ヒト精神疾患のモデルと思われる遺伝子改変マウスからヒト遺伝学的解析に発展させる場合に考えること
EL7
ヒト精神疾患のモデルと思われる遺伝子改変マウスからヒト遺伝学的解析に発展させる場合に考えること
○吉川武男1
○Takeo Yoshikawa1
理化学研究所脳科学総合研究センター1
RIKEN Brain Science Institute1

ヒトの精神疾患において、関連遺伝子であることがすでに報告されている遺伝子をマウスを用いて操作し、目的の表現型が出現すれば、それらのマウスは対応するヒト疾患の病理メカニズムの解明、あるいは治療薬の開発等に応用できる。これは、神経科学研究者が通常よく行っているアプローチである。本教育講演では、当初特定のヒト精神疾患を念頭におかず、研究者が興味を持っている遺伝子をマウスで操作していろいろと表現型を解析する中で、精神疾患との類似性を思わせる形質を検出した場合、ヒトで対応すると考えられる疾患で遺伝学的解析をすべきか、解析する場合どのようなアプローチを選ぶか、について主に焦点を当てて考えてみたい。ヒト疾患由来DNAを解析する合理的根拠については、次のような状況が想定されると思われる:モデル動物の判断基準として、表面妥当性(face validity: 動物の示す行動変化がヒトの症状に類似)、構成妥当性(constructive validity: モデル動物の背景がヒトの発症機序に類似)、予測的妥当性(predictive validity: ヒトに有効な治療薬がモデル動物にも有効)があげられるが、とりあえず最初の表面妥当性が示唆されたことがインセンティブになる。精神疾患に関しては、ヒトでの発症機序が未だ不明な部分が大きいので、構成妥当性はとりあえず除外される。予測的妥当性は確かめられていることに越したことはない。当日は演者の具体的経験をまじえて、ヒト遺伝学的解析に進んだ場合の方法論やその選択基準、付随する事務的事項等を提示したい。


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