和田  圭司 2017/3-2019/3

理事長挨拶③

 日頃より会員の皆さまには学会の運営、活動にご協力を賜りまして厚く御礼申し上げます。日本神経化学会はおかげさまをもちまして1958 年の設立以来順調な発展を遂げております。先日第61 回大会を仲嶋一範大会長のご尽力のもと神戸の地で開催することが出来ました。60 年を一つの区切りとしますと新たな出発にふさわしい素晴らしい大会となりました。
  さて、私の理事長としての任期は2019 年3 月までとなります。これまで無事に務めてこられましたのも会員の皆さまの温かいご指導、ご支援の賜物と感じ入っております。就任時の抱負としまして、①学会財政の健全化、②理事会、委員会活動の透明性強化と会員の皆さまとの情報共有促進、③会員満足度の向上と学会のブランド化を上げました。①につきましては、前理事長今泉先生の時に理事のオンライン選挙が導入されたことに加え、大会プログラム集を学会誌から独立させ、また学会誌そのもののオンライン化を図ることで少し見通しを立てることが出来ました。②につきましては、理事長便りの配信、理事や委員会委員長のHP での紹介に努めました。理事会の活動はHP からも読めますが、それぞれの委員会が何をしているのかと言うことにつきまして、もっともっと情報発信すべきであったと反省しております。②の個々の取り組みとしましては、大会期間中に「理事長と話をしてみよう」コーナーを設置しました。鍋島トラベルアワードは大会中にお一人の会員からご意見を頂いたことで実現しています。神経化学の若手研究者育成セミナーにつきましても別の会員の先生からご寄付を賜りその運営が楽になるだけでなく、新たな受講者層の掘り起こしにも繋がりました。③につきましては、②とも関連しますが情報を発信することで会員以外の方々に日本神経化学会の認知度を高める努力を行って参りました。理事長便りにも書きましたが、「若手育成セミナー」でグーグル検索をしますと、当会の取り組みが真っ先に表示されます。即日配信などSNS を使った効果も大きいと思います。また、大会期間中の「若手道場」を日本神経化学会の若手研究者育成セミナーに続く学会の重要なイベントであると2018 年秋の理事会で位置づけました。今後、若手道場が当会の第二の目玉として発展すると信じております。さらに、子育て支援篤志基金を設け、その運用を開始しました。
  ①、②、③を通しまして、皆さまから見て少しでも風通しが良くなりましたでしょうか?  遠慮無く意見が言える学会になりましたでしょうか?  やり残したことも多々ありますが、①、②、③いずれも私一人の力でなく、理事の方々、委員会委員長並びに委員の方々、若手育成セミナーの世話人の方々、さらには会員の方々全てのご協力があってこそのものでした。日本神経化学会は若手研究者を大事にし、育てるというところに一番の特色が有ります。自分の教室の若い方々だけでなく他の教室の若い方々にも気を配り、温かく接し、その成長を喜ぶことに当会の真髄があります。その意味で、若手育成セミナー出身者を如何に学会活動に参加していただくように繋げるかが課題でありましたが、案ずるより産むが易しでしょうか、若手育成セミナー出身者によるシンポジウムも実現し、何よりもまして奨励賞受賞者に若手育成セミナー出身者が続いています。喜ばしい限りです。次期理事会がさらに当会の良いところを伸ばし、当会の一層の発展に向け努力を払ってくれるものと信じております。
  2021 年、International Society for Neuroscience の大会が京都で開催されます。国内外に、日本神経化学会の良さとその実力を示す絶好の機会となります。その第一弾とも言えるべき「Neurochemistry International 誌日本神経化学会60 周年記念号」が2018 年秋に発行されました。2019 年は日本神経科学学会との合同大会が那波宏之大会長のもと新潟で、2020 年には馬場広子大会長のもと八王子で大会が開催されます。このように日本神経化学会は日々歩みを進めております。「来年もまたこの大会に来てみよう」という思いがその歩みを支えています。会員の皆さまが居られてこその日本神経化学会です。これからも、皆さまとともに成長していく学会です。引き続き、当会へのご要望、ご意見、ご批判を賜ることが出来ましたら幸甚です。ご遠慮なく学会事務局までお知らせください。
  いままでのご指導、誠にありがとうございました。会員の皆さまのますますのご健勝とご活躍を祈念しております。

2019年1月
国立研究開発法人
国立精神・神経医療研究センター
神経研究所 所長
和田  圭司




理事長挨拶②

日頃より会員の皆さまには学会の運営、活動にご協力を賜りまして厚く御礼申し上げます。日本神経化学会はおかげさまをもちまして1958 年の設立以来順調な発展を遂げ、先日第60 回記念大会を福永浩司大会長のご尽力のもと仙台の地で開催することが出来ました。60 年と言いますと還暦と言う言葉がすぐ思い起こされます。我が身を振り返りますとあっという間の60 年でしたが、その時その時の出来事を一つ一つ思い返しますと、実は非常に長い年月であったと言うことも実感されます。学会の歴史を振り返りますと、皆さまの頭の中にはどのようなことが去来するでしょうか。

