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一般ポスター
シヌクレイン2
7月7日(金) 14:20-14:50 ポスター会場②
2P⑭-1
Lewy body diseaseにおけるhnRNP陽性率は脳血流と緩やかに相関する
hnRNP positivity in Lewy body disease correlates modestly with cerebral blood flow

濱崎 英臣1, 吉富 小都2, 笹ケ迫 直一3, 本田 裕之1
1. 九州大学 神経病理, 2. 九州大学 神経病理, 3. 国立病院機構 大牟田病院 脳神経内科
Hideomi Hamasaki1, Sato Yoshidomi2, Naokazu Sasagasako3, Hiroyuki Honda1
1. Dept. of Neuropathol., Grad. Sch. of Med. Sci., Kyushu Univ. Fukuoka. Japan, 2. Dept. of Neurol, Grad. Sch. of Med. Sci., Kyushu Univ. Fukuoka. Japan, 3. Dept. of Neurol, Neuro-Muscul. Cent., Nat. Omuta Hosp., Omuta, Japan

【目的】Dementia with Lewy bodies (DLB)や 認知症を併発するParkinson disease (PDD)は脳内の神経細胞内にalpha synucleinを主成分とするLewy bodyが蓄積する代表的な疾患である。DLBでは臨床的に後頭葉血流低下が報告されるが、DLB後頭葉で高度な細胞脱落や変生産物集積は観察されず、血流低下の原因は不明である。我々はこれまでの研究でPDDとDLBを対象に、heterogeneous nuclear RNA binding protein (hnRNP) A1の前頭葉、側頭葉、後頭葉における陽性率を検討し、PDの前頭葉とDLBの後頭葉で低下する傾向があることを報告した。今回、生前に計測された脳血流量と剖検脳で観察されるhnRNP陽性率にどの程度相関があるかを検討するため、死亡1年以内に脳血流シンチグラフィーが行われた症例を対象に、hnRNPA1陽性率との比較を行った。【対象と方法】対象はDLBが3症例、PDが2症例で、病理学的なDLB criteriaとしてはDiffuse neocortical typeであった。脳血流量は脳血流全体を母数とし平均化を行った。hnRNPA1の観察部位として、脳血流との比較が容易である側頭葉、頭頂葉、後頭葉を対象とし、hnRNPA1の陽性率を算出した。【結果】hnRNPA1陽性率はPD症例では全領域で高く80%以上であった。一方、DLB症例では全領域で70%以下であり、後頭葉はより低値であった。脳血流は前頭葉で低下していた症例もあったが、PDでは全体的に保持され、DLBは後頭葉の低下が見られ、hnRNPA1陽性率と血流は全領域で軽度の正の相関を認めた【考察】DLB症例では封入体と関係なく、血流との関連があることから細胞の機能的な状態を反映する可能性が示唆された。
7月7日(金) 14:20-14:50 ポスター会場②
2P⑭-2
Lewy病理を合併した多系統萎縮症の75歳女性例
Multiple System Atrophy with Lewy body pathology: An autopsy case report

國分 さゆり, 武田 貴裕, 石川 愛, 齋藤 裕美子, 磯瀬 沙希里, 伊藤 喜美子, 新井 公人, 本田 和弘
独立行政法人国立病院機構千葉東病院脳神経内科、千葉、日本
Sayuri Kokubun, Takahiro Takeda, Ai Ishikawa, Yumiko Saito, Sagiri Isose, Kimiko Ito, Kimihito Arai, Kazuhiro Honda
Depart. of Neurology, National Hospital Organization Chibahigashi National Hospital, Chiba, Japan

【症例】死亡時75歳女性。【現病歴】X-5年右手の動作時振戦が出現。同年に大学病院を受診し、右優位の動作緩慢、筋強剛、姿勢反射障害、起立性低血圧、レム睡眠行動異常症を指摘された。OSIT-Jは5/12と軽度低下していた。MIBG心筋シンチグラフィーはH/M比が早期相3.10、遅延相3.40と正常範囲、頭部MRIで右被殻外側のT2高信号を認め、MSA-Pと診断された。L-dopaは無反応であった。徐々にADL低下し、歩行困難・膀胱カテーテル留置となり、X-1年に当院を紹介受診。X年に経口摂取困難、喀痰量増加のため入院。心不全を合併し死亡した。全経過5年7ヶ月。【病理所見】脳重1200g。肉眼病理では橋底部の萎縮、小脳白質の軽度萎縮、黒質の色素脱落、被殻の後方外側優位に著明な萎縮と褐色化の所見。組織病理では、被殻、尾状核、黒質、橋底部、小脳白質、迷走神経背側核、胸髄中間外側核等広範にグリア細胞内封入体(GCI)を認めた。被殻では後方外側優位に高度のグリオーシスを認め、神経細胞脱落が著明であった。また、H-Eにて迷走神経背側核およびマイネルト核にLewy bodyを認めた。心臓前壁の交感神経節後線維は軽度脱落し同線維内にLewy neuritesを認めた。【結論】MSAにLewy病理を合併した一例を報告した。本症例では進行が比較的早かったが、既報告では長期生存例もあるためMSAにLewy病理を合併することが予後に影響するかどうかについてはさらなる検討が必要である。
7月7日(金) 14:20-14:50 ポスター会場②
2P⑭-3
多系統萎縮症における海馬歯状回神経細胞体封入体の免疫形質の相違とその臨床・病理学的意義
Intracytoplasmic inclusion immunoprofiles in dentate gyrus of MSA and its association with clinicopathological features

