歴】死亡11年前から起立性低血圧が出現。5年後より進行性の四肢遠位部筋力低下・筋萎縮・感覚障害、ならびに下痢も出現。浅腓骨神経生検では神経束近傍の血管壁にアミロイドの沈着を認めた。遺伝子検査にて、兄姉と同じくTTR c.241G>A p.E81K(E61K)heterozygote変異が判明。死亡2年前よりパチシラン(siRNA製剤)の投与を開始、下痢のみ改善。77歳時、誤嚥性肺炎を契機とした呼吸不全にて死去。死後42時間26分にて解剖。【病理所見】固定前脳重は1354g。固定後の割面では左頭頂葉に皮質梗塞が見られたほかは、肉眼的に明らかな異常所見なし。組織学的には、Congo red染色ならびにTTR免疫染色にて交感神経節に高度の、後根神経節、横隔神経、横隔膜、舌等に中等度のアミロイド沈着を認めた。硬膜や脈絡叢の血管壁にも軽度のアミロイド沈着が見られた。一方で、中枢神経にはアミロイドの沈着は見られなかった。全身臓器においても、心臓をはじめ、肺、大動脈、消化管、肝臓内血管周囲、胆嚢、膵臓、腎臓、膀胱、前立腺、精巣、甲状腺、副腎など非常に広範なアミロイド沈着を認めた。一方で、肝細胞内のTTR染色性は低下が見られた。【考察】進行期にパチシランを投与した症例で、全身臓器に著明なアミロイド沈着が見られた。本疾患の早期診断・治療開始の重要性を示す症例と考えられた。なお、本例の肝臓においては血管周囲にのみアミロイド沈着が目立ち、肝細胞内のTTR染色は低下していたことは、パチシランの薬理効果を観察している可能性が考えられた。
7月7日(金) 14:20-14:45 ポスター会場②
2P⑯-2
巨大軸索性ニューロパチーの長期生存剖検例(第1報)
Long-term autopsy case of giant axonal neuropathy (1st report)

藤村 晴俊1, 渡邊 有史1, 江左 佳樹1, 大薗 達彦1, 階堂 三砂子2, 安原 裕美子3, 山寺 みさき4, 井上 貴美子5, 小林 潤也1
1. 堺市立総合医療センター 脳神経内科, 2. 堺市立総合医療センター 遺伝診療科, 3. 堺市立総合医療センター 病理診断科, 4. 国立病院機構大阪刀根山医療センター 脳神経内科, 5. 国立病院機構大阪刀根山医療センター リハビリテーション科
Harutoshi Fujimura1, Yushi Watanabe1, Yoshiki Esa1, Tatsuhiko Ozono1, Misako Kaidou2, Yumiko Yasuhara3, Misaki Yamadera4, Kimiko Inoue5, Junya Kobayashi1
1. Sakai City Medical Center, Department of Neurology, 2. Sakai City Medical Center, Department of Clinical Genetics, 3. Sakai City Medical Center, Department of Pathology, 4. National Hospital Organization, Osaka Toneyama Medical Center, Department of Neurology, 5. National Hospital Organization, Osaka Toneyama Medical Center, Department of Rehabilitation