 私は、日本神経化学会が歩みましたこの60 年の間、諸先生の並々ならぬご努力が有り、高い志とほとばしる情熱があり、そしてその中で育った優れた後進が次々と先輩を超えていき、今に至ったのではないかと考えております。研究はワクワク、ドキドキの世界ですが、サイエンスに真摯に向き合い、かつサイエンスを楽しむ土壌が学会全体に浸透したがゆえの60 年と考えています。これからは、60 年の伝統というものを単に維持するのでなく、日本神経化学会の歩むべき道を明確にして、良いところは伸ばし、あらためるべきところは是々非々で臨み、一歩一歩会員の皆さまとともに次の高みに登っていきたいと考えております。あらためましてご支援、ご協力をお願い申し上げるしだいでございます。
 私の理事長としての抱負ですが、前理事長の今泉先生が果たされました改革をさらに推進し伸ばすことが務めと思っております。私の任期中に、①学会財政の健全化、②理事会、委員会活動の透明性強化と会員の皆さまとの情報共有促進、③会員満足度の向上と学会のブランド化を進めたいと考えております。既に理事の先生方や委員会委員の先生方のご協力のもと、いくつかの変革が進んでおります。

 ①の財政健全化につきましては、大会プログラム集の作成について学会と切り離し大会長の裁量で自由に編集できるようにしました。学会誌「神経化学」のペーパーレス化につきましても会員アンケートを実施し、その方向性を先日の総会で承認を頂きました。1 年後からはペーパーレス化を実施したいと考えております。印刷物として欲しいというご要望も一部にはありますので、ご希望の方には実費という形で今後提供を続けたいと考えております。このように支出のあり方を見直し、収入増を図り、学会活動に必要なところには投資を惜しまないという経営で臨みたいと考えております。今後も会員の皆さまには施策上必要に応じてアンケートをお願いすることが出てくるかと思いますが、ご協力をどうぞよろしくお願い申し上げます。

 ②の透明化と情報共有につきましてはすでにご案内しましたように、まず今回初めて委員会委員を公募し、多数の会員の応募を頂きました。役員、委員の選出につきましてお友達人事にならぬよう適材適所の精神をこれからも推し進めます。また、学会ホームページにおきまして理事長だけでなく、役員、委員会委員長の写真と抱負などを掲載するようにしました。役員の顔と名前が会員の皆さまの中で一致することが大変重要です。さらに役員、委員会委員の考えが分かれば、共感にしてもご批判にしてもフィードバックいただきやすくなると考えております。
 ホームページにおける「見える化」だけでなく、理事長便りを随時メール配信し、フェイスブックからも発信しております。さらに仙台大会では「理事長と話をしてみよう」コーナーを設けました。今後も会員の皆さまとの対話を継続し、発進力強化に努め、頂きましたご批判、ご要望の声に一つ一つ向き合い改善やご要望の実現を果たしていきたいと考えております。
 委員会の活動につきましては、学会誌でご案内するだけでなく、タイムリーに情報をお伝えできるようメール配信を活用しているところです。委員会のあり方につきましては、臨床の先生方との連携をより深化させるため臨床連携委員会を新設いたしました。また、科学技術は日進月歩ですが、少し離れたところの分野の出来事になりますとなかなか普段のアンテナに引っかかってこないことがあります。学会の活動がガラパゴス化、たこつぼ化することのないようこれまでの連合大会委員会を改め連合大会・多分野交流委員会とし、様々なサイエンスとの連携強化をめざすべく新たなスタートを切っています。

 ③のブランド化につきましては、ブランド化という言葉自体がなじみがないかもしれません。しかし、ブランド化は学会のビジョン、ミッションを適確に理解いただき、学会活動に対する賛同を内外から幅広く集めるために必要不可欠なものです。自分たちで「我が学会は素晴らしい」と言ってもこれはブランド化されたとは言いません。第三者が「日本神経化学会は素晴らしい」と言ってくださって初めてブランドとして認めていただいたことになります。日本神経化学会の特色はなんと言いましても創造性あふれる、源流性に富んだ研究を志向される先生方が集い、多くの優れた研究成果を生み出してきたことにあります。また、切磋琢磨する中にも思いやりのある雰囲気が存在するのも特色です。その雰囲気は個々の教室を越えて学会全体を包みこんでいます。2017 年で10 年を迎えました「神経化学の若手研究者育成セミナー」はその代表例でしょう。金沢大会で初めて催されました「わくわく道場」は昨年復活し、今年も行われました。口演重視の若手用プログラムとして若手育成セミナー同様に今後も発展させ、学会の目玉として定着させていく所存です。
 日本神経化学会が持っておりますこれらの特色は今流行の言葉で言うならばまさに学会のバリューであります。このすばらしいバリューの内容が広く一般の方々に浸透することがブランド化において重要な歩みになります。そのためには、会員の皆さまに満足のいく学会であって、「来年も大会に参加してみよう」と思ってくださることが重要になります。年次大会も単に開催するだけでなく広い意味で経営感覚と戦略を持って臨んでいく必要があると考えております。これらのことを実現するべく新たにブランディング委員会を設けました。従来の各委員会を縦軸としますと横軸機能を持った委員会です。
 日本神経化学会はAsian Pacific Society for Neurochemistryに属し、その上位団体であるInternational Society for Neuroscience の主要なメンバーとして貢献してきています。既にご報告いたしましたが、現在のISN のPresident は会員の池中一裕先生、APSN のPresident は同じく会員の和中明生先生です。
国際組織において日本神経化学会の会員がPresident を務めることは大変名誉なことであります。ISNやAPSN の期待に反することのないよう、日本神経化学会も国際活動におきまして十分な貢献を果たしていきたいと考えております。
 また、既に理事長便りにてご案内いたしましたが2021 年のISN 大会は京都で開催されることが決まりました。日本神経化学会の長年の夢が実現することになります。日本発のすばらしい研究を世界の人々に知って頂くだけでなく、会員お一人お一人が世界中の研究者とお友達になる大変良い機会です。会期は8 月22 日から26 日の予定です。皆さま、ご予定の確保を今からよろしくお願いいたします。
 嬉しいニュースが続きますが、第60 回記念大会におきまして大変ありがたいお話しを会員の先生方から頂きました。次代を担う若手研究者が育ち、学会のメンバーとして今後も継続的に活動いただけるよう新たなトラベルアワードを創設し、また若手育成セミナーの一層の充実に反映していく予定です。詳しくは委員会報告、理事長便りなどでご案内申し上げます。
 今後の大会でありますが、2018 年は仲嶋一範大会長のもと日本生物学的精神医学会との合同年会が神戸(9 月6 日~8 日)で、2019 年は那波宏之大会長のもと久しぶりになりますが日本神経科学学会との合同大会が新潟(7 月25 日~28 日)で行われます。今から日程の確保をお願いいたします。2020 年の詳細はこれからになりますが馬場広子大会長のもと執り行われます。
 日本神経化学会は会員の皆さまが居られてこその学会です。学会の活動は独りよがりでなく広く社会に開かれたものであるべきと考えます。研究は性急にするものでなく、腰を落ち着けて優れた発想のもと地道に行われるべきものです。会員の皆さまが楽しむことが出来、研究成果を上げ、人のつながりの輪が増えていくよう支援するのが私の役割と考えております。そのためにも学会運営へのご批判、ご意見はいつでもご遠慮なくお知らせください。
 次の60 年、日本神経化学会はいかにあるべきかにつきまして最初のご挨拶といたしました。これからもご指導のほどどうぞよろしくお願い申し上げます。

