TOP公募シンポジウム
 
公募シンポジウム
ブレインバンクを通じた神経病理教育への国立病院機構の貢献
7月7日(金) 16:00-18:00 Room G
2SY④-1
ブレインバンクを通じた生検末梢神経筋組織の蓄積
Accumulation of biopsied peripheral neuromuscular tissue through brain banking

藤村 晴俊
堺市立総合医療センター
HARUTOSHI FUJIMURA
Sakai City Medical Center

1983年~1987年、パリ第11大学ビセートル病院に留学し、Jean Lapresle先生に中枢神経病理、Gerard Said先生に末梢神経病理を学んだ。1988年~1994年まで大阪大学付属病院病理部に在籍し、末梢神経生検のエポン包埋切片検鏡、解きほぐしを自ら行い、筋病理は凍結切片を用いて、もろもろの組織化学を行った。医師自らが生検を実施し、歴代の技能補佐員が安定した技術を発揮し、年間100例ほど実施できるまでになった。最も注力したのは浅腓骨神経と短腓骨筋のcombined neuromuscular biopsyで、神経生検から得られる感覚神経の情報に加え、筋生検から運動神経の間接情報も得られる利点がある。2003年に刀根山病院に異動し、そこでも大阪大学神経内科の関連病院における臨床神経病理の拠点化を図るべく神経筋生検と剖検の拡充に努めた。2005年から2015年まで、近隣病院に声をかけ年1、2回、臨床神経病理研究会を主宰し、生検・剖検例神経病理学の勉強会を行った。
2007年から国立病院機構を主たるメンバーとするブレインバンクに加わり、のべ150例以上のバンキングを実施してきた(井上先生の項参照)。2005年に近隣の国立病院機構病院にアンケート調査を行い、2005年政策医療「湯浅班」での報告、2007年ブレインバンク「有馬班」で行った報告を紹介する。神経病理の中でも、特に末梢神経筋病理はラボの規模・資金の継続に加え、研究者の個人的資質、人材に依存することが多く、後継者を継代することが重要である。そこで、国立病院機構病院間で人の短期異動を伴う仕組みを提案し、今後につながる日常的な末梢神経筋の蓄積を考察する。
7月7日(金) 16:00-18:00 Room G
2SY④-2
NHO相模原病院におけるブレインバンクを通じた神経病理学教育
Neuropathology Education through Brain Bank at NHO Sagamihara Hospital

長谷川 一子
国立病院機構相模原病院
Kazuko Hasegawa
NHO Sagamihara National Hospital

脳神経内科,特に神経変性疾患を臨床診断して診療していると,神経病理診断により診断が是正されることがままある.臨床診断をできるだけ正確にするために,我々は日々努力をしている.当科は神奈川県北西部にあるが,リウマチ・アレルギー疾患専門施設としての位置づけにあり,残念ながら脳神経内科は含まれていない.当科の歴史は新しく2000年に開設され,本年度で23年目に当たる.通院患者数も増え,当初,剖検はなかったが2~3年目頃から徐々に増加し,ほぼ例年20剖検以上となってきている.主たる疾患は神経変性疾患,次いで免疫性神経疾患,脳血管障害である.神経変性疾患では疾患頻度からみてもパーキンソン病が最多であるが,パーキンソン関連疾患,脊髄小脳変性症,認知症が3大疾患である.臨床診断と神経病理診断双方を経験できること,一人で診断から病理まで一人の患者さんと対することができ,勉強になるため,脳神経内科の医師数も当初の一人から現在は6人に増加している.昨年から神経病理認定医を目指す若手も現れ,さらにブレインバンク委員長のご助力もいただくようになり,当ブレインバンクは安泰と考えている.常に脳神経内科をバックしてくださっている病理診断科の各先生にも深謝したい.
7月7日(金) 16:00-18:00 Room G
2SY④-3
病理解剖から症例について学ぶことの重要性
Importance of learning about cases by autopsies

井上 貴美子
大阪刀根山医療センター 脳神経内科/リハビリテーション科、豊中、日本
Kimiko Inoue
Dept. of Neurology and Rehabilitation Medicine, Osaka Toneyama Medical Center, Toyonaka, Japan

