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一般(口演)
神経細胞死、アポトーシス その他
3D-一般-1
興奮毒性誘発遅発性神経細胞死におけるプロスタグランジンの生理活性解析
吉川 圭介,岩佐 健介,山科 孝太,橋本 真歩,丸山 敬,鈴木 正彦
埼玉医大・医・薬理学

 種々の神経変性疾患に興奮毒性による神経細胞死が関与することが知られている。生体のリン脂質膜由来生理活性脂質であるプロスタグランジン(PG)は興奮毒性により脳内で産生が増加することが知られており、それらが神経細胞死や神経保護の重要な因子として注目されている。我々はこれまでに、グルタミン酸アゴニストで興奮毒性を引き起こすカイニン酸(KA)を用い、ラット海馬における脂質メディエーター産生をLC-ESI-MS/MSを用いた網羅的解析により詳細にプロファイルした。脂質メディエーターの中で特にPGD2、PGE2、PGFの産生量が多く、すべてがKA投与後1時間以内に産生の極大を示した。さらに非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を用いたPG産生阻害試験により、KA投与後1時間以内に産生されるPGが30日以上も続く遅発性神経細胞死に関与し、NSAIDのPG産生抑制により神経細胞死が抑制されることを報告した。本研究は主要なPGであるPGD2、PGE2、PGFが遅発性神経細胞死に与える影響を解析することを目的とした。3週齢雄性ラットにCOX-2選択的阻害剤であるNS398を腹腔内投与し脳内におけるPG産生を阻害した状態で、30分後にKAを腹腔内投与した。さらに30分後にPGD2、PGE2、PGFを脳室内に投与し30日後の遅発性神経細胞死を評価した。HE染色、Fuloro-Jade C染色による神経細胞死の評価により、PGD2、PGFを投与されたラットは顕著な遅発性神経細胞死が見られた。PGD2、PGFがが持続性神経細胞死に重要であることが示唆された。
3D-一般-2
うつ病患者に対するアミロバン3399の有用性について
広田 進1,岡村 尚昌2,山田 茂人3,内村 直尚4
1広田クリニック,2久留米大学高次脳疾患研究所,3聖ルチア病院,4久留米大学医学部神経精神医学講座

背景)うつ病は8人に一人が生涯に罹患するといわれ、わが国でも精神科、心療内科クリニックや病院を受診する患者は年々増加している。中等度以上のうつ病に対する治療のひとつとして抗うつ剤による薬物治療を行うことがわが国のうつ病治療ガイドラインでも推奨されている。しかし日常診療の中で抗うつ剤を十分期間投与したにもかかわらず、抑うつ症状の改善が不十分で長期間持続したり、アパシー様の病状を呈することがしばしば見受けられる。目的)アミロバン3399はヤマブシタケの抽出物からなるサプリメントである。アミロバン3399は統合失調症の陰性症状やうつ病治療において効果的であったという報告が多数存在し、かつサプリメントであり副作用もほとんどないことが実証されている。今回うつ病に罹患し、抗うつ剤(SSRI:選択的セロトニン再取り込み受容体阻害剤)を十分期間服薬したにもかかわらず抑うつ気分や意欲低下などの症状が遷延している患者に対して、アミロバン3399を投与することによる症状の改善がえられる可能性についてうつ病症状評価尺度や血液検査、唾液検査を用いて検討を行った。方法)被験者に対しアミロバン3399を1回3粒、一日2回(朝食後と昼食後)、1日計6粒を12週間投与する。問診による臨床的観察に加え、ベックうつ病評価尺度(BDI)、Social adaptation self-evaluation scale(SASS),ハミルトンうつ病評価尺度(Ham-D)、血液検査(BDNF、MHPGを含む)、唾液検査(MHPG)を実施し、投与前、投与後4週、8週、12週後に収集し評価する。結果)BDI、HAM-Dともに投与後4週目から有意に改善を示し、SASSも同様に改善する傾向を認めた。唾液中のMHPGは一旦低下した後に再び上昇する傾向があった。
3D-一般-3
Presenilin-1の細胞内局在調節:RetromerとERADによる共役機構
木村 展之1,上田 直也1,富田 泰輔2,柳澤 勝彦1
1国立長寿医療研究センター・アルツハイマー病研究部・病因遺伝子研究室,2東京大学・薬・臨床薬学教室

アルツハイマー病(AD)発症メカニズムの全容は未だ解明されていないが、βアミロイド蛋白(A β)の蓄積がAD発症に大きく関与すると考えられている。我々はこれまでの研究成果により、老化に伴うエンドサイトーシスの障害がA βの細胞内蓄積を引き起こす要因となることを明らかにしたが、その詳細なメカニズムは不明である。そこで同メカニズム解明の一環として、A β産生に必須のγセクレターゼ複合体の主要因子であるPresenilin-1(PS1)の細胞内動態とエンドサイトーシスとの関係について検索を行った。老齢カニクイザルの脳組織やエンドサイトーシス障害を誘導した培養細胞において、PS1はアミロイド前駆体蛋白質(APP)やβセクレターゼのような著しい細胞内蓄積を示すことはなく、エンドソームにおける蓄積も確認されなかった。そこで、初期エンドソーム以降の輸送経路を個別に阻害した結果、トランスゴルジネットワーク(TGN)へと向かう輸送経路を阻害した場合にのみ、エンドサイトーシス障害に伴うPS1の著しい蓄積が誘導された。エンドソームからTGNへの輸送はVPS35をコアとするretromer complexによって仲介されるが、VPS35のノックダウンによってもPS1の細胞内蓄積が再現された。さらに、PS1はRab2依存性に小胞体へと輸送されてproteasomeによる分解を受けることが明らかとなった。興味深いことに、エンドサイトーシス障害を誘発していない正常細胞では、proteasomeを阻害してもPS1の蓄積は生じなかった。これらの結果から、PS1はretromerとERADの共役によってエンドソームでの局在性がコントロールされており、エンドサイトーシス障害に起因するA βの蓄積は、産生亢進ではなく代謝低下によるものである可能性が示唆された。