2018年1月 
国立研究開発法人
国立精神・神経医療研究センター
神経研究所 所長
和田  圭司




理事長挨拶①

 
2017年4月から2年間理事長を務めることになりました和田圭司と申します。日頃より会員の皆さまには当学会の運営にご協力を賜りまして誠にありがとうございます。
 日本神経化学会は神経化学懇話会を母体とし、1958年に第1回の大会が開催されました。1962年には会員制度が施行され、学会誌「神経化学」も同年から発行されています。世界には神経化学に関する学会が多数ありますが、その中で日本神経化学会は最も古い歴史を誇ります。
 2017年は設立60周年記念大会が福永浩司大会長のもと仙台の地にて開催されます。また60周年を記念しましてJournal of Neurochemistry誌において特集論文が掲載され、Neurochemistry International誌からは特集号が発行されます。
 60年と言いますと還暦を思い浮かべる方も多いと思います。還暦には生まれ変わるという意味も込められています。当学会もこれまでの歴史を振り返り、新たな気持ちを持ってさらなる発展をめざしたいと考えています。
 日本神経化学会の特色はなんと言いましても研究面では分子を中心に疾病のメカニズム解明に迫ることであり、教育面では議論を中心に学生、大学院生、若手研究者の方々を大事にすることであります。研究の醍醐味を味わっていただき、次代のリーダーとして羽ばたくよう「神経化学の若手研究者育成セミナー」を2008年からスタートさせています。「神経化学の若手研究者育成セミナー」は今や当学会の目玉として成長してきています。
 国際面では、Asian Pacific Society for Neurochemistry (APSN)に属し、International Society for Neurochemistry (ISN)の活動に貢献しています。現在、APSNのpresidentは会員の和中明生氏であり、ISNでは同じく会員の池中一裕氏が現在treasurerとして活躍中です。ISN理事として活躍いただいている会員も複数おられます。つまり当学会は国際的にも大変重要な存在となっています。
 このような国内外の活動は会員の皆さまの日頃からのお力添えがあってこそのものです。改めまして厚く御礼申し上げます。
 今後も神経化学会の特色をさらに伸ばし、また改めるべきところは改めるという是々非々の姿勢で学会運営に臨んでいきたいと考えています。また、新たなことにも常にチャレンジする能動的な学会でありたいと考えています。さらに、学会外の一般の方々に当学会の活動についてご理解とご支援をいただくため常に開かれた学会でありたいと考えています。
 さて、会員の皆さまにとりまして当学会はどのように映っているでしょうか? 学会の運営には会員の皆さまお一人お一人のご意見が大変貴重になります。会員の皆さまから「姿かたち」が見えてこその学会であり、愛されてこその学会であります。自分の知らないところで学会が運営されているという思いをもしお持ちでしたらご遠慮なく私までご意見、ご批判、ご提案をお寄せいただければと存じます。会員の皆さまと一体となった運営こそが当学会のあるべき姿と考えております。お一人お一人が「参加している」という実感を持てるよう会員満足度の高い学会をめざしていきたいと思います。
 当学会は、会員数や財務状況において改善すべきいくつかの課題を抱えています。従来と同じことを行っていたのでは発展は望めません。歴代の理事長をはじめ多くの方々のご尽力で変革は進みつつありますが、まだまだ道半ばです。世の中の状況はめまぐるしく変化しております。真理を追究する科学の姿勢を忘れてはいけませんが、様々なことにも目を向け10年20年30年後のことを考えていかねばなりません。情報社会の現代、AIをはじめ社会に変革をもたらすであろう動きが活発です。たこつぼ化することのないよう、ガラパゴス化することのないよう、開かれた学会として必要なものは取り入れ、常に一歩先を歩む学会でありたいと考えています。また年次大会におきましては、「参加したい大会」とは何かを常に考え、参加する方々にとりまして「来年もまた来よう」と思っていただけるように学会や大会のブランド化を図りたいと思っています。
 研究はワクワクドキドキという言葉が当てはまるように本来楽しいものです。会員お一人お一人が当学会の財産です。ワクワクドキドキの楽しさを共有できる一体感が学会というファミリーを醸成します。今後とも当学会の発展のため、皆さまからのご指導とご協力を心よりお願い申し上げます。