 国立病院機構に所属し慢性疾患診療に携わる病院では初期から終末期までの様々なステージの難病患者を包括的に診療し全経過を把握することが可能である。時期別の診療体制では初期治療に携わってもその後の経過を学ぶことが困難なことも多く、臨床医の知識が偏ることが避けられない。患者の全臨床経過を知り、剖検により最終診断を知ることは、臨床医のスキルアップのためには重要な機会である。当院は2003年4月より神経筋病理診断とリソース蓄積を開始した。2004年~2022年における当院の院内剖検総数は283件(脳神経内科204件、内科77件、外科2件)であった。脳神経内科剖検の内訳は筋疾患(筋ジストロフィー含む) 65例(脳32%)、ALS 50例(25%)、PD/DLB 33例(16%)であり、この3疾患群で73%を占めた。臨床診断と病理所見の乖離は18例(9%)に認められ、パーキンソン症候群の鑑別に関する症例が半数を占めた。院外の症例については、2003年~2022年の間に123例の依頼を受けており、剖検27例、脳切から神経病理所見報告までが74例、標本作成依頼は5件であった。依頼元施設の所在別件数は大阪府57件、京都府43件、兵庫県20件、生前同意によるブレインバンクネットワークからの依頼剖検は3件であった。これらの症例の病理所見報告に基づき院内外のCPCを年数回行い、主治医による神経学会/神経病理学会/神経病理関連研究会の発表や論文作成などにも協力している。症例提示を交えながら剖検によって学ぶことの意味について考察する。
7月7日(金) 16:00-18:00 Room G
2SY④-4
千葉東病院における神経病理とその教育への取り組み
Neuropathology and its education at Chibahigashi National Hospital

武田 貴裕, 國分 さゆり, 石川 愛, 新井 公人
国立病院機構 千葉東病院 脳神経内科
Takahiro Takeda, Sayuri Kokubun, Ai Ishikawa, Kimihito Arai
Dept. of Neurology, Chibahigashi National Hospital

当院は長年に渡り神経難病、特に神経変性疾患の専門診療を行ってきたため、千葉県における難病診療分野別拠点病院(神経・筋疾患)に指定されている。神経変性疾患の発症初期から、亡くなるまでの全経過に渡り観察を行うことができることが国立病院機構ならではの当院の強みであり、この強みを活かすべく、臨床活動と並行して神経病理研究を行ってきた。近年の剖検数は3.2例/年と多くはないものの、これまで当院に蓄積された中枢病理症例数も2023年2月時点で計83症例(凍結脳28例)にのぼり(ALS35例、MSA11例、PSP11例、PD/DLB7例、SCD7例、AD3例、CBD2例、その他7例)、代表的な神経変性疾患の基本的病理所見を学ぶには支障のないサンプル数になっている。剖検症例についてスーパーバイザー1名、指導医1名を含む神経病理学会会員4名で診断の確定、問題点の検討を行い、さらに脳神経内科スタッフ全員が参加するCPCを行い問題点をディスカッションし共有する試みを続けている。また指導医は千葉大学病理学講座と連携して医学生の神経病理学教育にも寄与、さらに研究面でも千葉大学、量子医科学研究所と連携し、神経変性疾患の臨床-画像(PET)-病理の先進的対比研究を遂行している。長年蓄積されたブレインバンクをベースにしつつ神経病理分野のみにとどまることなく神経変性疾患を包括した臨床-形態研究を継続する環境が整っており、その点で若手医師の育成に貢献できると思われる。
7月7日(金) 16:00-18:00 Room G
2SY④-5
広島西医療センターの病理解剖の実施と神経病理学教育への取り組み
Implementation of autopsy at Hiroshima-Nishi Medical Center and initiatives for neuropathological education

渡辺 千種
広島西医療センター 脳神経内科
Chigusa Watanabe
Dept. of Neurol., Hiroshima-Nishi Medical Center, Hiroshima, Japan

