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一般ポスター
タウ2
7月8日(土) 12:50-13:15 ポスター会場②
3P⑫-1
痙性麻痺を呈した進行性核上性麻痺の一例
An autopsy case of progressive supranuclear palsy with spastic parsesis

久留 聡1, 酒井 素子1, 守吉 秀行3, 岩崎 靖2
1. 国立病院機構鈴鹿病院 脳神経内科, 2. 愛知医大加齢研, 3. 名古屋大学 神経内科
Satoshi Kuru1, Motoko Sakai1, Hideyuki Moriyoshi3, Yasushi Iwasaki2
1. Dept. of Neurology, Suzuka National Hospital, 2. Dept. of Neuropathology, Institute for medical science of aging, Aichi Medical Univ., 3. Dept. of Neurology, Nagoya Univ.

【症例】死亡時70歳男性。父方のいとこに下肢機能障害あり。30歳頃から徐々に走るのが遅くなった.60歳頃よりふらつくようになり歩行障害が比較的急速に進行し脊髄小脳変性症と診断された.64歳には長時間の座位保持不能。当科初診時、垂直性眼球運動障害、構音障害、嚥下障害、小脳失調、固縮、寡動、深部反射亢進を認めた。MMSEは22点。65歳以降意欲が低下、下肢の痙性麻痺が進行し寝たきりとなった。70歳時に肺炎にて死亡された。【病理所見】脳重1095g。前頭葉は軽度、脳幹は高度に萎縮。淡蒼球内節・外節、視床下核、小脳歯状核の軽度萎縮。中心前回は高度な神経細胞脱落とグリオーシスを認め、Betz巨細胞も脱落。中心前回皮質にTufted astrocyte、白質にCoiled bodyやThreadを多数認める。淡蒼球は中等度、被殻、視床下核は軽度の神経細胞脱落とグリオーシスを認め、Tufted astrocyteやcoiled bodyを認める。小脳歯状核の細胞脱落とグリオーシスが非常に高度。プルキンエ細胞にAT8陽性の構造物を少数認めた。黒質、上丘、赤核の神経細胞脱落を認める。青斑核にグロボーゼ型のNFTを認める。下オリーブ核はグリオーシスとグロボーゼ型NFTを多数認める。KB染色では橋縦束、延髄錐体の染色性の低下を認める。脊髄前索、側索の淡明化が非常に高度である。脊髄前角の大型のニューロンの一部がGB染色やAT8染色で陽性。側索は小径線維優位の軸索の脱落を認める。【考察】病理所見よりPSPと診断した。臨床的に痙性麻痺が目立ち病理学的にも高度の錐体路変性を認められた点が特徴であった。
7月8日(土) 12:50-13:15 ポスター会場②
3P⑫-2
行動異常を呈した高齢発症認知症の77歳男性の剖検例
An autopsy case of a 77-year-old man with late onset dementia who presented with behavioral abnormalities

山上 圭1, 松原 知康2, 藤田 浩司1, 西田 善彦3, 齊藤 祐子2, 村山 繁雄2,4, 和泉 唯信1
1. 徳島大学病院 脳神経内科, 2. 東京都健康長寿医療センター 高齢者ブレインバンク, 3. 医療法人いちえ会 伊月病院, 4. 大阪大学大学院連合小児発達学研究科付属子供の心の分子制御機構研究センター
Kei Yamakami1, Tomoyasu Matsubara2, Koji Fujita1, Yoshihiko Nishida3, Yuko Saito2, Sigeo Murayama2,4, Yuishin Izumi1
1. Dept. of Neurology, Tokushima University Hospital, Tokushima, Japan, 2. Tokyo Metropolitan Institute for Geriatrics and Gerontology, Tokyo, Japan, 3. Itsuki Hospital, Tokushima, Japan, 4. United Graduate School of Child Development, Osaka University, Osaka, Japan