2017年4月 
国立研究開発法人
国立精神・神経医療研究センター
神経研究所 所長
和田  圭司

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理事長便り

理事長便り No.19

2019年2月22日 09時00分

日本神経化学会
会員 各位

陽が日に日に長くなるのを実感する今日この頃ですが、皆さまにおかれましてはお変わりございませんでしょうか。先におこなわれました理事選挙では投票を頂き誠にありがとうございました。立候補制を導入し電子投票となってから2回目の選挙でしたが、今回も滞りなく実施されました。結果につきましては学会ホームページ会員メニューで公開されておりますので、ご確認ください。

既にご案内しましたように、私の理事長としての任期は次回理事会が行われます3月1日までとなります。これまで頂きましたご指導に厚く御礼を申し上げます。2年間という短い時間でしたが、私の顔と考えが皆様に届くよう、新たな試みを行って参りました。この理事長便りもその一つです。試みとしてはいかがだったでしょうか?
今回を以て、私の理事長便りは最終回となります。これまでお付き合いくださり誠にありがとうございました。

さて、お気づきの方も居られるかもしれませんが、鍋島トラベルアワードに応募の際、「日本神経化学会に望むこと」を書いていただいております。現在選考中ですが、応募者の皆さまのご意見はいずれも「その通り!」と唸るものが多く、大変貴重なものでした。頂きましたご要望を実現するべく次期理事会に申し継いでいきたいと考えております。若い世代の方々の生の声に触れることは、やはり喜びです。トラベルアワードに限らず若い方々のご意見を取り上げる仕組み作りを是非次期理事会でも検討していただきたいと考えております。

次回の日本神経化学会大会は那波宏之大会長の下新潟で行われます。2019年7月25日から28日までです。6年ぶりの、日本神経科学学会との合同大会となります。お一人でも多く参加登録され、合同大会を楽しんでくださるようお願いいたします。
http://www.neuro2019.jnss.org/index.html

季節の変わり目、会員の皆さまにおかれましては引き続きご自愛ください。
これまでのご支援、ご愛顧誠にありがとうございました。

2019年2月20日
理事長
和田圭司

理事長便り No.18

2019年1月11日 09時00分

日本神経化学会
会員 各位

明けましておめでとうございます。2019年が始まりました。会員の皆さまにとりまして良き一年となりますよう心よりお祈り申し上げます。

おかげさまで日本神経化学会は、会員の皆さまのご尽力の賜物としてこれまで成長を遂げて参りました。本会の目指すところは、神経化学研究を通して世界の人々の健康やしあわせに貢献することです。そのために皆さまの研究環境が少しでも良くなるよう、また皆さまの本会に対する満足度が少しでも高くなるよう、これからも心がけていきたいと考えております。本会は常に、改革を通した発展を目指しています。今週末から理事選出投票が行われ3月からは新しい理事会がスタートしますが、引き続き会員の皆さまにおかれましてはご指導のほどをどうぞよろしくお願い申し上げます。

本会のことを少し離れますが、昨年末私の所属する研究所で、「現代生命科学の終焉と再興」というテーマで職種、年齢を問わず広く意見を交換する場を持ちました。これから書きますことは亥年はじめの妄想話としてお付き合いください。

その昔、プトレマイオスが2世紀に体系化してから天動説は、コペルニクスやガリレオ、ケプラー達が登場するまで、1000年以上にわたり世の中の常識的考えでした。この時代に生きた人々は、よもや地球が動いているとは気も付かなかったかもしれません。しかし、近世に入りその体系、あるいはその体系から生み出される世界の価値観はがらりと姿を変えることになりました。天文学に関わる人々にとっては黒船の襲来どころではなかったかもしれません。

私たちが今行っている生命科学も実は天動説のような運命をたどることはないだろうかということを議論しました。
今の生命科学は理論体系を持っているように見えて、実は複雑系を説明する理論体系そのものを持っておりません。人間は複雑系の代表的な存在かと思います。人間や生命を説明するためにこのままで良いことはありません。では現代の生命科学はやがて複雑系なら複雑系を解き明かす理論体系を持つまでに成長するでしょうか? あるいはまったく別次元のところから新しい理論体系を持った生命科学が興ってくるのでしょうか? 例えば我々がネアンデルタール人とすると、ホモサピエンスに当たる人々が新しい生命科学をひっさげて現れるでしょうか? 現れるとするといつどのようにして現れるのでしょうか。

そういうことを議論したわけです。もちろん結論は出ませんし、夢物語のような話で終わったわけですが、キーになるのは、数学や工学、あるいは量子力学のような物理学ではないかという話になりました。それに加えて、文系的価値観、さらに東洋と西洋を分けた場合、東洋的価値観も取り入れる必要があるというところまで話が進みました。いずれにせよその道の専門家が、生命科学に興味を示してくだされば良いですが、そうとは限らないだろうという話にもなりました。では、誰が変革をもたらすのでしょうか? 

eスポーツという言葉があります。eスポーツがまさかオリンピックの正式種目になるかもしれないというところまで価値観を持つとは想像もしていなかった人が多いのではないでしょうか。まったく異なる次元でのゲーム感覚が、今やスポーツの一つとしても考えられるようになってきています。生命科学に変革がもたらされるとすると、数学や工学や量子力学であれ、ゲーム感覚として捉える人々ではないか、つまりゲーマー、あるいはオタクと言ったら失礼になるかもしれませんが、そのような人たちではないかという話になりました。eバイオというわけです。従来のバイオに加えてeバイオとの融合が、新しいものを生み出すのではないかという話になったわけです。

