理事長だより No.12
2021年3月31日 16時11分日本神経化学会
会員各位
本年の桜の開花は例年よりもだいぶ早く、私の大学周辺でも既に満開です。会員の皆様は、年度末及び新年度の処理・準備でお忙しい毎日を迎えられていると思います。新型コロナ感染症の動向も先が見えない状況が続いておりますが、来年度以降はもう少し落ち着いた日常が戻ることを切に願いたいと思います。
さて先日3月26日、2021年第一回日本神経化学会理事会が開催されました。先ずは、来期の新しい理事長として岡野栄之先生(慶應義塾大学医学部生理学)が選出されましたことをご報告致します。新しい体制も大方決まり、来年度以降、岡野先生を中心に様々な新しい仕組みや仕掛けが展開されると思います。会員の皆様も、どうぞ期待して頂ければと思います。また、本学会へのご協力及びご理解を、引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、2年間の理事長を終えるにあたり、先ずは皆様のご協力及び叱咤激励に心からの感謝を申し上げたいと思います。本当に有り難うございました。以下に、ごく簡単ですが2年間の活動の所感と反省を述べたいと思います。
2019年3月、平成が終わる直前に理事長を拝命し、直ぐに時代は令和に変わりました。色々と改革を行うよいタイミングであり、また同時に本学会の長く素晴らし伝統を再確認する必要を強く感じ、「伝統の継承と改革」を掲げて活動を開始しました。
皆様ご存じのように、本学会は「化学物質・分子により脳・神経の仕組み、さらに疾患のメカニズムを解き明かす」ことでサイエンスと社会に貢献するとの理念を掲げています。当時としては非常に先進的であったと思います。またこの理念実現のために、徹底した「深い議論」及び「若手育成」をポリシーとして、他学会ではなかなか見られない「真に中身の濃い」学会での議論、若手育成活動が行われています。先ずはこの伝統を確実に継承すること、さらにより発展させる必要です。
そのためには、この素晴らしい伝統を会員、特に若手会員の皆様に知って頂き、神経化学会を本当に理解し、好きになって頂くこと、会員間の距離を縮めることが、遠回りのようですが最も効果的ではないかと考えました。そこで和田前理事長が開始された「理事長だより」を継続するとともに、「委員長だより」を新設し、委員会の情報や各委員長のお考え等を発信して頂きました。また「私と神経化学」というコーナーにより、OBの先生方からのご寄稿を掲載する企画を開始し、伝統を知ることに加え、若手研究者へのエールを沢山頂くことが出来ました。
私自身も「私と神経化学」の配信は大変楽しみで、いつもOBの先生方の文章に感動し、また多くを学ばせて頂きました。お忙しいところ貴重な原稿をご投稿頂きました先生方に、改めて感謝申し上げます。本企画が継続的となり、OBの先生方と会員、特に若手会委員の皆様との精神的な絆が深まり、研究のエッセンス、日本神経化学会の理念が継続的に伝承されることを期待しております。また情報を収集する手段として「目安箱」を設置いたしましたが、こちらはまだまだ使用される頻度が低く、何らかの改善が必要と思っております。
適切な情報発信と意見の収集は、長い目で見た際の学会活動に、非常に重要と思います。今期はその基盤が出来たと思っております。これを支えていただきました各委員会の先生方、特に竹林出版広報委員長及び山岸副委員長はじめ出版広報委員の先生方には本当に感謝いたします。
最も大きな改革は学会の法人化でした。2021年1月8日「一般社団法人日本神経化学会」としての登記を終え、今後は任意団体ではなく「一般社団法人」として活動することになります。これにより、本学会の信用がこれまで以上に高まり、より質の高い活動、重要度の高い活動を行うことが容易になることが期待出来ます。しかし理事長だより前号にも記載しました通り、完全な引っ越しにはもう少し時間がかかります。私の任期中に終了できなかったことは、大きな反省点であります。現在、次の総会までに法人化を終える計画で作業が進んでおります。
法人化完了までは、責任をもって法本作業を行う予定ですので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
今期は、半分以上の期間でwithコロナでした。新型コロナとの戦いが学会活動にも大きく影響しましたが、会員の皆様のおかげで何とか乗り切れ、また逆に飛躍できた場面も多くありました。例えば、昨年秋の日本神経化学会大会は、63年間の大会の歴史のなかで初めてのweb開催となりました。大会長の馬場先生をはじめ委員の皆様の挑戦と努力で、webでも深い議論ができること、またwebでも若手育成セミナーが可能であること等々、大きな成果が得られた学会になったと思います。また他学会との連携も、withコロナ下でむしろ進んだと思っております。
コロナで後ろ向きになるのではなく、前向きに捉えて活動したこと、大変よかったと思っております。
翻って私自身ですが、色んな場面でコロナを言い訳にしていたこともありました。確かにこれまで経験したことが無い事態で、世の中が大きく変化する非常事態であった訳ですが、このような時だからこそもっと思い切った大きな改革が出来たのではないかと、今は反省しているところです。学会の魅力をもっと会員の皆様に伝えること、国の科学政策へ学会として関連する仕組み作り等々、改革が不十分でした。また、会員数が徐々に減少しておりますが、その対策が手薄になってしまったことも大きな反省点です。これらは一朝一夕には解決出来ない課題でありますが、来期も含め継続的な対応が必要と考えております。
以上雑駁な所感をつらつらと記載いたしましたが、今から60数年前に掲げられた本学会の先進的な理念を実現できる時代が、今まさにやってきていると思います。従って、日本神経化学会の未来は実はとても明るいと思います。今後とも、会員の皆様のご理解とご協力により、本学会がさらに魅力的な学会となること、さらに本学会の活動を通じて会員の皆様の研究、教育、診療活動が益々発展することを祈念したいと思います。
最後に、会員の皆様、執行部、理事、監事、委員長、委員の先生方、事務局の皆様のサポートのおかげで、なんとか今期の活動を行うことができました。改めて感謝申し上げます。本当に有り難うございました。
令和3年3月末日
小泉修一