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議事録

「2014年度(平成26年度)評議員会議事録」
日本神経化学会
2014 年度評議員会議事録

【日 時】2014 年 9 月 30 日(火)12:00~12:40
【会 場】奈良県文化会館 1 階 国際ホール       
【出 席】出席 60 名,委任状 86 名(評議員総数 264 名,定足数 53 名)
【議 長】木山 博資 理事長
【進 行】白尾 智明 副理事長
【議 題】ポスドク問題を解決するために今しなければならないことは何か?

前のシンポジウムが延長となったため,定刻より 15 分遅れての評議員会開催となった。

白尾智明副理事長より,議題について以下の通り発言された。

 議題「ポスドク問題を解決するために今しなければならないことは何か?」という問題
について,白尾智明副理事長の指名により,当学会が加盟している生物科学学会連合(以
下,生科連と呼ぶ)のワーキンググループである『ポスドク問題検討委員会』(以下,委員
会と呼ぶ)へ,当学会代表として参加している竹居光太郎氏から報告があった。

 生科連の代表者と文部科学省の代表の「ポスドク問題」についての話し合いの場で明らかになったことは,文部科学省は統計的数字からポスドクは 5 年以内に就職できているとし,「ポスドク問題」は問題として認識していないという事実であった。しかしながら実際には,応用科学である工学系及び農学系は就職を可能としているが,ポスドク全体 18,000人のうち40%を占める生命科学では難しいのが実情である。そこで,委員会では,今後この問題をどこへ答申していくべきかを検討している。例えば,文科省以外の場所として政界や産業界の勉強会などへ働きかけるのも,一つの考え方としてあるのかもしれない。委員会では様々な提言の仕方を検討している。なお,委員会では,他学会が大会会期中にポスドクと企業のジョブマッチングを実施しているとの報告があった。ぜひ当学会でも,この問題について,今後どの様なアクションをとっていくべきか議論していただきたい。

 白尾智明副理事長より,生科連へ当学会代表として参加し,また日本解剖学会の代表と
して同連合の『ポスドク問題検討委員会』へも参加されている仲嶋一範庶務担当理事が指名され,以下の通り意見した。

 生科連にて委員会発足時に繰り返し指摘されていたことは,ライフサイエンスのポスドクが数千人いる現状において,その数千人が全員PIになることは不可能であるにもかかわらず,学位を持っていることが有利に働く就職先が非常に少ない,という点である。そこで,委員会では,ポスドクのまま 45 歳になる前に就職できるよう働きかけたいとしている。
 なお,文部科学省とは別に,内閣府日本学術会議がこの問題を詳細に調査しているので,
ホームページ等からその報告書を参考にしていただきたい。

 また,今回の問題とは少し異なるが,今年度の若手研究者育成セミナーの女性参加者より,ポスドクの雇用形態について,出産・育児等女性のライフスタイルに合わせた勤務形態を希望する声があった。

 白尾智明副理事長より,仲嶋一範庶務担当理事の意見を踏まえ,ライフイベントに合わせたポスドクの勤務形態という問題も大事であると発言があった。しかし,ここではまず,ポスドクを終えた後のキャリアパスの有無という点について伺うとし,髙坂新一氏が指名され,以下の通り発言及び提案があった。

 文部科学省が 1996 年に策定した「ポストドクター等 1 万人支援計画」の委員を務めた際に危惧していた事が現実となった。
 この問題で重要な事は,アカデミアと企業が連携し対応していかなければならない点にある。また,パラメディカルやCRC(Clinical Research Coordinator),生物統計学分野等へと活路広げていくことも必要である。これらを踏まえ,学会としては,パラメディカルやCRC,生物統計学等を扱う部署への働きかけや,企業の協力を得る働きかけ等を積極的に行うことだと考える。さもなければ,いくら議論を繰り返しても,机上の空論のままで前へ進まないのではないかと懸念する。

 白尾智明副理事長より,アカデミアと企業の関わり方として,前述の竹居光太郎氏の報告より「大会会期中のジョブマッチング」について,竹居光太郎氏へ説明が求められた。
 
 これは企業とのジョブマッチングである。実際,日本分子生物学会で行なわれているジョブマッチングの例のように,企業からは博士号取得見込み者へアプローチが全くないわけではない様に見受けられたので,やはり学会が積極的にそういう場を設けることが大事なのではないかと考える。

 白尾智明理事長より,三浦正幸氏が指名され,他学会の活動について,以下のとおり発言した。

 日本分子生物学会では,昨年度大会会期中に企業とのジョブマッチングを実施しており,国内のポスドクのみならず海外にいるポスドクも帰国し易いよう,企業とのコネクションを作る場として活用し,好評を得ている。
 また,薬学部という立場からすると,企業は,ポスドク或いは博士号取得見込者は即戦力として捉えている風潮にあるように見受けられる。そのため,学会としては,もう少し企業との距離を縮めるような場を提供することが大事なのではないかと考える。

 引き続き,吉田明氏より,以下のとおり,発言があった。

 先ほどPI以外の職種としてパラメディカルや生物統計学分野等の話があったが,昨年より文部科学省では,学位を取得した人が専門性を活かして務められるポジションを増やそうと,URA(University Research Administrator)を拡充しようとしている。具体的にポスドク対応という事ではないが,この様な職種も一つの方向性ではないかと考える。
 また,このポスドク問題を解決するために何かしようという考え方より,具体的にこうゆう職種が必要だということを前提にしないと,前に進まないのでないかと考える。

 白尾智明副理事長より,CRCや生物統計,URAなどのキャリアパスに対し,学会が何かできるか,または所属先で何か取り組んでいることがあるか等の意見及び事例,または実際その様な職種に就いた経験やその職種に応募する際に何か有利になること等について,引き続き吉田明氏に意見を求めた。

 応募するポジションの内容が,例えば広報関係等であれば,そういった委員会活動の経
歴等もアピールする点にはなるかと思う。
 また,そういうポジションへ応募する人は,学位取得以後にいろいろな事を経験した若い方が多いようであるが,現状は即戦力の定年前後のキャリアのある方が就く傾向にある。
しかし,今後はそのポジションが若返るステージになるのではと考える。

木山博資理事長より,以下のとおり,発言があった。

名古屋大学でURAを募集した際,企業出身の 50 歳代の応募者が多く,実際に職へ就いた方は製薬企業出身で特許についての経歴のある人だった。そのため,特許等その様な特別な経歴のある人でないと実際には難しいのではないかと考える。

引き続き,斎藤祐美子シンポジウム企画委員長より,以下のとおり,発言があった。

広島大学では,実際URAになったポスドクがいるが,科研費が使えず,完全に研究から離れなければならなくなったという事例がある。

白尾智明副理事長より,これらの意見を踏まえ,以下のとおり,提案があった。

ポスドクがURAの経験を積む場を学会が提供できるようになることも一案である。

また,白尾智明副理事長より,以下のとおり,本日の問題についてまとめられた。

今後も様々なキャリアパスが拓ける方向を,学会としても目指していきたいため,何か意見のある場合は随時学会へ申し出てほしい。

以上をもって,2014 年度評議員会は閉会となった。