さて、現代生命科学は、評価軸で言いますと長短は得意としますが、高低で表される事象に対しては少し弱いかもしれません。例えば、健康長寿という言葉があります。「長」という漢字が使われているように、長いか短いかが尺度になります。でも中には、私自身は短くても構わないという人も居られるかもしれません。個人の人生観になりますので、短くても太くてしあわせであれば良いという人に対して、それは間違った考えだという指摘はそぐわないかもしれません。理事長便りNo.13で、しあわせをテーマにした研究のことを書きましたが、しあわせは、長いか短いかでなく、程度が高いか低いかという言い回しになります。つまり、高低が尺度になります。

このように考えますと、これからの生命科学は少なくともこれまでの長短に加えて高低も目的に要求されるようになるのではないかと思えます。しあわせとは何かを問題にし始めますと、理系の考えだけでは片付きません。文系的な価値観も入れて初めて捉えていけるようになるのではないでしょうか。

妄想話が尽きませんが、まったく別次元の生命科学が興るとしたら、文理融合ではありませんが、異なる複数の価値体系を融合した、異なるゲーム感覚を持った社会(集団)から出てくるような気がします。

寒さ厳しい日が続きますが、会員の皆さまにおかれましては、くれぐれもご自愛ください。

2019年1月8日
理事長
和田圭司

理事長便り No.17

2018年12月18日 11時26分

日本神経化学会
会員 各位


年の瀬も押し迫って参りました。東京では寒さが一段と厳しくなってきています。2018年は皆さまにとりましてどんな年だったでしょうか? 平成最後の暮れとして記憶に残るのではないでしょうか。

さて、私の理事長としての任期も来年3月までとなりました。あと何回、理事長便りをお届けできるか分かりませんが、最後まで理事長の顔と考えが見える様、配信していきたいと考えています。

前回の理事長便りでご案内しましたように、ただいま理事選挙に向けて準備が進んでいます。立候補の受付が今月16日に終了いたしました。年が明けますと投票になります。既にご案内していますように、理事選はオンライン化されています。会員の皆さまは投票最終日まで候補者の方々の抱負を読むことができるようになっております。日本神経化学会は会員お一人お一人の力で成り立っております。次期の理事会も、皆さまにとりまして、意見が言いやすい風通しの良い理事会をめざすと信じております。神経化学会の未来を作るのは会員の皆さまです。理事選は棄権することなく、必ず投票されますようよろしくお願いいたします。なお、投票期間、方法などの詳細は追って学会事務局よりご連絡いたします。

今年一年、学会の運営にご協力くださり誠にありがとうございました。
皆さま、どうぞ良いお年をお迎えください。

平成30年12月18日
理事長
和田圭司

理事長便り No.16

2018年10月15日 09時00分

日本神経化学会
会員 各位


酷暑の記憶が残る中、そよぐ秋風に改めて日本に四季があることの素晴らしさを実感するこの頃ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?

既にFacebookでご案内いたしましたが、日本神経化学会設立60周年を記念しましてNeurochemistry International誌特別号が発行されました。第119巻が丸ごと一冊記念号になっています。総説13編、原著論文13編が掲載されております。投稿くださった先生方に改めまして理事長として、また同誌の編集主幹としましても御礼を申し上げます。この特別号は日本神経化学会のActivityを示すものですので、皆さまも是非一度ご覧になってください。Guest Editorを務めてくださった米田幸雄先生、澤本和延先生にも御礼申し上げます。
https://www.sciencedirect.com/journal/neurochemistry-international/vol/119/suppl/C

前回の理事長便りでもご案内しましたが、年内に理事選挙の告示が予定されています。私は今期で理事、理事長を退任しますが次期理事会においても日本神経化学会の更なる発展に向けていろいろな取り組みがなされるものと信じております。その意味におきまして、次回の理事選は非常に重要な選挙になると考えています。ご存じの方は多くないかもしれませんが、本会の理事選は半数改選制(6名、任期4年)です。非改選理事6名、改選理事6名に加えて選挙後に指名される3名の補充理事、さらに2名の監事、計17名で理事会が構成されます。加えて、各委員会(現状では13委員会があります)が理事会の下に設けられています。

今回の理事選では6名の理事の方を選ぶ選挙になります。前回2年前の理事選でもご案内しましたように、候補の方は自ら立候補をして頂く必要があります。選挙管理員会に抱負を含む必要書類の届け出を行ってください。また、会員の皆様から理事にふさわしい方を選挙管理委員会に推薦していただくことも可能です。この場合は、推薦された方のご意向を選挙管理委員会が確認して、立候補される場合は前者と同じ手続きを推薦された方に取っていただきます。なるべく多くの方に立候補頂きたいと考えております。なるべく多くの方のご推薦を頂きたいと考えております。これはあくまで私の考えですが、いまや理事は理事になることが目的ではすまない位置づけになっております。つまり、理事というものは名誉職でなく、行動する職位であり実行する職位です。理事になって仕事をすることを目的にしていただきたいと考えております。こう書きますと、恐れをなす方も居られるかもしれませんが、意欲のある方に取りましては非常にやりがいのあるポジションになってきています。老若男女を問わず意欲のある方は是非立候補頂きたいと考えております。