【目的】巨大軸索性ニューロパチー(GAN)の長期生存剖検例は極めてまれであり,詳細な神経病理所見を報告する.【症例】42歳女性.生下時より頭髪の縮毛を呈し,1歳6ヶ月頃から伝い歩きできるようになったが不安定で転倒を繰り返した.10歳時にO脚矯正術の際に末梢神経生検を受け,巨大軸索性ニューロパチー(GAN)と診断された.20歳時には四肢機能廃絶,26歳時に気管切開,喉頭気管分離術を施行され,在宅療養を継続していた.30歳時から人工呼吸器管理,41歳時に食欲不振と意識障害を契機に当科を受診.自律神経障害に伴う心停止もみられ,腸管機能不全により経腸栄養の再開が困難であり,CVポートを造設した上で自宅退院した.42歳時にCVポート感染から敗血症性塞栓症を呈し死亡した.【病理像】脳重は1015g.小脳は嚢状に萎縮,脳幹・脊髄全長は索状・瘢痕様に萎縮していた.中脳・脳幹移行部は浸軟性変化を示し,テント部で断裂した.光顕的にプルキンエ細胞は脱落し,橋・延髄の錐体路もほぼ消失していた.大脳皮質の層構造,基底核のニューロンは比較的保たれるが,随所に巨大軸索を混じ,軟膜下および深部白質に腫大アストロサイトの増生があり,軟化巣様に軸索は途絶していると考えられた.脊髄では上位ほど索状変性が強く,特に後索は巨大軸索で充満し,他の索は萎縮・消失,前角ニューロンは巨大軸索,腫大アストロサイトと共に疎な基質に浮いて見えた.前根に比し,後根では巨大軸索が目立った.【考察】GANの長期経過中,中枢神経における病的過程の進行と共に,自律神経障害など2次性の要素(無呼吸,心停止)が加わり,中脳での浸軟変化など,ほぼ究極の変性像と考えられた.
7月7日(金) 14:20-14:45 ポスター会場②
2P⑯-3
末梢神経障害に対し免疫療法が奏功した全身性強皮症の生検例
A case of systemic sclerosis with polyneuropathy that was responded to immunotherapy.

竹中 乃由利1, 米延 友希1, 別宮 豪一1, 木下 允1, 鈴木 健大2, 川崎 貴裕2, 小河 浩太郎1, 村山 繁雄1, 望月 秀樹1
1. 大阪大学医学部付属病院 神経内科・脳卒中科, 2. 大阪大学医学部付属病院 免疫内科
Noyuri Takenaka1, Yuki Yonenobu1, Goichi Beck1, Makoto Kinosita1, Takehiro Suzuki2, Takahiro Kawasaki2, Kotaro Ogawa1, Shigeo Murayama1, Hideki Mochizuki1
1. Department of Neurology, Osaka University Medical Hospital, Osaka, Japan, 2. Department of Clinical Immunology, Osaka University Medical Hospital, Osaka, Japan

【症例】46歳男性【現病歴】X-12年頃からレイノー症状、X-5年から腸閉塞を繰り返し、抗セントロメア抗体陽性を認め全身性強皮症と診断。X-2年11月から両足底部にしびれ感が出現。X-1年3月には両足首以遠に表在覚、振動覚の低下を認めており、翌月には両手首以遠にも症状が拡大した。X年3月に当科入院、四肢末端の皮膚硬化が強く白色に色調変化を呈していた。神経学的には、対称性かつ遠位優位の四肢痛覚低下と下肢振動覚低下を認めた。診断目的に左腓腹神経生検を施行。その後、大量免疫グロブリン療法(IVIg)ならびにステロイドパルスを施行したところ、四肢末梢の感覚障害は著明に改善した。【病理所見】エポン標本のToluidine Blue染色では、神経外膜と周膜の肥厚を認めた。有髄線維密度は、大径線維:37.5/mm 2 、小径線維:3893.75/mm 2 と著明な大径線維密度の低下が見られたが、神経束間での明らかな差異は認めなかった。ホルマリン固定標本のHE染色では、神経および血管周囲に線維化を認め、神経外膜と周膜の癒着を認めた。Masson Trichrome染色にて有髄線維の減少を認めた。【考察】本症例の神経症状は対称性で遠位優位であり、強皮症の皮膚病変の分布と一致していた。神経生検にて大径線維優位に有髄線維密度の低下を認め、神経と血管の周囲に線維化を伴っていた。全身性強皮症に伴う末梢神経障害の治療は対症療法が中心となると言われているが、免疫療法が感覚障害に奏功した一例を経験した。
7月7日(金) 14:20-14:45 ポスター会場②
2P⑯-4
左正中神経の炎症性虚血性神経損傷の一例
A case of inflammatory ishemic nerve injury on left median nerve

上田 佳世1, 高松 聖仁2, 稲葉 真由美3
1. 大阪はびきの医療センター 病理診断科, 2. 淀川キリスト教病院 整形外科, 3. 淀川キリスト教病院 病理診断科
Kayo Ueda1, Kiyohito Takamatsu2, Mayumi Inaba3
1. Osaka Habikino medical Center Pathology, 2. Yodogawa Christian Hospital orthopedics, 3. Yodogawa Christian Hospital pathology

