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一般ポスター
腫瘍3
7月8日(土) 12:50-13:05 ポスター会場②
3P⑨-1
左後頚部に発生した異所性髄膜腫
Ectopic meningioma in the left cervical region

新宅 洋1, 市川 椋雅2, 高橋 亮介2, 大橋 健一1,3
1. 東京医科歯科 医病 病理, 2. 東京医科歯科 耳鼻咽喉科, 3. 東京医科歯科 人体病理学分野
Hiroshi Shintaku1, Ryouga Ichikawa2, Ryosuke Takahashi2, Kenichi Ohashi1,3
1. Dept. of pathology, Tokyo Medical and Dental University Hospital, 2. Dept. of Otolaryngology, Tokyo Medical and Dental University, 3. Dept. of Human pathology, Tokyo Medical and Dental University

【症例】57歳女性。2年前から腺腫様甲状腺腫の診断でフォロー中、自覚はなかったが診察時に左後頚部尾側に可動性良好の腫瘤が認められた。頚部単純MRIでは左副神経領域に長径約18mmの扁平な腫瘤が見られた。腫瘤はリンパ節と同等の信号強度を示し、リンパ節腫大と考えられた。可溶性IL-2Rの上昇は無く、その他目立った異常所見は無かったが、精査目的に切除生検が行われた。腫瘤は境界明瞭で周囲組織との連続性は確認できなかった。摘出後経過は良好で再発は生じていない。【病理所見】リンパ組織は認められず、紡錘形細胞が束状に増殖する病変であり、背景に毛細血管を伴う。ごく一部に渦を巻くような配列が見られる。壊死はなく、紡錘形細胞に核異型は目立たない。核分裂像は高拡大10視野で認められない。免疫染色ではEMA(ごく一部に弱+)、S-100(ごく一部に弱+疑い)、Vimentin(+) 、SSTR-2A(+)、PgR(-)、STAT6(-)、CD34(-)、SOX10(-)、AE1/3(-)、Ki-67陽性率:7.1%であった。組織像と免疫染色所見から異所性髄膜腫と診断した。【考察】本例はEMAの陽性像が極めて弱く診断に難渋したが、SSTR-2Aの所見から確定診断に至った。異所性髄膜腫は頭頚部にしばしば発生し、間葉系幹細胞や異所性くも膜細胞、髄膜皮細胞が発生起源として推定されているが、統一見解はない。本例はEMAの陽性像がわずかで、異所性くも膜細胞などが発生起源の可能性は否定できないが、推定困難であった。異所性髄膜腫は臨床症状や画像所見に特異的なものがなく術前診断が困難であるが、予後は頭蓋内髄膜腫に準ずると考えられ、正確な診断が求められるため重要症例として供覧に付したい。
7月8日(土) 12:50-13:05 ポスター会場②
3P⑨-2
Calbindin染色にてentrapped neuron が明瞭に観察できたpediatric diffuse astrocytomaの1例
Entrapped neurons were clearly identified on calbindin staining in a case of pediatric diffuse astrocytoma

山下 里佳1, 村山 繁雄2, 別宮 豪一1, 本山 雄一3, 下野 九理子4, 貴島 晴彦5, 望月 秀樹1
1. 大阪大学医学部附属病院 神経内科・脳卒中科, 2. 大阪大学大学院連合小児発達学研究科子どものこころの分子統御機構研究センター ブレインバンク・バイオリソース部門, 3. 大阪大学医学部附属病院 病理診断科, 4. 大阪大学医学部附属病院 小児科学, 5. 大阪大学医学部附属病院 脳神経外科
Rika Yamashita1, Shigeo Murayama2, Goichi Beck1, Yuichi Motoyama3, Kuriko Shimono4, Haruhiko Kishima5, Hideki Mochizuki1
1. Dept. of Neurology., Osaka university medical hospital, Osaka, Japan