理事選はオンライン化されていますが、会員の皆さまは応募締切後から投票最終日まで候補者の方々の抱負を読むことができるようになっております。投票は年が明けてからになる予定ですが、投票される会員の皆さまにおかれましては候補の方々を良く熟慮頂き、この人ならばと思われる方々3名を選んで頂きたいと考えております。本会の未来を作るのは、会員お一人お一人の力です。そのためにも、理事選は棄権することなく、必ず投票されますようよろしくお願いいたします。理事はどこかで勝手に決まっているものでなく、お一人お一人が選ばれた結果によるものです。会員参加型の学会を皆さまの力でより高いレベルに上げていきたいと考えております。

残り少なくなるカレンダーの枚数に時の過ぎる早さを感じますが、会員の皆さまにおかれましてはどうぞご自愛ください。

平成30年10月11日
理事長
和田圭司

理事長便り No.15

2018年9月18日 14時00分

日本神経化学会
会員 各位


白露も過ぎ一層秋を感じる季節となりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?
台風、地震が続き、被災されました地域の会員の皆さまには改めましてお見舞いを申し上げます。当会へのご要望等がございましたらご遠慮なく学会事務局までご連絡ください。

神戸での第61回大会も成功裏に終わりました。大会長の仲嶋一範先生始め大会運営に参加されました全ての方々に厚く御礼申し上げます。皆さまにとりましても、改めて大会の素晴らしさを実感された三日間ではなかったでしょうか。来年は日本神経科学学会との合同年会になります。場所は米所、新潟です。7月の開催となりますのでいつもより早めにご準備ください。公募シンポジウムが現在応募受付中です。
締切は10月9日(火)正午です。
http://www.neuro2019.jnss.org/symposium.html


神戸での大会時の理事会・総会ではいくつかの重要な事柄が決まっております。まず最初ですが、評議員の定年制が導入されました。次回ですと、2021年改選時に70歳を越えない会員が評議員の任命対象となります。評議員の流動性を保つことで、学会の一層の活性化を図っていきたいと考えております。関連しまして、当会にご貢献くださっておられる先生方の中でまだ評議員になっておられない方も多くいらっしゃると思います。会則、細則に基づき評議員2名の推薦があれば、研究歴・会員歴5年以上の会員は申請が出来ますので是非ご検討ください。若い会員の方々にも門戸を開いていきたいと考えております。

神経化学の若手研究者育成セミナーは日本神経化学会の重要なイベントですが、大会プログラム中の「若手道場」も当会の重要なイベントとして正式に位置づけられました。若手育成セミナーと並んで将来学会の目玉になると期待しております。ちなみに、育成セミナーは認知度が上がり、「研究者育成セミナー」でGoogle検索をしますと最上位に項目として挙がって参ります。皆さまも是非一度ご確認ください。
今年の育成セミナーも大変な盛り上がりを見せました。その様子はFacebookで発信しておりますので、是非ご覧になってください。世話人の先生方をはじめ運営に関わられました方々に御礼申し上げます。募集がすぐに満員になりましたので、参加が出来なかった方々も多く居られたと思います。この場を借りましてお詫びを申し上げます。
https://www.facebook.com/694342057338890/

さて、学会誌「神経化学」ですが、会員の皆さまに冊子としてお届けするのは次回が最後になります。それ以降はonline publicationになります。
冊子をご希望の場合は実費購入となります。詳しくは出版・広報委員会より御案内しますのでお待ちください。

最後に、今年は理事選挙の年になります。前回より、立候補制、電子投票となっております。改革意欲のある会員には是非理事として学会の運営を担っていただきたいと考えております。意欲のある方は是非立候補ください。規程内であれば老若男女を問いません。人材の多様性が日本神経化学会を支えます。

日ごとに涼しくなっていくかと存じます。会員の皆さまにおかれましてはどうぞご自愛ください。

平成30年9月18日
理事長
和田圭司

理事長便り No14

2018年8月17日 09時00分

日本神経化学会
会員 各位

酷暑をはじめ自然がもたらす圧倒的な力を見た今年の夏でしたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?
立秋、お盆が過ぎ、日が落ちたあとの風に少し、ほんの少しですが、涼しさを感じるようになりました。空の雲も少しずつですが秋の顔になってきています。

先の理事長便りで子育て支援基金のことをご案内いたしましたが、これに関連しまして重要な情報が入りましたのでお知らせいたします。私の所属する機関からJSPSに「科研費で学会出張等に帯同するお子さんに関して直接経費から旅費の支出が可能か」の問い合わせを行いました。その結果、最終的には所属機関の判断になりますが、託児料の支出要件を満たしている限りにおいて、旅費の支出は可能という回答を頂きました。会員の皆さまの所属する機関におきましても、お子様に旅費の支出が可能になるのではないかと思いますので担当部署にご確認ください。

第61回年次大会まであとわずかになりました。既にご案内していますように、日本生物学的精神医学会との合同年会です。また、the Asia Pacific Regional Congress of Biological Psychiatry 2018も同時開催されます。神戸の地で皆さまに再会できることを楽しみにしております。今年も大会初日と二日目の10時から3階ラウンジ(ポスター・展示会場1)で「理事長と話をしてみよう」コーナーを設けます。直接ご意見、ご要望などを拝聴できればと思っております。どうぞご遠慮なく、どなたでもお越しください。

第40回日本生物学的精神医学会・第61回日本神経化学会大会 合同年会
学術集会HP : http://www.c-linkage.co.jp/jsbpjsn2018/

