理事長だより No.10
2020年9月3日 14時22分日本神経化学会
会員各位
新型コロナ、梅雨と豪雨、酷暑と、自然に翻弄される日々が続いておりますが、会員の皆様は如何お過ごしでしょうか?
9月を迎え、いよいよ第63回日本神経化学会八王子大会「議論で深める神経化学」が迫って参りました。非常に難しい状況のなか、大会長の馬場広子先生を中心に、組織委員会、プログラム委員会の先生方が、斬新なアイデアと果敢な行動力で準備を進めてくださいました。今回の日本神経化学会大会はWeb開催として行われます。
Webでの開催も含め、これまで63回の本大会の歴史の中で「初めての・・・」というイベントや試みが目白押しです。色んなことにチャレンジしていただいています。発表される方はもちろん、そうでない方も是非ともこの「新しい日本神経化学会大会」に参加して、一緒に「議論を深めて」頂ければと思います。いつもとは一味も二味も違う神経化学が体験できると思います。
また今回は、若手育成セミナーも従来の合宿形式でなくWebによる「新しい若手育成セミナー」です。合宿による密なコミュニケーションはできないかもしれませんが、Web形式ならではの楽しみ方もあります。一味違う若手セミナーを経験し、新しい楽しみ方を発見していただければと思っております。
今回のコロナ禍で、世の中の様々な事が変化し、また変化を余儀なくされました。従って、大会の方法が変わるのもある意味自然かと思います。変化は時に大きな痛みや苦痛を伴いますが、うまく乗り越えると思いもよらない大きな発展に繋がると思います。今回の大会が契機となり、本会が皆様にとってより有益、刺激的かつ心地よい会になっていくことを願っております。ただし、日本神経化学会のモットーである「分子・物質で脳を解き明かす・治療する」「議論を尽くす」「若手を育成する」は、変えることなく継承していきたいと思っております。
前回の理事長だよりは、新型コロナ騒動に触れるのみになってしまいましたが、今回はこれまでの1年数ヶ月を振り返りながら、今後の日本神経化学会について述べたいと思います。
1 情報の発信・受信の強化
今期の目標の1つが、学会の情報をきちんと発信・受信する仕組みを構築することでした。受信につきましては、HP上に「目安箱」を作りました。少しずつご意見を頂けるようになりましたが、まだまだ十分には活用されていないように思います。どんなご意見・苦情でも結構ですので、自由にお寄せ頂ければと思います。
情報発信につきましては、第1弾としてHP上に「特別寄稿」のコーナーを作りました。これまで日本神経化学会は、若手研究者育成セミナー、道場等を介し、若手研究者の育成に力を入れてきました。これにより本当に実力のある若手が育ってきていると思います。一方で、これまで日本神経化学会を作り、発展させて下さった先生方と若手が交流する仕組みが十分でないと感じておりました。温故知新というわけではありませんが、伝統ある日本神経化学会の「これまで」を知ることは、「今後」の発展に大きなプラスになると考えております。
私自身、本学会に入会して今年で34年目になりますが、本学会の創世期の事、その当時の先生方のご活躍等々、知らないことが沢山あります。そこで、出版・広報委員会の皆さんのご尽力により「特別寄稿」のコーナーを作って頂き、「私と神経化学」と題してリレー形式でメッセージを頂くことに致しました。
既に、御子柴克彦先生、永津俊治先生、遠山正爾先生、井上和秀先生から、大変素晴らしいご寄稿を頂いています。先生方の文書は、単に昔の日本神経化学会の様子が記載されているわけではなく、各先生の研究者としての哲学や生き様が力強く記されており、大変読み応えのある文章です。会員の皆様、特に若い世代の皆様には、是非ともお読み頂ければ大きな勇気と希望、さらに今後の指針を頂けるかと思います。今後も、色々な先生方に原稿をご依頼することになるかと思います。どうぞ思いの丈を存分に語って頂ければ幸いです。
また、他にも特別寄稿として永津俊治先生から「永田豊先生のご逝去を悼んで」、平山友里先生から「吉田慶多朗君を偲んで」の文書も頂いております。こちらも是非ともお読み頂き、それぞれの先生に再度思いを寄せて頂ければと思います。
また第2弾として、同じくHP上に「委員長だより」を作りました。これまで学会の活動や方針等は、主に理事長だよりとして発信をして参りましたが、学会活動は各種委員会の献身的な活動により成り立っています。しかし、各委員会活動の実際は意外と知られていないと感じていましたので、各委員長にも「委員長だより」として情報発信をお願い致しました。
既に6つの委員会委員長からご寄稿をいただいています。各委員会の活動報告にとどまらず、各委員長のメッセージや哲学が記されている大変味わい深い文書ばかりであります。こちらも是非ともお読み頂ければと思います。これらの発信により、日本神経化学会を良く知っていただき、より身近に感じていただければと思います。
2 若手育成
将来計画委員会及び若手育成委員会を中心にした若手育成セミナー、道場等の若手神経化学者を育成する取り組みにより、神経化学会の若手が着実に育っているのを実感しております。また、本会を好きになってくださる若手も増えているように思っています。
例えば、若手セミナーで活躍され、2019年度日本神経化学会奨励賞を受賞された吉田慶多朗先生(慶應大・精神神経科学)が、第10回日本学術振興会育志賞を受賞されました。本学会推薦による受賞でありますので本当にうれしいニュースであり、3月の理事会ではモニター越しですが受賞式も行いました。しかし大変残念なことに、吉田先生は6月に急逝されてしまいました。言葉もありません(「特別寄稿」の平山先生の投稿をご覧ください)。
若手の皆さんの活躍をサポートすることは、本学会の大きな柱の一つです。今後も積極的に応援を継続していきます。新型コロナ禍で、研究が思うように出来なくて焦っている若い研究者の皆さんもいらっしゃると思います。若手同士で意見を交換したり、学会が出来ることを話し合う機会を作りたいと思っています。是非とも自由にご意見を頂ければと思います。また今期は将来計画委員会を中心に、PIになる前の若手研究者(準PI)のサポートの仕組みについても考えていただいています。こちらも新しい魅力的な仕組みが出来ると思います、ご期待下さい。
3 学会運営の健全化
コロナ騒動以来、理事会、各種委員会等はWeb会議で行われております。しかし、本会はすでに昨年夏の理事会で、学会運営の健全化の一つとしてWeb会議化の推進について議論し、昨年秋から執行部会や各委員会はWeb会議の試運転を行って参りました。昨年からの準備等があったために、今回、各種会議のWeb会議化は大変スムーズであったと思います。新型コロナ感染症が収束した後も、各種会議はWeb会議を基本にいたします。もちろん、大会が対面式で行われる場合、また対面式がよりふさわしいと判断された場合には、その限りではありません。柔軟に対応していく予定です。
新型コロナウィルスとの戦いは長期戦になりそうです。これまでの経験やアイデアが通用しないことも沢山でて参りました。ポストコロナ、ウィズコロナの学会運営に際し、是非とも皆様の斬新で画期的なアイデアを沢山お寄せいただきたいと思います。特に若い会員の皆様、経験等は関係ありません。柔らかい頭で考えた面白い提案を沢山頂けると嬉しいです。しかし先ずは、会員の皆様が無事にこの難局を乗り越えること、さらに本騒動が一日も早く収束することをお祈りしたいと思います。
令和2年9月3日
理事長
小泉修一
小泉修一
「委員長だより」: https://www.neurochemistry.jp/C_letter/