本間 琢1,2, 望月 葉子4, 飛澤 晋介3, 小森 隆司2, 高橋 一司3
1. 埼玉医大国際医療センター 病理診断科, 2. 都立神経病院 神経病理, 3. 都立神経病院 脳神経内科, 4. 都立北療育医療センター 脳神経内科
Taku Homma1,2, Yoko Mochizuki4, Shinsuke Tobisawa3, Takashi Komori2, Kazushi Takahashi3
1. Dept. of Diag. Pathol., Saitama Med. Univ, Intern. Med. Center, 2. Dept of Neuropath., Tokyo Metropolitan Neurol. Hospital, 3. Dept of Neurol., Tokyo Metropolitan Neurol. Hospital, 4. Dept of Neurol., Tokyo Metropolitan Kita Med. and Rehabil. Center for the Disabled

目的:多系統萎縮症(MSA)の海馬歯状回顆粒細胞における神経細胞体内封入体(dntNCI)に焦点を当て、その免疫形質および臨床・病理学的意義につき検討した。
対象と方法:対象はMSA18例。臨床項目(性別、年齢、罹病期間、気管切開の有無および期間、認知機能障害の有無など)、病理学的項目(脳重、神経原線維変化および老人斑ステージ、歯状回を含む海馬領域のリン酸化タウ(pT)病理およびリン酸化αシヌクレイン(paSyn)病理の有無・程度)につき検討した。
結果:MSAはdntNCIを有する群(55.6%)と有さない群(44.4%)に分けられた。さらに、dntNCIを有する群は、臨床的に長期の気管切開がなされ、かつ、有意に罹病期間が長期であった。また、後者に比して認知機能障害を来す傾向にあった。さらに、dntNCIを有する群は、その免疫形質によって3亜型(pT陽性dntNCI群、paSyn陽性dntNCI群、両方の免疫形質をもつNCIを見るdntNCI群)に分けられたが、paSyn陽性dntNCI群は、長期の罹病期間、認知機能障害を示す傾向にあった。 一方、pT陽性dntNCI群も認知機能障害を示す傾向にあったが、そのほか、より高齢で発症し、より高齢で死亡する傾向にあった。また、paSyn陽性dntNCI群に比べて、より強くタウ病理を有していた。
考察と結論:MSAにおいて、dntNCIの存在は認知機能障害に関連することが示唆された。さらに、dntNCIの免疫形質は一様ではなく、かつ、その免疫形質の違いによって、背景の臨床像や病理像も異なっていることが考えられた。
7月7日(金) 14:20-14:50 ポスター会場②
2P⑭-4
SNCA duplication (PARK4) の全身病理所見
The neuropathology of central and peripheral nervous system in SNCA duplication (PARK4)

谷口 大祐, 津山 恒, 上野 真一, 服部 信孝
順天堂大学 脳神経内科
Daisuke Taniguchi, Ko Tsuyama, Shin-ichi Ueno, Nobutaka Hattori
Department of Neurology, Juntendo University School of Medicine

【症例】死亡時90歳女性。【臨床経過】78歳頃から左優位の寡動と歩行障害が出現した。左優位のパーキンソニズムと嗅覚低下、認知機能障害、人がよぎるような幻覚を認め、パーキンソン病と診断された。レボドパ製剤で加療が開始されたが症状の改善は部分的だった。83歳頃からレボドパ誘発性ジスキネジアが出現した。84歳頃から転倒が多くなり、骨折を契機に車椅子レベルのADLとなった。89歳頃から意識の変容を認めるようになり、90歳時に老衰で死亡した。全経過12年。息子が31歳時にパーキンソン病を発症しており、本症例、息子共にSNCA duplicationが同定されている。【病理所見】脳重1173グラム。肉眼的に、前頭葉の軽度萎縮、側脳室の拡大、扁桃核から海馬傍回にかけての萎縮、黒質と青斑核の著明な脱色素を認めた。レビー小体病理として、脳幹部と辺縁系に非常に豊富なリン酸化αシヌクレイン陽性レビー小体、レビーニューライトを認め、大脳皮質まで拡がっていた(新皮質型、ブラークステージ6)。末梢組織にも広くリン酸化αシヌクレインの沈着を認めた。また、橋底部や小脳白質、レンズ核などではオリゴデンドロサイトにリン酸化αシヌクレインの凝集体を認めた。この凝集体はガリヤス染色で嗜銀性があり、グリアコイル小体様の形態だった。老年性病理としては、軽度のアルツハイマー型タウ病理と嗜銀顆粒を認めた。【考察】本症例も、PARK4の既報告例と同様に中枢・末梢神経系に広く、且つ高度のレビー小体病理を認めた。いずれの所見もレビー小体病の範疇に留まっており、PARK4の神経病理所見はレビー小体病理の最重症型と理解することができると考えた。
7月7日(金) 14:20-14:50 ポスター会場②
2P⑭-5
SNCA duplicationを伴う家族性パーキンソン病の一例
A case report of familial Parkinson's disease caused by SNCA duplication