臨床所見が通常の手根管症候群と合致せず,病理所見で炎症性虚血性神経損傷の像を呈した正中神経障害の一例を経験した.診断および発生機序の解明に難渋したため,報告する.症例は72歳女性.左上肢のだるさを自覚した5日後に突然,左手のしびれを伴った痛みが出現.その後,痛みが増強し来院.専業主婦.手の使用頻度に特記事項なし.神経学的所見では,短母指外転筋の筋力はMMT4/5.その他運動障害なし.中指の知覚脱出と環指>小指の知覚低下を認めた.拇指は保たれていた.術前の血液検査ではCRP 0.03, WBC 5000, HbA1c7.0. 感染症検査著変なし.神経伝導速度検査では,左正中神経NCV53.4m/s,振幅2.66mV,潜時5.15ms(対側4.55ms),MRIでは左正中神経手関節部の1mm近位から3mm遠位まで造影効果を伴った腫大があり神経腫などの腫瘍性病変が疑われた.疼痛出現後3週間で手術.左正中神経の尺側半分の神経束に腫大と血管怒張があり,それらを切除して腓腹神経移植を行った.術後, 中指の知覚脱失としびれを認めたが疼痛は消失した.病理所見では,神経線維は周膜の線維性肥厚を伴った分節状,斑状の腫大を認めた.血管怒張部では,神経線維内に出血や小壊死巣が見られ,線維周囲にうっ血などの循環障害性変化を認めた.出血部や周膜を取り巻くような高度のリンパ球, 形質細胞主体の炎症細胞浸潤や散在性のRenaut bodyを認めた.病変部辺縁では,線維化と軽い炎症細胞浸潤を伴っていた.
7月7日(金) 14:20-14:45 ポスター会場②
2P⑯-5
RFC1にリピート伸長変異を認めたsensory neuropathyの78歳女性例
A 78-year-old woman presenting sensory neuropathy with RFC1 expansion

佐藤 亮太1, 神田 隆2, 中森 雅之1
1. 山口大学 脳神経内科, 2. 山口大学医学部 神経・筋難病治療学講座
Ryota Sato1, Takashi Kanda2, Masayuki Nakamori1
1. Dept. of Neurology and Clinical neuroscience, Yamaguchi Univ, Yamaguchi, Japan, 2. Dept. of Neurotherapeutics, Yamaguchi Univ., Yamaguchi, Japan

【症例】78歳女性【既往歴】腰部脊柱管狭窄症【主訴】四肢の違和感とふらつき【現病歴】2005年(60歳)頃から足趾と足底に違和感を自覚し,2012年(67歳)頃から手足で入浴時の温度がわかりにくく,痛みを感じにくいことに気づいた.2015年には社交ダンスでふらつくようになり,痛みの自覚なしに臀部に熱傷を負うことがあった.2016年に近医脳神経内科を受診し,アミロイドーシスが疑われて当科紹介となった.【神経学的所見】脳神経に異常なく,筋力低下はなかった.四肢遠位部優位に全感覚鈍麻を認め,腱反射は減弱していた.小脳性運動失調,起立性低血圧,排尿・排便障害はなかった.【検査所見】血液検査,脳脊髄液検査,経胸壁心エコー,消化管内視鏡検査,CT検査では特筆すべき異常はなかった.MRI検査では腰部脊柱管狭窄症を認めた.神経伝導検査では感覚神経が導出されなかった.【腓腹神経生検】有髄神経・無髄神経ともに高度に脱落していた.アミロイドの沈着はなかった.【臨床経過】Charcot-Marie-Tooth病遺伝子解析で異常は検出されなかったが,RFC1にリピート伸長変異が確認された.【考察】近年,Cerebellar ataxia, neuropathy, vestibular areflexia syndrome(CANVAS)の原因として,RFC1遺伝子にリピート伸長変異が報告された.本例は経過を通じてしびれ感や痛みの訴えはなく,異常感覚の乏しいsensory neuropathyの鑑別診断にはCANVASを考慮する必要があると考えられた.