理事長だより 第6号
暑い夏から一転、急に涼しくなり、もはや秋を通り越して初冬の気配になってまいりました。会員の皆さんはお元気でお過ごしのことと思います。本日は、残暑厳しい9月11日~13日の3日間に開催された第68回日本神経化学会(JSN)大会を振り返りたいと思います。
本年は久しぶりのJSN単独大会でした。近年は2022年に日本神経科学学会・日本神経回路学会、2023年に日本神経病理学会、2024年に日本神経科学学会・生物学的精神医学会、連続して合同大会が続いていました。合同大会には、スケールメリットや多様性という大きな魅力がありますが、一方で、JSN本来の魅力が十分に発揮しきれない側面もあります。これはおそらく相手学会にとっても同様の課題でしょう。どちらにも良さがあるため、「どちらが良いか」という二元論ではなく、合同大会と単独大会のバランスをどのように取るかが今後の鍵になると感じます。
前号の神経化学誌でも述べましたが、「単独大会では徹底的にJSNの独自性を意識するのが大切」です。その言葉どおり、本大会のテーマ「まるっと神経化学!」は、まさに大会全体がまるごと神経化学となった、濃密で活気あふれるものでした。全プログラムが独自企画で構成され、新しい試みも満載。恒例の「道場」も「若手育成セミナー」もより一層JSNらしさに満ち、神経化学の魂が会場全体に満ちていました。
大会長の澤本先生の創意と工夫が随所に光る大会でもありました。プレナリーレクチャーや特別講演の人選は、まさに、まるっと神経化学であり、レジェンドレクチャー、神経化学入門コース等々、ザ・神経化学を体感できる企画が随所にありました。中でも印象深かったのは、御子柴先生、竹市先生によるレジェンドレクチャーです。長年にわたる研究の歩みと哲学に深く胸を打たれました。また、最新のデータが沢山出てきたことにも驚きました。これは、今期のJSNが力を入れている「学会史編纂」に繋がる素晴らしい企画であったと思います。道場や若手育成セミナーも例年以上の盛り上がりをみせ、JSNの魅力とエネルギーが存分に発揮された大会になったと感じます。
特筆すべきことは、今大会を機にJSNに入会された会員が大幅に増えたことです。これは澤本先生の丁寧なお声がけの賜物であるとともに、大会そのものが多くの方にJSNに魅力を実感させた結果だと思います。このような、正の循環を、今後さらに広げていきたいと思います。
また、今回の大会は本当に細部に至るまで心配りと地域性が感じられる運営でした。例えばお弁当ひとつにしても、地元愛知の魅力や工夫が詰まっており、会場にいながらにして愛知、また名古屋の味と文化を楽しめるものでありました。これらは、単独大会での柔軟性と、地方大会の良さが凝集された成果と言えると思います。
今大会には、ISNからもPresidentのAlex Prinetti先生をはじめ執行部のメンバーが参加され、「素晴らしい大会であった」と一様に称賛の声を寄せられました。特に「道場」については大変感銘を受けたようで、ISNでも導入を検討したい、とのコメントを頂きました。JSNが誇る取組が、世界に広がっていくわくわく感を覚えております。
このように、第68回JSN大会は、JSN単独大会の魅力を余すところなく示した大成功の大会でありました。これはひとえに、澤本先生の強力なリーダーシップと、金子先生をはじめ実行部隊の皆様の献身的なご尽力の賜です。心より感謝申し上げます。今後は、この単独大会成功のノウハウと精神を何かの形でまとめ、次代の大会長へと継承していければと思います。
最後に、今回の大会にご参加され、議論を尽くして大会を盛り上げて頂いた、JSN会員の皆様に心から感謝申し上げます。
2025年11月6日
理事長 小泉修一