広島西医療センターでは、2005年から常勤の病理医が着任し、院内での脳・脊髄を含む剖検を行ってきた。剖検疾患は癌、血液疾患、筋萎縮性側索硬化症、多系統萎縮症、脊髄小脳変性症、認知症、脳性麻痺、筋ジストロフィーなどであった。2007年~2013年、国立病院機構の病院を中心にした「死後脳の多施設共同研究に使用可能なリサーチリソースネットワークの構築に関する研究」に参加、2007年11月に超低温槽が設置され検体の凍結保存が可能となった。2015年~ブレインバンク事業として、ビハーラ花の里病院の検体を当院で解剖し、東京都健康長寿医療センター(当時)村山繁雄先生によるBrain cutting,neuro CPCを院内で行う体制が開始した。ブレインバンクを念頭にした剖検を行うことで、神経病理に興味のある脳神経内科医には、Brain Cutting、 neuro CPCを経験し、神経病理学的な発表機会へと繋がった。また、神経病理に触れる機会の少ない一般内科医師、一般病理の若手医師、研修医に脳脊髄の解剖を見る機会、神経病理に触れる場を提供している。
7月7日(金) 16:00-18:00 Room G
2SY④-6
宮城県と山形県における独立行政法人国立病院機構病院ネットワークのブレインバンクを通した神経病理教育活動への貢献
Neuropathological education of NHO through Brainbank activity in MIyagi and Yamagata

鈴木 博義1,6, 武田 篤2, 馬場 徹2, 永野 功3, 飛田 宗重4, 鈴木 靖士5, 岡 直美1, 原嶋 祥吾1, 小山 涼子1
1. 独立行政法人国立病院機構 臨床研究部 病理診断科, 2. 独立行政法人国立病院機構仙台西多賀病院 脳神経内科, 3. 独立行政法人国立病院機構宮城病院 脳神経内科, 4. 独立行政法人国立病院機構米沢病院 脳神経内科, 5. 独立行政法人国立病院機構仙台医療センター 脳神経内科, 6. みやぎ県南中核病院 病理診断科
Hiroyoshi Suzuki1,6, Atsushi Takeda2, Toru Baba2, Isao Nagano3, Muneshige Tobita4, Yasushi Suzuki5, Naomi Oka1, Shogo Harashima1, Ryoko Koyama1
1. NHO Sendai Medical Center Depts. of Clinical Res. and Pathology, 2. NHO Sendai Nishitaga Hosp. Dept. of Neurology, 3. NHO Miyagi Hosp. Dept. of Neurology, 4. NHO Yonezawa Hosp. Dept. of Neurology, 5. NHO Sendai Medical Center Dept. of Neurology, 6. South Miyagi Medical Center Dept. of Pathology

近年、病理解剖を実施できる神経病理医/病理医の確保は、特別な神経疾患研究機関、大学病院、初期研修病院やがん・急性期医療を担当する病院に限られつつあり、ブレインバンクに登録済の神経変性疾患患者の長期療養を担い患者さんが亡くなるまで終末期医療を行う慢性期病院との連携が重要となってきている。独立行政法人国立病院機構(NHO)は各地域に急性期医療を担う基幹病院と慢性期医療を担う病院がネットワークを構築して活動している。ほとんどの病院では病理解剖室を完備しており、臨床面では脳神経内科医が神経変性疾患に関する診断・治療を学んでいく上で重要なトレーニング施設となっている。ブレインバンク登録者の病理解剖と組織保存への協力を得ながら、臨床・病理検討会(CPC)の開催を通じて神経病理学の基礎知識、臨床症状と責任病変を関連づけながら神経病理学の持つ基礎医学としての重要性を教育できる。NHOは地域ごとにネットワークが形成されているので、病理医が他院で病理解剖業務を行うことも、解剖補助の技師派遣も事務手続き上比較的円滑に実施することが可能である。仙台医療センター病理診断科は仙台西多賀病院、宮城病院、米沢病院と連携して病理解剖を行いCPCや学会・論文発表を行ってきた。近年の新型コロナウイルス感染症により病理解剖の実施が困難となったが、その反面遠隔会議システム整備がNHO 病院間で進められ、同システムを通して以前より活発にCPC が行われるようになった。今後、同システムを有効に活用すれば、病院間のより緊密な連携が達成可能で神経病理教育をさらに発展させブレインバンクへの理解を深めていくことにも貢献できると考えている。