【症例】死亡時77歳男性(右利き)。【既往歴】50歳時に外傷性硬膜下血腫の手術、狭心症、腹部大動脈瘤。飲酒歴4合/ 日。【家族歴】同症者なし。近親婚なし。【臨床経過】72歳時に怒りっぽくなり、万引きを繰り返すようになった。73歳時に行動障害型前頭側頭型認知症(bvFTD)と診断された。初診時の認知機能検査は、HDS-R 26/30点、MMSE 24/30点、FAB 14/18点であり、頭部MRIでは両側前頭葉の萎縮、両側前頭部の硬膜下水腫、右被殻梗塞を認めた。行動障害に対し抗精神病薬を開始したが、錐体外路症状やアパシーのため薬剤調節目的の入院を繰り返した。76歳時の頭部MRIで左尾状核頭部梗塞を認めた。77歳時に慢性腎不全の進行のため死亡した。全経過約5年であった。【病理学的所見】死後12時間42分で剖検となり、脳重1,050 gであった。肉眼的に両側前頭葉穹窿面に対称性の軽度楔状変形を認め、両側海馬の軽度萎縮を認めた。左尾状核頭部に陳旧性梗塞を認めた。組織学的には、CA2を中心に海馬、移行嗅内野、嗅内野にneurofibrillary tangles (NFTs)とneuropil threads (NTs)を認めた。その他の大脳新皮質へのNFTsの広がりは乏しかった。免疫組織学的にNFTsは3 repeat tauと4 repeat tauの両者に陽性であった。老人斑、嗜銀顆粒病理は限局的であり、リン酸化α-synucleinおよびリン酸化TDP-43陽性所見、アミロイドアンギオパチーは認めなかった。【考察】生前bvFTDと診断されていたが、高齢発症という点が非典型的であった。認知機能低下の原因は尾状核頭部梗塞および神経原線維変化優位型老年性変化に加え、飲酒歴も無視出来ない。硬膜下水腫が経過に影響を与えた可能性も考えられた。
7月8日(土) 12:50-13:15 ポスター会場②
3P⑫-3
初期にパーキンソン病と診断し、頻回転倒、認知症が現れた高齢女性
Elderly woman case with onset of Parkinson's disease, followed by frequent falls and dementia

安井 敬三1, 橋本 光義2, 堀本 佳彦3, 田原 大資4, 吉田 眞理4, 岩崎 靖4, 岡村 信行5
1. 日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院 脳神経内科, 2. 日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院 病理診断科, 3. 名古屋市総合リハビリテーションセンター附属病院 脳神経内科, 4. 愛知医科大学加齢医科学研究所 神経病理部門, 5. 東北医科薬科大学医学部 薬理学
Keizo Yasui1, Mitsuyoshi Hashimoto2, Yoshihiko Horimoto3, Daisuke Tahara4, Mari Yoshida4, Yasushi Iwasaki4, Nobuyuki Okamura5
1. Dept. of Neurology, Japanese Red Cross Aichi Medical Center Nagoya Daini Hospital, Aichi, Japan, 2. Dept. of Neuropathol., Japanese Red Cross Aichi Medical Center Nagoya Daini Hospital, Aichi, Japan, 3. Dept. of Neurology, Nagoya City Rehabilitation and Sports Center, Nagoya, Aichi, Japan, 4. Dept. of Neuropathol., Institute for Medical Sciences of Aging, Aichi Medical Univ., Nagakute, Aichi, Japan, 5. Division of Pharmacology, Faculty of Medicine, Tohoku Medical and Pharmaceutical University

【症例】死亡時86歳女性.【現病歴】77歳時,右手の使いにくさ,右足の挙がりにくさがみられた.78歳時,易転倒性.うつ気分が出現.80歳時,杖歩行になり,パーキンソン病(PD)疑いにて当科紹介.【神経学的異常所見】脳神経:軽度下方視制限.錐体外路系:右上下肢の安静時振戦と歯車様固縮,姿勢反射障害,Myerson徴候陽性.【検査所見】頭MRI,MIBG心筋シンチグラフィは正常範囲内.DATスキャンはSBR右2.10,左1.41で著明な低下.高次脳機能検査はMMSE29,ADAS9.0,FAB14.PDと診断して内服を開始したが薬効は乏しかった.【経過】82歳時,指示が入りにくくなり,発語内容がちぐはぐになった.自分勝手で思いつきで行動し,頻回に転倒して骨折した.このとき,FAB9で前頭葉機能低下が進行した.83歳時,ATMや診察券の使い方がわからなくなった.診断を進行性核上性麻痺(PSP)と修正した.85歳時,タウ,アミロイド,FDGのPETを施行し,PSPを示唆された.86歳時,自室で突然死した.【病理所見】マクロ所見にて前頭葉,視床下核,淡蒼球,中脳・橋被蓋が萎縮し,黒質,青斑核の退色,小脳歯状核門が褐色を呈した.組織学的には視床下核にもっとも強く,ついで淡蒼球,黒質に細胞脱落,グリオーシス,Globose型NFTを認めた.また,tufted astrocyte,thread, coiled bodyを認め,PSPtypical typeと診断した.また,迷走神経背側核,青斑核に軽度の細胞脱落とグリオーシス,Lewy body(LB)を認めた.LBの広がりはlimbic type相当であった.【考察】臨床診断はPDついでPSPに修正したが,病理学的に両疾患の合併例であることが判明した.PETにおけるタウ沈着を病理と対比検討する.
7月8日(土) 12:50-13:15 ポスター会場②
3P⑫-4
視機能を主体とするposterior cortical atrophyを呈した大脳皮質基底核変性症の1例
An autopsy case of corticobasal degeneration with posterior cortical atrophy

