神経細胞集団の発火時系列解析
EL4
神経細胞集団の発火時系列解析
○深井朋樹1
○Tomoki Fukai1
理化学研究所脳科学総合研究センター1
RIKEN Brain Science Institute1

さまざまな脳機能は、膨大な数のニューロンで構成されている局所神経回路とそれらの相互作用によって生み出されている。とくに活動電位を介したニューロン間の相互作用は、最小の時間スケール(ミリ秒単位)での信号伝達を担っており、脳の情報処理の階層構造の中で、最も基本的なプロセスとして位置づけられる。近年の実験技術の向上により、行動中の動物から同時に数十、数百いう膨大な数のニューロンの活動を記録できるようになってきており、いずれ数千〜数万個の規模で、神経集団のスパイク列を記録することも可能になるかもしれない。このような「ビッグ・データ」の出現は、大規模神経集団の活動データを解析するための強力かつ効率的な数学的手法の開発が急務であることを意味している。さらに、活動と課題関連事象との関係が自明なニューロンだけを選んで機能的に解釈し、脳機能を理解しようとする従来のアプローチの、抜本的見直しを迫る。つまり今後は、ニューロン活動間の“関係性”を通して回路の情報処理機能を探り、行動と神経活動との関係を明らかにするようなアプローチが必要とされている。そこで本講演では、そのようなアプローチを試みる多ニューロン活動の解析手法から、なるべく基本的で、有効性や更なる発展が見込まれるものを紹介したい。講演ではそれぞれの手法の数学的詳細の解説は必要最小限に抑え、数学的手法の背景にある基本的概念や、それを脳研究に使うことで何が分かったのかということを中心に話をしたい。内容や順番に変更が生じる可能性があるが、一応、以下のような話題を紹介する予定である。1)スパイク相関に対する情報幾何学的アプローチ。2)一般化線形モデルによる情報抽出。3)主成分分析(PCA)とその問題点。4)神経集団動態の解析。5)カーネルPCAへの拡張。6)スパイクソーティングの現状。7)画像データからの多ニューロン活動の検出。


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