季節の関わり目、会員の皆さまにおかれましてはどうぞご自愛ください。

平成30年8月16日
理事長
和田圭司

理事長便り No.13

2018年7月5日 13時13分

日本神経化学会
会員 各位


今年も半分が過ぎましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?
東京では入谷の朝顔市、浅草のほおずき市の季節となりました。いよいよ夏本番です。

すでにご案内していますように、日本神経化学会では子育て支援篤志基金を設けました。お子様を帯同しないと年次大会に出席出来ないという会員の方も居られます。そのような会員のために、少しでもお子様の帯同に要する費用を支援したいと思って設けました基金です。既に募集が始まっていますので、該当される方はご遠慮なくご応募ください。
https://www.neurochemistry.jp/jo9mwtt26-12/#_12

今回も少し四方山話をいたします。皆さまは「ダーウィンの海」という言葉をご存じでしょうか?
基礎研究と臨床応用の間に横たわる「死の谷」という言葉はかなりポピュラーになりましたので、ご存じの方も多いと思います。「ダーウィンの海」はいわば「死の谷」の後ろに控える大きな海と言えます。医薬品開発に限った用語ではなく、製品化・事業化と産業化・量産化の間に横たわる大きなギャップという意味での経済用語です。「ダーウィンの海」を渡ったところに消費者がいます。消費者に受け入れられない製品はダーウィンの海を渡りきることが出来ず自然淘汰されていく、ということです。

消費者という言葉を会員さらには国民という言葉で置き換えた場合どうなるでしょうか?
開かれた学会とよく言いますが、会員の皆さまはもちろん一般の方々に受け入れられないと真の意味で開かれたことにはならないと言うことではないでしょうか。これからも「ダーウィンの海」を渡る努力をしていきたいと考えています。会員の皆さまにおかれましては、いつでもご遠慮なくご要望を理事会までお伝えください。

さて、生命系研究で、「ダーウィンの海」を渡って国民の皆さまに受け入れられると言うことはどういうことでしょうか?
生命系研究の向かうところは、一つには生命の神秘に迫ることであり、一つには疾病の克服を通してしあわせな社会を実現することかと思います。

では、しあわせな社会とは何でしょうか?
実は定義はまちまちです。経済の世界では、産業化において、ダーウィンの海の向こうに居る消費者のニーズを調査しておくことは当たり前かと思います。
これに対しまして、生命系研究、医学系研究ではどうだったでしょうか?
例えば、これまでの疾患研究は「克服の先にしあわせがある」と考えてきたように思います。私個人の考えにはなりますが、「しあわせとは何か」をあらかじめ考えてスタートする研究もあっても良いような気がします。

個人的な話で恐縮ですが、20から30年近くも昔、従来の医学に対して逆向きのベクトルを有する「逆医学(リバースメディシン)」ということを真剣に考えたことがありました。病気でなく病人というように「人間」を前面に出して考えることで、いま、少しその答えが見つかった気がいたします。医学の場合は患者さん、学会の場合は会員になりますが、患者さんであれ会員であれ国民であれ、個人や社会のしあわせを出発点にしたいわば逆向きの「神経化学研究」から未来型科学を生み出せないかと考えています。

暑さが厳しくなりますが、熱中症などにお気を付けください。


平成30年7月2日
理事長
和田圭司

理事長便り No.12

2018年5月30日 15時05分

日本神経化学会
会員 各位

夏を思わせるような日が続いた5月でしたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか? 東京では初夏の風物詩として三社祭りが有名ですが、今年も多くの人で賑わったようです。今年も暑い夏になりそうです。

さて、理事長を務めますと、科学関係の賞あるいは研究助成の授賞式にお招き頂くことがあります。多くの授賞式が東京で行われますが、幸い東京に在住しておりますので、時間が許す限り出席をしております。日本神経化学会の会員の中から一人でも多くの受賞者が出ることを願っておりますので、私が会に出席することで少しでも知己を得、日本神経化学会の名を浸透させることができればと考えております。

生命科学系だけでなく、いろいろな分野のいろいろな方々との交流は楽しいものです。授賞式だけでなく、前回の理事長便りに書きましたような展示会や講演会、あるいはいろいろな会社のインキュベーション・カフェなどで行われているクリエイティブなトークの会、いずれにおいても新たな発見と驚きがあります。

例えば、セルフ・アーカイブという言葉はご存じでしょうか? セルフ・アーカイブの発展型と言えるかもしれませんが、コンピューターサイエンスの世界では、論文になる前のプレプリントをどんどん積極的に自社なら自社のホームページに公表することが当たり前のようになってきています。論文になる前のプレプリントが「価値」を持つようになってきています。このような波は生命科学の世界にも押し寄せてきているかと思います。すでに、そのようなweb上のサイトも立ち上がってきています。

つまり、そう遠くない将来、論文の定義が変わってくるのではないかと思われます。私たちはいま論文といいますと、査読を受けて確立した科学専門誌に掲載されているものを想定しますが、いずれの日か、今私たちがプレプリントと読んでいるものも「論文」になる時が来るのではないでしょうか。論文の定義も変われば査読の定義も変わることになるかと思います。書く側も、読む側も一層の自己責任が問われるような日が来るのではないでしょうか。

そうしますと、業績評価とは何をもってすることになるのでしょうか。今流行のインパクトファクターという物差しは時代遅れになる可能性があります。科学誌に掲載されるものだけが論文ではなくなるからです。専門誌に掲載された論文数と言っても意味を持たなくなる可能性すら有ります。

生命科学系では、学会発表よりも科学誌に論文をいち早く掲載することがプライオリティにおいて重要視されますが、今後は他分野のように、方法は何であれ、いち早く公表することが重要になってくるのではないでしょうか。AIの進展は、プレプリントに対して、今と異なった第三者評価を可能にするかと思います。 