【症例】7歳男児.6歳で一点凝視,眼球上転,その後顔を振るわせる発作にててんかんを発症した.流涎を伴う意識減損発作や左を凝視しながら右に頸部を回旋させるなどの発作が出現した. MRIでは左側頭葉に内部に充実性成分を伴わない嚢胞性病変及び左大脳の萎縮を指摘された.同病変はT2WI,FLAIRで周囲に淡い高信号を伴い造影効果は認めなかった.脳波では発作間欠期に左側頭部から広がる棘徐波,多棘徐波を認め,発作時には左側頭部から始まる速波律動から広範に広がる左優位の徐波を認めた. PET-CTでは左側頭葉,前頭葉頭側にて集積が低下していた.VPA.LTG,LEV3剤でも発作のコントロールが困難であり左焦点切除術を施行した.【病理所見】大脳皮質および白質の層構造を保ちながらもpilocytic patternをとるアストログリアの腫瘍性増殖を認める.核の多形性や核分裂像は認められない.腫瘍内には異型に乏しい神経細胞の介在を認める.SMI32, NeuN陽性に加え、Calbindin陽性が確認できた。毛細血管はわずかに増殖し局所的に石灰沈着を伴う.Rosenthal線維や好酸性顆粒小体などの変性構造物は認められない. 免疫染色では腫瘍細胞はGFAP陽性,Olig2一部陽性,CD34はごく一部の細胞に陽性,neurofilamentは背景構造に陽性,IDH1-R132H陰性,ATRX陽性(野生型),p53陰性,MIB-1 index1%未満であった.【考察】腫瘍に巻き込まれた神経細胞は,Calbindin陽性であるCajal-Retzius細胞と考えられ既存組織の同定に有用と考え報告した.
7月8日(土) 12:50-13:05 ポスター会場②
3P⑨-3
末梢神経系と平滑筋系の二重形質を示す神経外胚葉成分と骨肉腫様成分,角化型扁平上皮癌成分を含む鼻副鼻腔奇形癌肉腫の一例
Sinonasal teratocarcinosarcoma with neural crest-derived-like multiphenotypic components.

松田 葉月1, 斎藤 翔太2, 高田-大和田 温子1, 高岡 身奈1, 石田 和之1
1. 獨協医科大学 病理診断学, 2. 獨協医科大学 耳鼻咽喉・頭頸部外科
Hadzki Matsuda1, Shota Saito2, Atsuko Takada-Owada1, Mina Takaoka1, Kazuyuki Ishida1
1. Dept. of Diagnostic Pathol., Dokkyo Med Univ., Tochigi, Japan, 2. Dept. of Otorhinolaryngol., Head and Neck Surg., Dokkyo Med Univ., Tochigi, Japan

【症例】69歳 男性。1ヶ月持続する鼻出血・鼻閉にて受診。左鼻内を充満する腫瘍あり,1ヶ月半の経過中に上顎洞の骨破壊増大,鼻腔粘膜へも進展。診断確定目的に切除生検施行。【画像】 左鼻腔から上顎洞内に進展する腫瘤。内部はT2WI高信号の液体成分と造影される充実成分が混在。一部骨欠損あり。頭蓋内への浸潤なし。
【病理】短紡錘形・多極形・類上皮様・円形細胞の混在するシート状増殖(最優勢)[EMA/CAM5.2/AE1AE3/αSMA(+), CD56/DOG1(+/-), p40(-)],類骨形成や硝子軟骨島形成を伴う骨肉腫様成分[EMA/CAM5.2/AE1AE3(+), αSMA(-)],末梢神経様の紡錘形細胞の小束状配列[S100/calretinin/SOX10(+), desmin(+/-)],硬化性間質を伴う平滑筋様細胞の束状配列[desmin/HHF35/caldesmon/calretinin(+), αSMA(-), Ki67低値],明瞭な角化を呈する扁平上皮癌成分[p40(+)](少量)を含む。定型的な嗅神経芽細胞腫様の小円形細胞成分は含まれていなかった。[IHC] CD99(+)[diffuse], SYP(-), myogenin(-), CD31(-), CD34(-). p53(-)[loss], MTAP(+)[retained], CDK4(-), MDM2(-). Ki67 index: 平滑筋様成分で1%未満 - 大部分で20%以上 - 最大70%程度。
【まとめ】鼻副鼻腔奇形癌肉腫は,1種類の上皮系および2種類以上の間葉系腫瘍細胞から構成され,種々の成熟度を示し,多彩な組織像を呈する。本例は骨肉腫様の高悪性度腫瘍で,末梢神経系と平滑筋系の二重形質を示す紡錘形細胞が豊富に含まれ,増殖能の低い平滑筋細胞成分も認められた。一方で,扁平上皮癌の上皮間葉転換を示唆する所見は認められなかった。神経堤由来細胞様の多分化能の検出には,適切な免疫染色パネル選択と,形態との照合が重要であった。