山寺 みさき1,5, 井上 貴美子1, 須藤 素弘1, 森 千晃1, 豊岡 圭子1, 藤村 晴俊2, 秀嶋 信3, 神吉 秀明3, 安岡 弘直4, 村山 繁雄5,6, 望月 秀樹6
1. NHO 大阪刀根山医療センター 脳神経内科, 2. 堺市立総合医療センター, 3. 大阪警察病院 脳神経内科, 4. 大阪警察病院 病理診断科, 5. 大阪大学 連合小児発達研究科 ブレインバンク, 6. 大阪大学 脳神経内科
Misaki Yamadera1,5, Kimiko Inoue1, Motohiro Sudo1, Chiaki Mori1, Keiko Toyooka1, Harutoshi Fujimura2, Makoto Hideshima3, Hideaki Kanki3, Hironao Yasuoka4, Shigeo Murayama5,6, Hideki Mochizuki6
1. Dept. of Neurolgy, NHO Osaka Toneyama Medical Center

【症例】46歳女性。【家族歴】母親、母方祖母、祖母の兄弟がパーキンソン病。【経過】34歳頃、右側の振戦で発症し、A病院にて精査後、パーキンソン病と診断。39歳時にB病院にて遺伝子検査にてシヌクレイン遺伝子のduplicationと判明。症状は緩徐に進行し、内服調整のための入退院を繰り返し、42歳よりナーシングホームに入所。46歳時、敗血症にて死亡。【剖検所見】脳重量は1180g。肉眼的に黒質の色素脱失を認め、青斑核は同定不能。組織学的には黒質、青斑核のメラニン含有細胞は著減し、Lewy body (LB)を認めた。視床下部に大きなLBを多数認めた。リン酸化αシヌクレイン免疫染色では、DLBコンセンサスガイドライン指定領域の他に、交感神経節、脊髄前角、後角外側、小脳白質、中心前回など含む広範囲で陽性構造物を認め、特に大脳皮質表層ではthin neuriteを広範に認めた。視床下部では大きなLBやdotを多数認めた(図)。【考察】シヌクレイン過剰発現により、LBの数・サイズの増大、また神経突起に強調されるシヌクレイン病理所見が特徴的であった。
7月7日(金) 14:20-14:50 ポスター会場②
2P⑭-6
膵臓癌で死亡した経過11年のパーキンソン病の一例
An autopsy case of Parkinson's disease coexisting pancreatic cancer

石川 愛, 武田 貴裕, 國分 さゆり, 斎藤 裕美子, 磯瀬 沙希里, 伊藤 喜美子, 新井 公人, 本田 和弘
国立病院機構 千葉東病院
Ai Ishikawa, takahiro Takeda, Sayuri Kokubun, Yumiko Saito, Sagiri Isose, Kimiko Ito, Kimihito Arai, Kazuhiro Honda
National Hospital Organization Chiba-Higashi-Hospital

【症例】死亡時74歳女性、ベーチェット病、高血圧、脳梗塞の既往あり。X-11年寡動、小刻み歩行が出現しパーキンソン病(PD)の診断となった。X-4年よりジスキネジア、点が虫に見える錯視あったが認知機能は保たれていた。X-1年3月めまい、食思不振の訴えがあり、ジスキネジア著明となり入院。膵頭部癌肝転移による急性閉塞性胆管炎の診断でステント留置するも、ADLは全介助となった。X年1月膵頭部癌の胃浸潤により高カロリー輸液を開始、4月呼吸不全で死亡した。(全経過11年)【病理所見】固定前脳重1090g、大脳表面のうっ血や静脈怒張なし。前頭葉は軽度萎縮していたが、側頭葉内側の萎縮はなかった。黒質、青斑の色素脱落は高度。中枢神経系に明らかな腫瘍の転移や癌性髄膜炎を疑う所見はみられなかった。組織学的に迷走神経背側核、青斑、黒質の神経細胞の脱落と脳幹を主体にマイネルト基底核、扁桃体にαシヌクレイン(αsyn)の集積とレビー小体を認め、海馬や新皮質にも少量のαsynの広がりがみられた(limbic型)。心臓前壁の交感神経節後線維の脱落は著明で、残存神経束に少量のαsyn沈着がみられた。加齢性変化はThal phase 0、Braak NFT stage 0 だった。脳底部の動脈や穿通動脈は動脈硬化性変化を呈していた。橋では横走線維主体に左右対称性に髄鞘の淡明化がみられた。MSAを示唆するαsynのグリア細胞内沈着はみられなかった。【結論】レビー小体、αsynの量と分布は、PDに矛盾しない。中心性橋髄鞘融解の合併が疑わしく、癌終末期の低栄養、電解質変化の影響が示唆された。