神経化学会の年次大会ではその昔抄録は1演題に付き4ページの分量でした。いわゆるproceedingsの形式を取っていました。生命科学の世界も、論文の定義が変化し学会発表がより重要になるとしますと、神経化学会は60年も昔に未来世界を先取りしていたのではないかとすら思えてきます。

今日私が書きましたことは、私個人の予測ですので、そうなるとは限りませんが、いろいろな世界に触れることでいろいろな考え方を持てるようになるのは確かなことかと思います。会員の皆さまにおかれましても普段接する環境だけでなく、知の冒険旅行をされてみてはいかがでしょうか。

梅雨も近づいてきております。どうぞご自愛ください。

平成30年5月28日
理事長
和田圭司

理事長便り No.11

2018年4月18日 16時52分

日本神経化学会
会員 各位

皆さま、新年度のスタートはいかがでしょうか? 今年東京では桜が思いの外早く咲き昨年と少し違った季節感がありますが、新緑が映える季節となってまいりました。

私の理事長職も残り1年となりました。これまでの1年は会員の皆さまのご支援、ご指導もあり、つつがなく務めさせていただくことが出来ました。厚く御礼申し上げます。残り任期の間に、引き続き、学会の透明性強化、財政のさらなる健全化に務め、日本神経化学会のブランド定着に努力をして参ります。会員の皆さまにおかれましてはこれまで以上にご意見、ご批判を私までお寄せいただければと存じます。

少し四方山話をさせていただきます。先日AI・人工知能展が東京ビッグサイトでありました。コンビューターサイエンスの分野はまーそれはびっくりするほどのスピードで進んでいます。今回、そのスピード感を改めて実感することができ、大変有意義な時間となりました。今は遠く離れた世界のような話に思えることでも、2,3年後には(あるいはもっと早いでしょう)恐らく私たちの神経化学の世界もその影響を受けるだろうという話がそれはそれは一杯ありました。発想力、創造性という点においての話です。量子コンピューターなどはその良い例かもしれません。

今のコンビューターサイエンスを牽引するのはアカデミアでなく例えばGoogleのような企業ではないでしょうか。改めてアカデミアとは何であるかということを考えさせられた時間でした。神経化学についても、逆説的な言い方ですが、より多くの遠く離れた分野と交流することが明日の発展を生み出すように感じました。

東京ではツツジの花も咲き始めています。花言葉は節度、慎みで、躑躅という漢字には行っては止まるという意味があるようです。精力的に研究を進めつつ、しかし、猪突猛進で盲目的にならず、先をよく見てよく考えて未来を創り出す、というのが私たちの役目のように思えます。

時節柄、会員の皆さまにおかれましてはどうぞご自愛ください。



平成30年4月18日
理事長
和田圭司

理事長便り No.10

2018年3月13日 16時23分

日本神経化学会
会員 各位

日に日に春めいて参りましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

先日8日に開催されました理事会では多くのことが報告・審議されましたが今後学会HPに議事録を掲載しますので是非ご一読いただければと存じます。その中で先んじていくつかお知らせをさせていただきます。

今年から、大会プログラム集はこれまでの学会誌としての位置づけから離れて独立したものとなります。また、皆さまのお手元にお届けしています「神経化学」は今年からは年2回の発行となり、来年2019年からはオンライン化され、発行時期も6月と12月に変わりますのでご注意ください。

神経化学の若手研究者育成セミナーは今年も大会に合わせて開催されます。大会HPや学会HPで今後詳しいご案内を差し上げます。多くの若い方々にご参加いただきたいと考えておりますので、是非教室員の方々にご紹介いただければと存じます。また、このセミナーの運営は様々な方々のご支援、ご寄付から成り立っております。引き続き会員の皆様方のご支援をお願い申し上げる次第です。

嬉しいお知らせをいたします。日本神経化学会が推薦しました富山大学の井ノ口馨先生が平成29年度(第58回)の東レ科学技術賞を受賞されました。心よりお祝いを申し上げたいと存じます。日本神経化学会は東レ科学振興会に限らず様々な研究助成等につきまして学会推薦を行っております。会員の皆さまにおかれましては、是非この学会推薦というものをご活用いただきたいと考えております。


さて、皆さまがご関心ある文科省の科研費ですが、学会へ参加するための学会参加費のみならず、学会へ所属するための年会費も科研費からの支払いが可能であることが掲載されております。学会参加に伴う託児料につきましてもQ/Aが掲載されております。大学や研究機関毎の内規に従うところがあるかと思いますが、大枠として認められる回答となっておりますのでお知らせいたします。
4-(4)その他:文部科学省
http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/hojyo/faq/1307250.htm


第61回大会につきましては既に演題募集が始まっております。4月27日が締切ですのでご準備の方をどうぞよろしくお願いいたします。
第40回日本生物学的精神医学会・第61回日本神経化学会大会 合同年会 - コンベンションリンケージ
http://www.c-linkage.co.jp/jsbpjsn2018/


鍋島トラベルアワードも引き続き募集中です。
鍋島トラベルアワード - 日本神経化学会
https://www.neurochemistry.jp/travelaward/


まもなく春分を迎えます。様々な花の咲くシーズンを迎えますが、花粉症でお悩みの方も多いと思います。
季節のあることが生活に潤いをもたらしているかと思いますが、会員の皆さまにおかれましては、どうぞご自愛ください。


平成30年3月12日
理事長
和田圭司