増井 憲太1,2, 角南 陽子3, 鬼塚 裕美1,2, 長谷川 成人4, 高橋 一司3, 小森 隆司2
1. 女子医大 病理, 2. 都立神経病院 検査科病理, 3. 都立神経病院 脳神経内科, 4. 都医学研 認知症・高次脳機能研究分野
Kenta Masui1,2, Yoko Sunami3, Hiromi Onizuka1,2, Masato Hasegawa4, Kazushi Takahashi3, Takashi Komori2
1. Dept. of Pathol., Tokyo Women's Med. Univ., Tokyo, Japan, 2. Dept. of Lab. Med. & Pathol., Tokyo Metropolitan Neurol. Hosp., Tokyo, Japan, 3. Dept. of Neurol., Tokyo Metropolitan Neurol. Hosp., Tokyo, Japan, 4. Dept. of Brain & Neurosci., Tokyo Metropolitan Inst. of Med. Sci., Tokyo, Japan

【緒言】臨床的に視機能主体のposterior cortical atrophy (PCA) を呈した大脳皮質基底核変性症 (CBD) の1剖検例を報告する。【症例】63歳男性。家族歴に特記事項なし。死亡6年前に失読失書、相貌失認、右同名半盲が出現し、MRIやSPECTで左頭頂部と後頭葉の萎縮と血流低下を認めた。視機能主体の大脳後方機能は進行性に悪化しPCAと考えた。経過5年で視機能は全廃し、錐体外路徴候も出現、全経過6年で永眠した。【神経病理所見】脳重量は1190gで、左側優位の側脳室拡大、前頭・頭頂葉、鳥距溝を含む後頭葉萎縮を認めた。基底核は左側優位に、尾状核・被殻・淡蒼球の萎縮・着色がみられ、視床下核は保たれていた。脳幹では黒質の脱色を認め、小脳歯状核は保持されていた。組織学的には、変性部位で軽度の神経細胞脱落、白質変性およびグリオーシスを伴い、多数の嗜銀性スレッド、ballooned neuronや棘状分岐を欠く非典型的なastrocytic plaqueが出現していた。グリアおよび神経細胞体内には、リン酸化タウ陽性の小型円形封入体が多数みられた。タウ蛋白はwestern blotでCBD typeを示した。【考察】本症例は、左側優位の後頭・頭頂葉皮質・白質、被殻・淡蒼球、中脳黒質に変性の主座を有し、分布は神経学的徴候と良く合致していた。一方、病理組織像については、非典型的なastrocytic plaqueや小型のタウ陽性円形封入体など、CBDとして非定型的な所見を認めたが、病変分布や組織像からPSPやGGTは否定的で、タウの生化学的解析を総合してCBDとして矛盾しないと考えた。PCAの背景病理はアルツハイマー病が最多で、これまでPCAを呈するCBDの詳細な臨床病理学的報告はなく、希少な剖検例と考えられた。
7月8日(土) 12:50-13:15 ポスター会場②
3P⑫-5
Primary age-related tauopathy の臨床神経病理
Clinicopathological appearances of Primary age-related tauopathy

吉田 幸司, 畑 由紀子, 一萬田 正二郎, 西田 尚樹
富山大学医学部法医学講座
Koji Yoshida, Yukiko Hata, Shojiro Ichimata, Naoki Nishida
Dept of Legal Medicine, Sch of Medicine, Univ of Toyama

[はじめに] 本邦におけるPrimary age-related tauopathy (PART)の頻度やその臨床病理学的背景の検討は十分に行われていない. [症例と方法] 40才以上の法医剖検例1589 例 (男性954, 女性635例, 40才-101才, 平均70.2 ±14.2才)につき免疫染色, 特殊染色を施行し, Craryらの定義に基づいてPART(Definite, probable)を抽出した. NIA-AA high症例をAlzheimer’s disease(AD), AD病理はPARTに合致するが嗜銀顆粒症 (AGD) を含む合併tau病理を保有する例をPART+Cとして抽出し,臨床病理学的背景をPARTと比較した. さらにPART例から合併病理を全く有さないPure PARTを抽出し,検討した. [結果] D-PART 469 例(29.5%, 平均65.0才) , P-PART 250 例(15.7%, 平均71.9才) , Control 208例(13.1%, 平均52.0才),AD 133例(8.4%, 平均81.7才), PART+C 235例(14.8%, 平均78.4才)であった. 全PART症例中, Pure PARTは629例であった. PART, Pure PARTは60才以下の若年齢でも認められる一方で, 加齢によって減少した. 80才以上のPARTの21.3% (23例) でLewy病理を合併し, 80才以下の合併頻度は 10.3% (63例)であった. また,PART+Cの23.4%が80才以上で,88.5%, 20.9%がAGD, 進行性核上性麻痺を伴っていた. [考察] 現行のPART基準では将来amyloid-βの出現に伴ってADに移行する可能性がある若年症例が多数抽出され, 高齢者の多くで合併tau病理, 特にAGDを有することが明らかになった. PARTを独立した疾患概念として確立する場合には低年齢層の除外が必要であり,AGDを独立した疾患概念と理解する場合にはPARTの合併病理として許容すべきでないと考えるが, それ以前にPARTの存在意義自体についても議論が必要と考えられる.